格差・貧困問題に取り組み、メディアで積極的に発言をしている作家・雨宮処凛が、バンドやアイドルなどを愛でたり応援したりする“推し活”について深堀りするコラムシリーズ第7回。今回のテーマは、ラーメン界にも推し活があるのか? そこで、年間700杯ラーメンを食べ続ける、日本全国のラーメン店の発掘と紹介をライフワークにしている、かずあっきぃ(通称、ラーメン官僚)氏に登場してもらい、あまりに奥深いラーメンの世界について語ってもらった。
(前後編の中編)文・雨宮処凛

【前編はこちら】年間700杯ラーメンを食べる男、ラーメン官僚に聞く麺人生「自分を変えたのは環七ラーメンブーム」

【写真】ラーメン官僚、珠玉の推しラーメン3

さて、ここでラーメン二郎についての疑問をぶつけてみたい。どの店舗も行列、という印象があるほど人気だが、「注文方法がわからない」「ルールを知らないと怒られそう」「二郎警察の取り締まりが厳しい」など初心者へのハードルが著しく高いイメージだ。それなのに、熱狂的なファンが存在する二郎。

「ファンを抱える理由はいくつかあります。まず、コスパがいい。ラーメン界には以前から”1000円の壁”というものがありまして、これは21年頃に突破されて次は”1500円の壁”と言われているんですが、二郎は800~900円で量は二倍。
コスパでいうと普通のラーメンの4倍になるわけです」

景気の停滞と長引く物価高騰という世相を反映しているのかもしれない。

「もうひとつは、”特別なことをしている”という優越感があるのかもしれません。二郎は誰にでも開かれているわけではなく、量や味の問題で食べられない人もいる。それなのに”マシマシ”って頼める自分、とか。自分がどこまで食べられるかを試すという意味でも、普通のラーメン店では味わえない要素ですよね」

自分との戦いの場、二郎。

「遊園地とかで激しいジェットコースターに乗るという感覚にも近いのかもしれません」

そんな二郎には、初心者にとって「残したら生きて帰れるのか!?」という不安がつきものだが(一部の二郎インスパイア系の店では罰金がとられることがあるらしい…)、言われるほど怖くはないという。


「スマホ見たりしゃべったりせずに、一生懸命食べていれば大丈夫だと思います」

頑張って食べる姿を見せれば怒られることはないそうだ。が、飲食店で「頑張りを見せる」とか、やはり独特の流儀である。

もうひとつ、聞いてみたいのは蒙古タンメン中本についてだ。関東を中心に多くの店舗を構えるが、「オープン〇周年」というイベントの際などは熱烈なファンが始発から並び、社長や副社長との撮影会があったりと「推し活」さながらの光景が見られるらしい。中本の魅力はどこにあるのだろう?

「二郎と中本との違いは、二郎は店ごとにコンテンツや味を変えることが許容されているけれど、中本は、少なくとも蒙古タンメンなどの定番商品については、どこで食べてもあまり違いがないということです。例えば二郎だと、直系44店舗の中でも、目黒店はスープが透き通っているけれど、他店では濁っていたり乳化している。
野菜の入れ方や麺の太さも違う。先に直系の二郎しか食べないリピーターの話をしましたが、彼はその違いがあるから生きていけるんです。僕からしたら全部同じジャンルだとも思うんですけど(笑)。ただ、そんな中本のファンが重要視するのは、”誰が作ってるか”なんです」

人なのだ。

「中本の魅力は、ファンに言わせると”都度調理のメニューがある”ということなんです。五目味噌タンメンや味噌卵麺などは、注文の都度、一から調理しますので、誰が作るかで全然味が変わるという。
社員が異動になると、その人についていくという傾向もあるようです」

中本の世界、それはそれで独自の深さがあるようだ。

そんなラーメン官僚に、令和6年の最先端ラーメン事情を聞いてみよう。

「最近はスープの技術が極限まで上がってきて、今は麺で差別化する時代になっています。自家製麺を使うお店が増えていて、そうなると麺を食べさせる類のラーメンが美味くなっていく。だから今、つけ麺がブームになっている。これは論理的に言えることなんです」

【後編はこちら】ラーメン官僚が語る、失われた30年とラーメン30年史「素材の価格高騰、ウクライナ問題も」