放送中のドラマ『RoOT / ルート』(テレビ東京・火曜深夜24時30分)に主演している俳優・河合優実。本作では坂東龍汰とのW主演で、いずれも地上波ドラマ初主演を果たしている。
とくに河合は前クールのドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS)にレギュラー出演し、堂々とした佇まいとクセのあるキャラクターから注目を浴びた存在だ。今回は、これまで映画を中心に活躍してきた河合が最新ドラマでどのような演技を見せ、今後どのように変化していくか考えたい。

【写真】高校時代の玲奈(河合優実)、ほか『RoOT / ルート』場面カット【10点】

ドラマ『RoOT / ルート』は現在連載中の漫画 「RoOT / ルート オブ オッドタクシー 」で描かれている主人公、玲奈と佐藤による若手探偵コンビの奮闘劇だ。原作をベースにしつつドラマオリジナルのストーリーが展開されている。河合は19歳ながら探偵として生活しているクールな女性・玲奈を演じている。玲奈と、新人の佐藤はあることをきっかけにタクシー運転手の素行調査をすることになるが、次第に女子高生失踪事件との繫がりが浮かび上がる。


1月クールのドラマ『不適切にもほどがある!』での河合の演技を観ていた視聴者にとっては、前作と『RoOT / ルート』で演じているキャラクターの違いに驚かされただろう。

『不適切にもほどがある!』で河合は主人公・小川市郎(阿部サダヲ)の娘・純子を演じた。物語は1986年と2024年とのタイムスリップが大きな鍵を握っており、純子は1986年に高校2年生だったため、ヘアスタイルやメイクアップ、歩き方や言葉遣いに至るまで昭和の雰囲気を漂わせていた。河合は2000年生まれであり昭和を知らない世代だが、外見だけでなく所作の再現度は質が高かったといえる。

本作は随所にミュージカルパートを取り入れており、ドラマ全体を通して気鋭の作品だ。河合も劇中で歌やダンスを披露し、その多彩さに驚かされた。
初めて河合の演技を観た視聴者にも強い印象を与えただろう。

デビューは2019年と決してキャリアが長いわけではないが、過去作品を振り返るとすでに映画での活躍が目立つ。2022年には8本の映画に出演し、2023年には小説家・朝井リョウ原作の『少女は卒業しない』で長編映画初主演を飾った。

廃校が決まった高校で、最後の卒業式が行われる前の2日間を描く。河合は答辞を担当する料理部部長の主人公・山城まなみを演じた。まなみの彼氏・佐藤駿(窪塚愛流)への想いを抱えながら、高校生活からの旅立ちを迎えるまなみの機微を見事に表現していた。


途中、佐藤が事故で転落死してしまうことを考えると、まなみの高校生活は共感しやすい部分だけではないが、鑑賞しながら自らの高校時代と重ね合わせた人は多いだろう。

とくに映画の終盤、まなみがひとりで答辞を読み上げる場面の演技は圧巻だった。仲間たちと離れる切なさや儚さだけでなく、亡くなった佐藤への想いが存分に発揮され、演技の域を超えていたともいえるだろう。

他方、映画『愛なのに』(2022)では、主人公・多田(瀬戸康史)の古本屋に足繁く通い、30歳の多田に結婚を求める純真な高校生を演じ、同じ高校生役でも全く違うキャラクターを提示した。とくに本作は、瀬戸をはじめ、さとうほなみや中島歩らが演じる大人のラブストーリーを含んでおり、それらとの対比も素晴らしかった。

河合のどの演技を観ても、役に合った堂々とした佇まいの裏に、冷静なキャラクター分析が行われていることが伺える。
主人公、脇役とこれまで演じたキャラクターの立ち位置はそれぞれだが、物語の全体像を的確に把握し、作品における自身の役割を見い出しているのではないだろうか。

放送中のドラマ『RoOT / ルート』においても、W主演の坂東龍汰とも非常にバランスが良い。それぞれが演じるキャラクターの特性もあるが、河合の落ち着いた演技によるところが大きいだろう。

2クール続けて地上波のドラマに出演し、これを機に多くの視聴者の目に留まったはずだ。もちろん映画での活躍も続くだろうが、河合優実が国民的女優といえるほどの知名度と信頼を獲得する日も近いかもしれない。

【あわせて読む】河合優実&坂東龍汰主演、オッドタクシーの世界から新たなミステリードラマが誕生『RoOT / ルート』