Netflix映画『ちひろさん』などで注目を集める若手俳優、長澤樹が主演する映画『愛のゆくえ』が3月1日(金)に公開される。北海道と東京を舞台に、幼馴染の少女と少年が抱える孤独と再生を幻想的な世界観で描いた本作で、長澤は主人公となるセリフがほとんどない無口な中学生という難しい役どころに挑戦。
撮影でのエピソードや本作への思いなどを聞いた。

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映画『愛のゆくえ』で長澤が演じるのは、複雑な家庭環境に置かれているがゆえに本心を口に出せずにいる中学生・須藤愛。無口な少女とあって、表情や目の動きでの芝居が多かったという。

「実際に演じてみると頭のなかでぐるぐるといろんなことを考えているのに、それを表に出していないだけなんだと気付きました。このぐるぐる考えているものを大事にして、それをどう表現するか。セリフがほぼなかったこともあって、気持ちを言葉に出せないのは、かなり大変でした」

新進気鋭の若手映像作家、宮嶋風花監督の商業映画デビュー作でもある本作。
監督自身の実体験がストーリーのベースになっている。

「現実なのか、夢なのか分からないような抽象的な部分が多かったので、台本を読んだときに分からなかったところや役について思ったことを聞いたりして、監督とはすごくいろいろお話しさせていただきました。『こういう意味ですか』と尋ねると同じ解釈だと言われることがほとんどだったので、監督と感覚が似ているのかなと思ったんですけど、愛ちゃんは監督がモデルのキャラクターだから、愛ちゃんと自分も似ているのかなと思いながら演じていきました」

撮影が行われたのは、真冬の北海道。愛の幼馴染・宗介を演じた窪塚愛流とともに、雪原でたたずむポスタービジュアルも印象的だ。

「これ見ただけでも寒そうじゃないですか。もう本当に寒かったです(笑)。
いくらカイロを貼っても意味がないくらい。歩いたらずぼっと太ももまで雪に埋まるシーンもあったし、雪に足跡がついてしまうから何度もできない緊張感もあって、大変でした。でも、だからこそ愛ちゃんを演じきれた、という部分もあるのかなと思っています。寒いと、どこかちょっと不安になるじゃないですか。それが、愛ちゃんの不安な想いとリンクしたというか。自分もそういう気持ちになりました」

二人暮らしだった母親が死に、父親に引き取られて北海道から東京に。
誰にも頼れない環境のなか懸命に生きる愛を演じた経験は、長澤にとって大きな糧になったという。

「東京から北海道に戻って涙を流すシーンがあるんですけど、自分でもなんでああいう演技ができたのが不思議なくらい、このシーンの記憶があまりないんです。愛にとって重要なシーンだったから監督とも『こういう感じでやりたい』と話していたんですけど、実際は考えていたものともちょっと違って。あの表現になったのは自分でも謎だし、そこまで役に入り込めていたんだなって。終わったときに、役がパーッと抜けていく感覚もあって、これがお芝居の醍醐味なんだと改めて実感しました」

オードリー・ヘップバーンへの憧れから俳優を目指したという長澤。本作をはじめ、Netflix映画『ちひろさん』の宇部千夏(通称・べっちん)役など、個性的な役どころが多い。


「パッと見の印象で、ミステリアスとか大人っぽいというイメージを持っていただくことが多いので、そういう役をいただくことが多いのかなと思うんですけど、素の私は全然違うんですよ。お話するのも好きだし、家族には『うるさい』と言われることもあるくらい(笑)。演じた愛ちゃんも学校で『何を考えているのが分からない」と言われてましたけど、私もよく言われます。でも、愛ちゃんと違って私は本当に何も考えてないか、お腹空いたなとか(笑)。そんな感じです!」

昨年、18歳を迎え新成人に。「改めて自分のやりたいことがはっきりした」という長澤だが、大人になったなと感じたことは?と尋ねると「コーヒーが飲めるようになりました!」と笑顔を見せる。


「ずっと苦手だったんですけど、撮影のときにコーヒーが小物として出てきたときがあったんですね。もちろんそれに手をつけなくてもお芝居はできるんですけど、ここは飲んだ方がいいなと思って飲んでみたら『あれ、おいしい』って(笑)。それ以外は全然小さいときと変わってない気がします。周りからはマイペースだねって言われることが多いです。あまり自覚はないんですけど」

主演映画となる本作の公開に続き、今春にはミュージカルにも初挑戦。今後は、さらに俳優として活動の幅を広げていきたいと意気込む。


「やっと最近、お芝居の楽しさを実感できるようになりました。実際に演じるときはもちろんなんですけど、役作りの準備期間がすごく好きなんです。もっとこうした方がいいかなと考えるのが楽しくて。それが現場で変わるのも面白いなと思っています。今は、いろんな役に挑戦したいという貪欲な気持ちでいっぱいです。カーリングとか、サーフィンとか、自分が思ってもいないことをやらせていただくことも多いし、お芝居だけじゃないところでも演じるって挑戦の連続だなと思っています」

挑戦するときに大事にしているのは、「とにかくやってみること」。本作への出演も「最初はびっくりした」と言うが、「難しいかどうかも、やってみなくちゃ分からない」という気持ちが大きかったという。

「フィクションっぽい要素もあるので、責任感や緊張感を持ってやらなくちゃいけないなという気持ちはもちろんありましたけど、愛ちゃんに共感できる部分もあったので、とにかくやってみようと。『できるかな』とか『自分にとってのメリットは?』とか考えちゃうと気持ちが揺らいでしまうので、直感でなるべく動くようにしています。今後も、決めたらやる!という初志貫徹みたいな気持ちを大事にしながら、いろんな作品にチャレンジしていきたいです」

取材・文/吉田光枝
ヘアメイク:MAI KUMAGAI(HITOME)
スタイリスト:NATSUKI TAKANO(HITOME)

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