○主人公は捨てられたぬいぐるみ。「センチメンタルサーカス」は切なくてファンタジックな世界観
――まずは「センチメンタルサーカス」について改めて教えてください。
「センチメンタルサーカス」は、捨てられたり、忘れられたりしたぬいぐるみたちで結成したサーカス団です。夜にこっそり集まって、大切にされていた頃に思いを馳せたり、元の持ち主の幸せを願ったりしながらサーカスをしている……という設定です。
――せ、切ない……! メインキャラクターについても詳しく教えてください。
主人公は、捨てられたウサギのぬいぐるみの「シャッポ」。この子をサーカスの“団長”として描いています。
キャラクターにはそれぞれサーカスの担当があるんですが、輪くぐり担当の「リオ」、ジャグリング担当の「トト」、玉乗り担当の「クロ」、曲芸の担当の「ムートン」、双子のキャラクターの「ピグ&マーモ」……個性豊かな仲間がたくさんいます!
――見たことある子もいれば、知らない子もいました。
初期には登場していなかったんですが、シャッポ団長の双子のかたわれ「スピカ」もいます。シャッポと色違いで柄が左右反転しているキャラクターです。この子は他のキャラクターと違い、地上ではなく夜空でサーカスをしていて、“特別な星が降る夜”にだけ双子が出会えるという設定です。
――離れていてもそれぞれサーカスをしているんですね……! 双子の絆、すてきです。それぞれのキャラクターのバックグラウンドも細かく決めているんでしょうか?
はい。みんな切ない過去を持った子たちなので、ストーリーは細かく設定しています! 例えば、玉乗り担当の黒猫「クロ」は、きょうだいがたくさんいるんです。
そういったデザインで出し切れていない細かいストーリーはコミックスや絵本で紹介しています。
――じゃあ「クロ」っていう名前は、サーカスの仲間に入って付けられたという……?
そうかもしれないですね(笑)! 絵本で描いたのですが、「クロ」が真っ黒になってしまったように、「シャッポ」もかなりボロボロの姿からスタートしていて。つぎはぎで縫われたようなビジュアルなのですが、それは、“最初は顔が汚れたボロボロの状態だった”から。
もともとシャッポとスピカは、片方が水玉、片方が薄ピンクという双子だったんです。それが今は、それぞれ双子同士の生地を半分ずつにした見た目になっているっていう……。
――え……?(困惑)
捨てられたシャッポが目覚めたときには、ボロボロの姿で、スピカははぐれてどこかにいってしまっていて。ずっとかたわれの布切れを握りしめたまま彷徨っていたんですが、その布を縫い付けて見た目をきれいにして、サーカスを始めたという過去があります。
○幼少期をともに過ごしたぬいぐるみたちへの思いを形に。それが共感を呼んだ
――切なすぎて胸がギュッとなりました……。「センチメンタルサーカス」は、すごくファンタジックで作り込まれた世界観が魅力の一つですが、どんなところからインスピレーションを受けているんですか?
いろいろありますが、小さいときから絵本を読むことが好きだったり、家の近くに移動式の小さい市民サーカス団が来ていたりしたこともあって、昔からファンタジックなものに触れる機会が多かったんです。作品には、そういった経験や想い出を入れています。
あと、私自身小さい頃からぬいぐるみやおもちゃがすごく大好きで。今でも大切にしているんですけれど、大人になる過程でどうしてもお別れしなきゃいけなかった子もいて。“その子たちの想い出も含めて形にしてあげたい”というのも、作品づくりのきっかけになりました。
――ご自身の経験や思いから生まれたものだったんですね。ファンの方からはどんな声が届いているのでしょうか?
ファンの方からは、「切ない設定に共感できる」「感傷に浸りたいときに癒される」というお声をいただけますね。
手放したものを思い出すきっかけになったり、小さい頃に遊んでいたぬいぐるみやおもちゃを思い出して“あの子たちがこんなふうにサーカスしてくれていたらいいな”って切なさや優しさを感じたり。思い出せて良かったですっていう声を多くいただきます!
○テーマによってタッチもさまざま。イラストの奥深さも魅力
――「センチメンタルサーカス」はキャラクターグッズの中では珍しく黒を基調としている印象がありますが、色味やデザインに対するこだわり、これまでに作った印象的なグッズを教えてください。
夜のサーカス、忘れられたぬいぐるみたちという設定なので、ダークやアンティークを表現したいと思って。古さや懐かしさ、物悲しさを表現するために、グッズやデザインは明るめではなく暗めな色、くすんだ色を選んでいます。
――黒を基調としつつも、テーマによってはイラストのタッチを変えているのも印象的です。これまでで思い入れのあるテーマはありますか?
「名もない花園」というテーマですね。
淡いタッチでも切なさを表現できるんだなと世界観が広がったきっかけになりましたし、ファンの方にとっても印象が変わったテーマだったんじゃないかな。あとは、「スピカ」が登場したテーマも印象深いです。
――テーマごとにストーリーも考えているんですよね。
はい! 毎回、結構細かく考えています! そのストーリーに沿ってコミックスを出したり、あとはテーマが分かる詩的なイントロダクションを考えてストーリーを紹介したりしています。他のキャラクターはあまりやっていない、「センチメンタルサーカス」ならではの点かなと思います。
今年2月にリリースしたテーマは「スピカ」を主人公にしていて、迷子の星屑たちを集めて新たな星座を生み出していく――というようなストーリーです。
○書籍、ポップアップストア、コラボカフェ……15周年の今年は、楽しいイベントが盛りだくさん
――今年で15周年を迎えますが、15周年を記念した取り組みがあれば教えてください!
15周年特設サイトを立ち上げています! サイト内では間違い探しゲームなども用意していて、意外と難しいのでぜひやってみてください!
5月15日には15周年を記念したコミックスを発売させていただく予定です。あとは、5月13日より、台湾・台北駅直結モールで15周年記念POPUPSHOP開催や、5月下旬から原宿での催事や飲食コラボを予定しているなど楽しんでいただけるイベントをたくさん企画しています。
――盛りだくさんですね! 大人になって「センチメンタルサーカス」のキャラクターグッズから離れてしまっている方もいると思います。最後に、かつてのファンにメッセージをいただけますでしょうか。
15周年という長い旅の中で、「またね」って旅立って行かれた方もいらっしゃると思います。新たな旅路を歩まれていると思うのですが、この子達も変わらずいろいろな道を旅していますので、もしまたどこかで交わるときがあれば、サーカスの灯りを頼りに覗きに来てくれればうれしいです!
――すてきなコメント、ありがとうございます!
(取材・文:仲野もも、撮影:稲垣佑季、編集:錦織絵梨奈/マイナビウーマン編集部)
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