【画像】5月16日(金)には第4話が放送される『魔物』
同作は、4月18日に初回が放送されたが、当初はおとなしめの内容でそこまで注目すべきドラマではなかった。しかし、第2話「愛欲のキムチチゲ」から物語が急展開し、一気に暴力とエロスの渦に巻き込まれるような構成になる。
初回の最後では大学教授・名田奥太郎(佐野史郎)が殺害される事件が発生し、凍也が容疑者として逮捕されてしまう。あやめは、ひょんなことから凍也の弁護を担当することになるのだが、怒涛の勢いで2人は恋に落ちていく。
凍也の知られざる過去と危険な色気に翻弄されるあやめは、ダメだとわかっていながらも一線を越えることに。凍也もまた、あやめに惹かれていき2人は情熱的なキスをして、ついには体を交えることになってしまう。
また、同じく2話では奥太郎の葬式に現れた凍也とあやめに対して、遺族が熱々の「キムチチゲ」をぶっかける強烈なシーンも披露。韓流ドラマ的なベタで大げさな演出となり、SNSでは「キムチチゲ」が盛り上がる一幕もあったほどだ。しかも、その後すぐに欲情した2人がトイレで獣のように愛し合う濡れ場を見せるなど、とにかくカオスな展開が目白押しとなった。
さて、2話で暴走気味の脚本となった『魔物』だが、続く第3話「偽りのサムギョプサル」では、さらに2人の愛はエスカレートする。既婚者である依頼者と肉体関係になったことを悔やみながらも、常に凍也のことを考えてしまうあやめ。一夜限りの過ちだったと凍也に告げるのだが、ここから凍也の猛烈なアプローチが続いていく。結果、またも関係を持ってしまう2人なのだが、最後の最後に大どんでん返しが待っていた。
かわいらしい子犬のようなキャラだった凍也だが、あやめが自分との約束よりも仕事を優先したことに激昂。3話の最後では、甘えてくるあやめの髪の毛を引っ張り、グーパンチのフルスイングで殴るというDVをお見舞いする。コンプラ無視の過激すぎるDVシーンとなったが、さらに凍也があやめの同僚を襲った疑いも浮上し、とんでもないサイコパスだったことが判明する。
ドラマの公式HPでも「不倫、DV、セックス、殺人」が繰り広げられると予告されていたが、3話で濡れ場から壮絶なDVまで怒涛の展開すぎて視聴者は情緒がついていかないほど。今期の春ドラマの中で、もっとも危険度の高いドラマにいまのところなっていると言えるだろう。
ちなみに、同作は性的描写や過激なシーンを、出演者の意向に沿って安全かつ倫理的に撮影するための専門家・インティマシーコーディネーターを採用している。それだけに、今後もかなり過激なシーンが登場することが予想される。
5月9日には早くも「特別編」を放送して一息ついている『魔物』だが、第4話も壮絶な内容となりそうだ。
この『魔物』の良いところは、ベタで美しい映像にこだわる韓流ドラマ的な側面と、ドロドロで陰湿な男女関係を描く日本のドラマ的な演出がうまくミックスされているところだ。双方のバランスが良く、独特なテンポと緊張感を生み出すことに成功。他のドラマにはない、くせになる演出で視聴者を飽きさせない構成になっている。
また、麻生と塩野の存在感も素晴らしい。麻生は、NHK連続テレビ小説『おむすび』で演じた米田愛子役から一転して、バリバリ仕事ができる美しい女性弁護士に豹変。メイクもバッチリ決まり、美しさ全開でSNSでは女性からの支持も高くなっている。また、表情の作り込みやセリフ回しも上手で、さすがは実力派のベテランといった演技を見せている。
方や、これまで優等生キャラが比較的多かった塩野は、狂気のDVキャラをうまく演じられている。バキバキに鍛えあげた体と、いつも遠くを見つめる儚い目は多くの女性がときめくところ。男性が見てもほれぼれする美男子で、ビジュアルでも韓流ドラマ的なくさい演出にしっかりと対応できている。
見た目だけでなく、塩野はデートシーンで見せるかわいい弟キャラと、DVする際の悪人顔の演じ分けもうまい。二面性がある凍也を見事に表現していて、圧倒的な存在感を見せている。この『魔物』は、理解が追いつかない演出もあり、一歩間違えればギャグドラマになってしまう作品だ。なのに、麻生と塩野の演技力が高く、見た目の美しいインパクトがあるから見ていられる。この2人でなければ成立しなかったドラマかもしれない。
こんなにおもしろいのに、Tverのお気に入り登録は5月上旬時点で33万と、あまり人気がない『魔物』。しかし、実際に見るとハマってしまい中毒者を続出させている作品だ。春ドラマで、もっとも注目すべき隠れた名作となっている『魔物』を、いまからでも追いかけて最後まで視聴することをおすすめする。
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