【写真】HKT48新劇場オープン記念公演の様子【12点】
9月と10月の2か月間、9週間に渡ってHKT48の「いま」を伝える短期集中連載をエンタメnextで展開させていただいた。
1期生から5期研究生まで全10名のメンバーに登場していただき、コロナ禍での苦悩や新たなる希望、そして待望の新劇場オープンに向けての想いを語ってもらったのだが、その流れで「こけら落とし公演を取材しませんか?」という、ありがたいお誘いを受けた。
九州エリア在住の方のみの限定公演ということで、一瞬、躊躇もしたが、ここまでカウントダウン取材を続けてきて、肝心な「0」の部分だけなにも書かずにいる、というのも無念だったので、急きょ、博多に飛ぶことを決めた。
博多に来るのは、今年の1月以来。HKT48の取材をはじめてから、こんなにも長く間隔が空くのは、ちょっと記憶にない。
そしてPaypayドーム界隈に至っては、もう何年ぶりの来訪になるのか、すぐには出てこないほど久しぶりだ。
本来であれば地下鉄で唐人町駅まで出て、そこから少しずつ気持ちを高めながら徒歩で向かう、というのが王道ルートなのだが、小雨が降ったり止んだり、というグズついた天気だったので徒歩ルートを回避し、博多駅から最寄りの「九州医療センター」までバスで向かうことにした。
とはいえ、はじめて新劇場に足を運ぶわけで、バスを降りて、すぐに劇場の場所がわかるのか? という不安もいささかあったのだが、なんということはなかった。バスを降りたら、その対面に新劇場が入っている商業施設『BOSS E・ZO FUKUOKA』がデーンと鎮座していた。しかも、施設名がドーンと書いてあるので迷いようがない。これでひと安心だ。
開場10分前。
劇場の中に入ると、もうすぐお客さんが入ってくるというのに、客席でなにやら作業が行われていた。
話を聞くと、ファン有志一同から贈られたお祝いの垂れ幕を飾っているのだという。
コロナ対策で最前列はすべて空席となっているので、そこに垂れ幕をセッティングする。お客さんからは見えないが、幕が開いたとき、メンバーだけが目にすることができる。なんとも粋な心遣いではないか。
18時。
なにもかもがまっさらな新劇場に、続々とお客さんが入場してくる。
入口でその光景を見ていたら、(HKT48運営会社の)前田社長がそこに立っていて、お客さん1人ひとりに頭を下げて「いらっしゃいませ」とお出迎えをしていた。
前田社長はつい先日、メンバーがレギュラー出演している『オケハザマってなんですか?』(RKB毎日放送)にゲストとして登場したばかりなので、九州在住のファンであれば、みんな見ていたはず。それもあって、まさかのお出迎えにびっくりしている人も多かったが、新体制移行のタイミングとコロナ禍が重なってしまったため、運営の顔がファンから見えにくくなっていたことを考えると、現場でのこういう対応は非常に大事なことだと思う。
座席は一席置きに空けられており、立ち見の人数も制限されているので、キャパ300人に対して、この日の観客は128人。
開演前の会話なども控えめにしなくてはならない。これまで、いくつかのアーティストの有観客ライブに足を運んできたが、やはり開演前はシーンとしていた。この日もそうだったのだが、劇場が広くないせいか、誰もしゃべっていないのにワクワク感がじわ~っと場内に広がっていく不思議な感覚をおぼえた。
8カ月ぶりの公演。
旧劇場のクローズから4年7カ月。
待ちに待った新劇場のオープン。
ワクワクするな、というのが無理だし、待ちわびた時間に溜めた想いが客席から漏れまくっている!
それでもシーンとしているので、客入れのBGMがとても大きく響く。いままではあまり意識してこなかったが、この日は過去のシングル曲のインストが流されていた。頭の中に旧劇場や仮住まいだった西鉄ホール、パピヨン24ガスホール、スカラエスパシオの光景がフラッシュバックする。
そして、ついに開演。
1曲目はCDデビュー曲となる『スキ!スキ!スキップ!』。初披露のときと同じく、センターには田島芽瑠が立っていた。
田島芽瑠は歌いながら、目の前にファンからの垂れ幕が飾られていることに気づいたようで、ちょっと驚いた表情を浮かべたあと、フォーメーションで横に来たメンバーに、垂れ幕を指さしながら、その存在を教えていた。なんたる余裕! 完全に公演をエンジョイしているようだ。
16人で披露した1曲目が終わると、うしろに控えていた次の16人が登場。2曲目のあとには、さらなる16人が登場して、ステージはノンストップで続いていく。
そして、最初のブロックでほとんどの観客が察知していた。
今日のセットリストは、これまでのシングル表題曲を「実写版ベストアルバム」として、リリース順に歌っていくのだ、と。
全メンバーが参加しての記念公演。
そして、新しい歴史の第一歩になる「特別な一日」であることを考えたら、全員でタイムマシンに乗りこむような感じで「新劇場までの道のり」をたどっていくのは、とっても自然なセットリストではないか?
そう、あくまでも「特別な一日」。
新劇場がオープンして、翌日から平常運転で公演が再開できるのであれば、もっと劇場公演に寄せたセトリや演出でよかったのかもしれないが、まだ通常の公演を開催するのは難しい。ならば「特別な一日」感に振り切ってしまったほうがいい。
劇場はずっとここにある。
いつか、きっとやってくる「日常」。
そこに合わせて、公演の在り方を試行錯誤しながら、定めていけばいい。何度でも試行錯誤やブラッシュアップを繰り返すことができるのも、専用劇場の大きなメリットなのだから。
ただ、ひとつだけ不安があった。
(後編につづく)