結成以来、チームN、チームM、チームBIIの3チームにわかれて劇場公演を行ってきたNMB48。メンバーの卒業や加入、そして組閣と呼ばれるチーム替えによって、チームのメンバーが変わることはあっても、その体制自体が変わることはなかった。
だが、今年に入り、グループのさらなる活性化を目指そうと、そのずっと続いてきた体制にもメスを入れた。これまでのチーム制を解体し、全体を6つのグループにわけ、ガチバトルを開催するというのだ。

争う種目は「劇場公演」 「配信イベント」 「ファン投票」の3つ。中でも大きな配点が割かれているのが「劇場公演」だ。「ENTAME next」では、結成当初からAKB48グループを追い続けてきたライターの犬飼華氏が全6グループの劇場公演を視聴、1クール分をまとめて忖度なしでレポートする。

【写真】共通の目的は「勝ちにこだわる」各グループの劇場公演の模様【13点】

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 今年の1月1日、NMB48は約10年間続けてきたチーム制を解体し、グループ全体を6つに分けてのバトルを行うと発表した。

 「NAMBATTLE~戦わなNMBちゃうやろっ!~」と銘打たれたこのイベント。HPには「NMB48のさらなる活性化のために新プロジェクト……」とある。種目は、劇場公演、配信イベント、ファン投票の3つがある。

 たしかにグループ内を活性化させるプロジェクトではある。しかし、それ以外にも意味はある。

 まず、昨年、NMB48は10周年を迎え、新章に突入したかったということ。
初期から中期にかけてグループをけん引した山本彩渡辺美優紀はもうとっくに卒業しており、昨秋、吉田朱里も旅立った。1期生は白間美瑠ただ一人。そんな状況であれば、グループ自体を刷新させようという声が内部から起きても不思議はない。NMB48の長所は、それを断行できることだ。

 2つめに挙げられる意味は、48グループ全体としての活動(選抜総選挙、コンサートなど)が減っていき、国内各グループの独自路線が強まったこととも関係がある。HKT48は昨秋からチームをシャッフルした別チームを作り、2チームがステージに立つ形での公演を行っている。また、今月からメンバー自身が企画、出演などを手掛けるオンライン演劇もスタートする。48グループがオリジナルの色を出すようになってきた流れの中で、それ以前から独自路線が強かったNMB48は、チーム解体という手を選んだわけだ。

 3つめに考えられるのは、過去との決別である。10年続けてきたものはどうしても色あせてしまう。他の何かが勃興し、人気を博すことにより、システムが古く見えてくるのだ。ここで伝統にしがみつくと、明るい未来は遠ざかる。
過去に思い入れのあるファンもいるだろう。そんなファンからの反発はいくらでも予想できたはずだが、それでも新たな可能性を選択したのは英断だった。

 「NAMBATTLE」にはそんな意味がある。必然が生んだプロジェクトともいえるだろう。

 さて、ここからは「NAMBATTLE」の劇場公演に絞ってレポートしていく。

 劇場公演は1時間強あり、アンコール前の8曲はスタッフ作成のもので、アンコール後の3曲は各チームが選んだもの。すべての演目が終了した時点で、3人の審査員が点数をつけ、集計後に壇上で発表される(300点満点)。

■1月29日(金)FRONTIER
 唯一7人編成のグループ(他は8人)。ハイライトはM7『床の間正座娘』終わりのMCだった。リーダーである中野美来の言葉に凝縮されていた。一瞬、中野が言葉に詰まると、観客から笑いが起きた。それに対して中野は「笑わないでください」と一喝したのだ。
この試みが遊びではないということだ。初日に本気さを伝えなければ、新プロジェクトの意味はない。バトルなのだから、勝つことが目的なのだ。

 また、こうして若手(2018年加入のドラフト3期生)にリーダーを任せ、後進の育成に余念がないのはNMB48のいいところだ。

 センターは曲ごとに入れ替わるものの、上西怜が4曲を真ん中で歌った。彼女はMCでセンターへの強いこだわりを口にした。そういうタイプではないと思っていただけに、彼女もまた本気さを伝えた。ここぞというタイミングでの宣言に、ファンは“乗る”ものだ。

 採点は、3人合計で198点。問題点を挙げるならば、チーフインストラクター・AKIRA氏の寸評にあった通り、「メリハリ」。振り付けはよく揃っていたが、M2『冬将軍のリグレット』の間奏部分やM7『床の間~』にはスピード感がほしい。

筆者採点:80
NMB48は“ナンバトル”でグループを刷新できるのか、劇場公演を忖度なしで徹底レポート


■1月31日(日)みっくすじゅーす
 先輩でありリーダーでもある白間中心のグループだが、『だってだってだって』でセンターに立った梅山恋和がどれだけ存在感を示せるかによって、このグループの見え方が大きく変わってくる。


 結論から書けば、梅山にそこまで強い存在感を感じられなかった。E1『妄想ガールフレンド』の猫耳姿には、PCの前で口から泡を吹いた視聴者も続出しただろうが、問題はMCだ。話を振られない限り、自分から話題に入ろうとしないから、全体的な印象がどうしても弱くなる。2クール目以降の課題だ。

