1月より放送中のドラマ『消せない「私」ー復讐の連鎖ー』(日本テレビ)に、志田彩良演じるヒロイン・硝子の復讐相手の一人・海崎藍里役で出演し、その悪女ぶりが話題となっている女優・吉本実憂。いじめによって硝子を絶望に突き落とす藍里を見事に怪演する彼女だが、その内面を理解することは難しかったそう。
藍里とは対照的な、はつらつとした笑顔で取材に応じる吉本に、本作への思いや役作りでのルーティン、近況などを語ってもらった。

【写真】“悪女”怪演が話題の吉本実憂、ドラマ『消せない「私」ー復讐の連鎖ー』場面写真【14点】

──今日はご出身である北九州のイベントに参加されるということですが、昨年末には北九州国際映画祭にも出席されていましたよね。やはり地元に関するお仕事は嬉しいものですか。

吉本 北九州が大好きなので、すごく嬉しいです。地元のお仕事をさせていただくと、自分が嬉しいのはもちろん、家族も誇りに思って喜んでくれるので、親孝行にもなっているかなと思っています。

──女優としての吉本さんのご活躍について、ご家族の方はどんな反応をされていますか。


吉本 母は好奇心旺盛なのか、ドラマのことをすごく聞いてくるんです。今出演している『消せない「私」ー復讐の連鎖ー』についても、「包帯は辛かった?」「階段から本当に落ちてないよね?」というように、現実的なことばかり聞いてくるので、答えていいのかなと少し迷ってしまいます(笑)。

──『消せない「私」ー復讐の連鎖ー』で演じた海崎藍里についてはどのような印象をお持ちですか。

吉本 台本を読んでいて「こんなに救いようのない女の子がいるんだ」と思いました(苦笑)。今までも悪女役をやらせていただいたことはあるんですが、今回は個人的に、悪女にあざとさが入ってくるところが新しいなと思いました。

──こうしてお話していても、明るい雰囲気の吉本さんと藍里は印象が大きく違います。
演技をする上で、本来の自分と役との切り替えが難しくなるようなことはありませんでしたか。

吉本 以前は、悪女を演じる時には、他の皆さんと空気感が一緒にならないように、カメラが回っていない時にもあえて孤立していたんです。でも今回は、監督やプロデューサーの方との話し合いの中で「現場は楽しく過ごして大丈夫」「むしろコミュニケーションを取ってもらった方が良い」と言っていただいたので、復讐のドラマを撮っているとは思えないほどすごく明るい現場になりました(笑)。ドロドロ感もまったく無く、楽しく過ごさせていただきました。

──学生服時代の描写では、制服を着ての撮影もありました。青春を感じることはできましたか。


吉本 藍里の場合は意地悪な青春でしたけどね(笑)。それに、私の青春時代はあんなにオシャレではなかったです。私が学生だった頃は、髪が長いと三つ編みにしなくてはいけない校則があったので、おさげにしていたんです。前髪も目にかかる長さだったら、七三に分けてピンで留めなくてはいけなかったし。今回の役みたいに、メイクもばっちりして、スカートも短くて、というのは全然なかったので、華やかな青春を初めて味わったような感覚でした。

──当時から、人前に出ることは好きだったのでしょうか。


吉本 いわゆる陽キャではあったと思いますが、人前に出ることが好きなわけではありませんでした。ただ、体育の授業や体育祭で活躍することは大好きでしたね。

──運動が得意だったんですね。人前に出るお仕事をしたいと考えるようになったきっかけはなんでしたか。

吉本 「全日本国民的美少女コンテスト」への応募がこのお仕事の始まりです。当時は、友達の前では明るく話せたんですが、大人の人と話すことがすごく苦手で、母の後ろに隠れていたりしてたんです。
それで母が「こんなに人見知りだったらどんな仕事もできないんじゃないか」とコンテストに応募して、ありがたいことにグランプリをいただきました。

10代の頃には人の目を気にしすぎて、「小学生の頃は裸足で駆け回っていたな、木登りもしていたな」と思い出しては悲しくなっていた時期もあったんですが、「その頃に戻りたい」と考えるようになってから、表現の場ではなるべく自由でいられるように変わりました。

──普段、作品に参加する際に心掛けていることは何かありますか。

吉本 ルーティンになっているのは、演じる役の年表を作ることです。企画書や脚本には書かれていない、その役の人生があると思うので、表現のために穴を埋めるんです。自分自身が今まで生きてきたことって、人に話をすることもできるじゃないですか。
だから、役を演じる時も自分がやるならそうでなくてはいけないと思っているんです。そのために、どこで生まれた、とか、この時期にこういうことがあった、とか、両親はこういう人で、恋愛はどれくらいしてきたか、というような設定を年表にするんです。

──役作りをしていく過程で、藍里に共感する部分はありましたか。

吉本 藍里を理解することは、なかなか難しかったです。どちらかというと、硝子のような、負の感情が生きる源になる気持ちは分かります。復讐を生き甲斐にするとまでは言いませんが、怒りや悲しみ、悔しさのような負の感情が活力になることはありますね。理不尽な思いをするようなことがあったら、物理的に復讐をするのではなく(笑)、「作品で返そう」と力に変えています。

──お仕事に対しての変化は感じますか。

吉本 覚悟はできていても「本当に役者人生をこのまま歩んでいけるのだろうか」という不安はもちろんありました。でも、いつも近くで支えてくださっている仲間と一緒に作品に携わるたびに「やっぱり大丈夫だ」とパワーが増すんです。以前お仕事をさせていただいた方にもう一度呼んでいただいたりする機会や、新しい出会いも増えたので、今は不安はほとんど無くなりました。私にとっては作品に携わり続けることが生きがいなので、楽しく活動できています。


吉本実憂
1996年12月28日生まれ、福岡県出身。全日本国民的美少女コンテスト グランプリ受賞し芸能界デビュー。2014年「獣医さん、事件ですよ」(NTV)でテレビドラマ初出演、同年12月には映画初出演で初主演作品となる映画「ゆめはるか」が公開される。その後ドラマ、映画を中心に活躍。映画「透子のセカイ」でフランス・ニース国際映画祭 最優秀外国映画主演女優賞を受賞し、映画「瞽女GOZE」では第30回日本映画批評家大賞 新人女優賞を受賞している。待機作品として、映画「室町無頼」(2025年1月17日公開予定)がある。

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