卒業後はコラム執筆などを続け、このほど書籍を発売したばかりの吉沢に、AV時代の話から「恵比寿マスカッツ」のメンバーとして活躍したアイドル時代の話、そしてAV引退後の今の話を聞いた。(3回連載の1回目)
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──まずこのタイミングで自伝を出そうと思ったきっかけからお聞きしたいのですが。
吉沢 数年前から新堂冬樹先生に小説をプロデュースしていただくプロジェクトを進めていたんですけど、執筆が止まっていたんです。その前提があって、所属事務所から「2020年に本を出したい」という意向がありました。私的にもAV女優引退から半年ぐらい経った時に、改めてAVデビューからの16年間、どういう成長ができたのかを自分自身で振り返りたかったんですよね。
──本書ではデビュー当時に吉沢さん自身が書いた日記の引用もありますが、もともと書くのは好きだったんですか?
吉沢 デビュー前から、所属事務所の社長に「ゆくゆくは本を出せるように日記を書いておけ」と言われていたんです。それで2年間ぐらい、毎日ではないんですけど、仕事の度に出来事や思ったこと、反省点などを書いてました。
──日記を書くことで気付きも多かったですか?
吉沢 心の中のモヤモヤしたものを、書くことで落ち着かせるというか、心の整理はつきやすかったです。
──現役時代、当時の日記を読み返すことはあったんですか?
吉沢 なかったですね。今回読み返してみて、当時の悩みとかが事細かに書いてあって、本当に精神状態が弱かったんだなと恥ずかしくもあり、懐かしさもありました。いろんな経験をして、デビュー当時の繊細な気持ちを忘れていたんですけど、日記を書いてて良かったなと思いました。
──自分のメンタルが強くなったなと感じたのはいつ頃ですか?
吉沢 2008年4月に『おねがい!マスカット』(テレビ東京)が始まって、恵比寿マスカッツのメンバーになってからですね。いろいろ揉まれて、悩んでなんかいられないなと。スケジュール的にもパンパンでしたし、進むしかないなと思ってやっていくうちに強くなったと思います。
──実は、本書で言及されている『おねマス』の総合演出を担当していたマッコイ斉藤さんがマスカッツを野球チームの打順にたとえた記事は、私が担当したんですけど、「次に不動の5番なのが吉沢明歩です。彼女は人一倍、空気を読みますからね。でしゃばらないし、自分の与えられたことは100パーセントでやる。こんないい打者はいないですよ」と評していました。
吉沢 そうだったんですね。当時は収録現場に行くのも憂鬱で、胃が荒れるんじゃないかってぐらい緊張感があって、ゴハンも喉に通らなかったんですよ。
──AV女優としてのキャリアは十分だったのに、そこまで緊張していたんですね。
吉沢 良い意味でAVの撮影も引退作まで緊張しっぱなしだったんですけど、現場に行きたくないなとは思わなかったです(笑)。
──「おねマス」の吉沢さんは堂々としていた印象ですけどね。
吉沢 芸人さんじゃないのにひな壇に座って、何をしていいのか、どうやって自分を出せばいいのか分からなかったんですよ。でも自分のコーナーを持たせて頂いてからは、スタッフさんが私の得意・不得意を見極めて、番組での活かし方を考えてくれたので、すごく愛情を感じました。
──吉沢さんの活かし方と言うと?
吉沢 大勢の中で率先して前に出るよりは、1コーナーを持たせて何かやらせたほうが面白いだろうと。その中でパッと出た一言が、いかに刺さるかを自分なりに毎回考えていました。
──他のマスカッツメンバーにライバル心はありましたか?
吉沢 当時はRio.ちゃん、(蒼井)そらちゃん、みっひー(みひろ)なんかが自分の個性を活かしてガンガン前に出ていたので刺激になりましたけど、ライバル心とは違いますね。
──メンバーだけで打ち合わせみたいなことはしなかったんですか?
吉沢 話し合っている子たちもいたんですけど、そうやって準備して何かをやったら、マッコイさんに怒られるんです。予定調和的なことを嫌うんですよね。
>>インタビュー(2)「AV女優としてのジレンマ」はこちらから

▽『単体女優 AVに捧げた16年』(光文社)
発売日:3月28日
定価:1,760円(税込)
出版社:光文社