去年、イー・ガーディアン株式会社は11月29日、X(旧Twitter)で頻繁に投稿されたフレーズを調査した『SNS流行語大賞 2023』を発表。その結果、『スイカゲーム』が2位に輝いた。
ゲーム業界では唯一のランクインとなり、いかに注目されたのかがうかがえる。

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『スイカゲーム』は箱の上にフルーツを落として同じ種類のフルーツをつなげていく1人用のパズルゲーム。『ぷよぷよ』のように同じ種類のフルーツをくっつければ消えるわけではなく、くっつくと1個の大きいフルーツになる。箱からフルーツが溢れるとゲームオーバーになるため、フルーツをくっつけてスペースを作りながらハイスコアを目指していくというもの。

もともと、Nintendo Switch向けとして2021年12月にリリースされており、最新作というわけではない。これほど大きな話題を集めた背景として、税込240円と低価格であること、人気ゲーム実況者がプレイしたことなどが挙げられる。
ただ、“スイカゲーム沼”にハマる人が増えた要因はまだまだある。その答えは名作映画の中に隠されていた。

2021年1月に公開され、菅田将暉有村架純が主演を務め、『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)や『カルテット』(TBS系)の脚本家である坂元裕二が脚本を手がけた映画『花束みたいな恋をした』内に以下のようなやり取りがある。

山音麦(菅田将暉)と八谷絹(有村架純)は同棲しているが、麦はブラック企業に勤めて日々心身をすり減らしている。この日も夜遅くまで残業して、1人暗いオフィス内で寝転がりながら『パズドラ』をプレイする麦。場面が変わり、絹が転職を相談したことをキッカケに喧嘩が勃発。
日々仕事に追われることにストレスを感じているという麦に絹は「息抜きぐらいすればいいじゃん」という。ただ、麦は「息抜きにならないんだよ。頭に入んないんだよ」「『パズドラ』しかやる気しないの」と語気を荒げた。

筆者はハイスコア2662のエンジョイ勢として『スイカゲーム』をちょくちょくプレイしているが、仕事などで憔悴している時に『スイカゲーム』のようなパズルゲームはとても捗る。麦のセリフには共感せざるを得ない。とはいえ、パズルゲームは多く存在するが、中でも『スイカゲーム』は突出している。


まずは『ぷよぷよ』などの対戦系ではなく、急かされることなくマイペースで楽しめる。ストレス解消のためにゲームをしても、対戦相手がいるとどうしても「相手を倒したい」という気持ちが芽生えてしまう。目的がすり替わり、結果的にはプレイ前よりもストレスが溜まることは珍しくない。『スイカゲーム』もスコアを競うが、1人用なのでただただ落下していくフルーツを眺めるだけでも癒される。

また、偶然の要素が強い点も魅力の一つ。フルーツは「さくらんぼ」→「いちご」→「ぶどう」→「デコポン」といった順番で成長していく。
つまりは「さくらんぼ」を2つ合体させると「いちご」になり、近くに「いちご」があれば一打で「ぶどう」を作ることが可能。『ぷよぷよ』で言うところの“連鎖”である。とはいえ、各フルーツの大きさが異なり、フルーツを落とした振動で他のフルーツが予想外の動きを見せ、思った通りにフルーツがくっつくとは限らない。

例えば、『ぷよぷよ』は「ここに落とせば5連鎖できる」ということがわかるが、『スイカゲーム』は約束された連鎖がない。連鎖を組むために頭を働かせる必要がなく、“頭を空っぽにしながら適度に頭を使う”という最高の状態でプレイできる。偶然の要素が強いため、ミスしてしまっても自分を責めることは少なく、スコアにこだわり過ぎずにすむこともついつい沼ってしまう要因なのではないか。


以上のことから、今日の人気につながったのではないか。そもそも、ソニーがPlayStation4用ソフト『テトリス エフェクト』を被験者にプレイさせ、その際の脳波を測定した実験結果によると、プレイ後にストレスが減って集中が増加する傾向があることがわかっている。パズルゲームにはストレス軽減の効果があり、『スイカゲーム』にも同様の効果があるのかもしれない。

裏を返せば、麦のように追いつけられているストレスフルな人が多いからこそ、流行ったと言えなくもない。なんにせよ、人を引き付ける秀逸なゲームであることは間違いない。

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