2024年のNHK大河ドラマである『光る君へ』の放送が、1月7日から始まった。同ドラマにはさまざまな注目ポイントが挙げられるが、中でもSNS上の話題をかっさらった要素といえば、俳優・玉置玲央による「藤原道兼」の怪演だろう。
これまでNHKドラマで演じてきた役柄とのギャップに戸惑う人も多いようだが、実はむしろ“ヒール役”こそが玉置の真骨頂と言える。

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玉置が演じる道兼は右大臣・藤原兼家(段田安則)の息子にして、後の最高権力者である藤原道長(柄本佑)の次兄にあたる人物。兄の道隆(井浦新)に対する劣等感や、父親からの愛に飢えていることなどからくる苛立ちを見せ、主人公のまひろ/紫式部(吉高由里子)とも因縁が存在する。

ネタバレになるため詳細は伏せるが、第1話から道兼は衝撃的な行動をとり、『光る君へ』の話題性が一躍高まることに。あまりにヒールすぎる行動だったことから、放送直後には玉置本人が「玉置玲央や俺が演じる大河ドラマの道兼は嫌いになっても、『光る君へ』は嫌いにならないでください」と公式Xで発信していたほどだ。

その後もヒステリックな悪役の道を突き進んでいる道兼だが、役者としての玉置に関しては、まったく正反対のイメージを抱いていた視聴者も多いという。
実際にここ数年のNHKドラマでは、玉置は善人の役を演じている印象が強かった。

たとえば昨年1月からNHKドラマ10枠で放送された男女逆転『大奥』では、蘭学者・青沼の補佐である黒木役として登場。難病の撲滅のために奮闘する、熱い男といった役どころだった。そして2021年の連続テレビ小説『おかえりモネ』では、記者の沢渡公平役を熱演。こちらは第一印象こそあまり良くなかったものの、話が進むにつれて報道への真摯な姿勢などが見えてきて好感度が上がる、味のあるキャラクターだった。

そんな玉置が『光る君へ』では一転して憎まれキャラを演じている上、かなりのハマり役だったので、驚いてしまった視聴者もいるのだろう。
しかし実のところ玉置は、道兼のような“悪い男”も大得意な俳優だ。

実際に玉置は過去のインタビューで、自身が演じてきた役柄について、「クズ」や「人殺し」が多いことを語っていたほど。本人としても、いわゆるヒールなどと呼ばれるようなキャラクターの方が、得意分野であるという自負があるようだ。

これまでの出演作品について振り返ってみると、2018年に公開された佐向大監督の『教誨師』では、高宮真司という自己中心的で教誨師に強く当たる死刑囚の役を演じていた。同作は玉置にとって初出演映画だったにもかかわらず、「第73回毎日映画コンクール」のスポニチグランプリ新人賞を受賞し、演技力の高さを多くの人に評価されるきっかけとなった。

いわゆる“クズ男”系の役も大得意で、2020年放送のドラマ『伝説のお母さん』では、モブと呼ばれるクズ夫役に。
会社をクビになっても「専業主夫になればいい」と開き直り、にもかかわらず赤ちゃんのオムツも変えないでゲームに逃げ、しまいには自分には子育てが「向いてない」と言ってのける、常軌を逸した危ない夫を演じていた。案の定視聴者からは、そんなモブの姿に苛立つ声が多数上がっていたが、役者冥利に尽きる反応と言えるだろう。

また2020年に放送されたTBS系ドラマ『恋する母たち』では、いけ好かない不倫弁護士・蒲原繁樹役を好演。こちらは真面目系クズといった雰囲気の役どころで、わりと登場人物のほとんどがクズといった作品だったが、その中でも共演者にまで「(蒲原繁樹は)クズだったねー」と言われるほどの存在感を見せていた。

そう考えると『光る君へ』は、これまで多種多様な“悪い男”たちを演じてきた玉置の集大成と言えるかもしれない。道兼役としてどのような演技を見せてくれるのか、今後のエピソードにも注目だ。


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