 M4『365日の紙飛行機』の歌い出しの山崎亜美瑠は流石だったし、南羽諒が醸し出す明るい雰囲気は、休業明けとはいえ、このグループの武器になるとも感じた。

筆者採点:82
NMB48は“ナンバトル”でグループを刷新できるのか、劇場公演を忖度なしで徹底レポート


■2月2日(火)きゅんmart
 もはやベテランの加藤夕夏渋谷凪咲が中心のグループに見えるが、リーダーは中学3年生の塩月希依音(ドラ3)。NMB48全体のキャプテンである小嶋花梨は一歩引いた立場をとっている。しかし、塩月は昨年10月の「次世代コンサート」でもリーダーを務めており、次期キャプテン就任が確実視されている存在。先輩がいてもリーダーになるのは決して不思議ではない。

 自己紹介MCから感じられたが、全員が存在感を発揮できている。やり取りが自然で、面白い。渋谷が前に出すぎず、全体を見渡しながらも、自分の存在感を発揮している。
こうなると、若手も自分の力を発揮しやすくなる。MCはそのグループの関係性を浮き彫りにする。

 かといって、MC頼みということはなく、パフォーマンス面でも文句はない。シンクロぶりが心地よい。楽しそうな雰囲気がステージから拡散し、客席も自然とあったまる。配信で見ていてもその雰囲気はダイレクトに伝わってきた。

 個人的には、劇場公演の理想形に近い。優勝候補だ。

筆者採点:92
NMB48は“ナンバトル”でグループを刷新できるのか、劇場公演を忖度なしで徹底レポート


■2月3日(水)LeopAje公演
 6期生が5人配属されたグループ。エース格は、グラビアを席巻し、昨年は写真集も出版した横野すみれだ。2期生のベテラン・石田優美が脇を固める。

 劇場公演が採点されるという初の試みに、メンバーは緊張気味だった。
振り付けのミスがいくつかあったし、挨拶は揃わなかった。E2『Don’t look back!』サビ前のアクロバットで貞野遥香が転倒したのは痛かった。

 それらが大きなマイナス材料になることはないが、観客を公演に引き込む力がもうひとつだった。それはインパクトなのか、一体感なのか、それともシンクロ感なのか。グループとして何が課題で、何を見せたいのか。メンバーが話し合うしかない。

 ところどころに目を瞠るものはあった。南波陽向の仕切り、堀詩音の屈託のなさ、『難波愛』の表情、自然な流れのMCは今後の上昇を期待させる。

 聞くところによると、「次世代コン」の直前、6期生による話し合いがあったという。今後、グループ全体において自分たちが何をすべきか――を確認し合ったことだろう。その意気は買いたいが、結果が出るには時間がかかるもの。現時点での評価が永遠の評価ではないので、悲観することはない。

 最下位スタートとなり、涙したメンバーもいたが、連続ドラマの1話目と考えるしかない。3クール目に評価を一変させる公演を期待している。

筆者採点:78
NMB48は“ナンバトル”でグループを刷新できるのか、劇場公演を忖度なしで徹底レポート


■2月4日(木)W1N-C
 6期生、19歳の出口結菜がリーダーを務める。チームNのキャプテン経験のある川上千尋はあえてサイドに回り、石塚朱莉がムードを作る。ビジュアル面をリードするのは、「顔面国宝」の山本望叶だ。

 メンバーが異口同音に話していたように、この全員共通の目的は「勝ちにこだわる」ということ。河野奈々帆いわく、「全員負けず嫌い」でもあるという。

 そのためにメンバーが強く意識していた(であろう)ことは、パフォーマンスのシンクロ率を上げることと、基本的動作をしっかりこなすことだった。たしかにダンスは丁寧だったし、アイソレーションができているメンバーが多い(6期生・岡本怜奈が先輩のレベルについていけるとは!!)。どのメンバーも表情の引き出しが多い。

 審査員3人の合計点は231点。暫定1位に立った。

 筆者の採点では全体2位としたが、これは単に好みの問題。どこに出しても恥ずかしくないパフォーマンスだったことは間違いない。

筆者採点:85
NMB48は“ナンバトル”でグループを刷新できるのか、劇場公演を忖度なしで徹底レポート


■2月5日(金)ちょうぜつかわE
 昨秋、加入したばかりの7期生が4人を占める。若さが売りのグループで、ドラフト2期生の安田桃寧と5期生の清水里香が引っ張る……かと思いきや、リーダーはドラ3の杉浦琴音

 グループ名からも分かるように、アイドルらしさを前面に出すことを主眼に置いている。新人が多いことから自然とそうなったのだろう。

 その特性を活かすために、アンコールでは『#好きなんだ』『大声ダイヤモンド』『遠距離ポスター』を持ってきた。この策は正解ともいえるが、一歩間違えれば危険でもある。半端なパフォーマンスだと、オリジナルの魅力にかき消されるからだ。見る者のほとんどはオリジナルのパフォーマンスを知っている。

 どの曲でもそうだったが、7期生は表情を作るのがまだ得意とは言えない。ただ、それは当たり前の話だ。その当たり前なことに対してダメ出しするつもりはない。光るものが一瞬でも見えれば、それでいい。英語が話せる芳野心咲(2008年生まれ!!)は、この日が劇場公演初出演だった。緊張しないわけはないが、その笑顔にアイドル性を見た。

 こうして7期生も先輩と同じ土俵に立つことで、NMB48のレベルがひたすら上がっていく。「NAMBATTLE」とは、全体のレベルが上がる枠組みでもあるのだ。

筆者採点:77
NMB48は“ナンバトル”でグループを刷新できるのか、劇場公演を忖度なしで徹底レポート


 3月2日(火)、オリックス劇場にて決勝大会が行われる。優勝グループには次のNMB48シングルにて新曲およびMV撮影の権利などが与えられる。

 さあ、2クール目はどんなドラマが待っているのか――。

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