技術者派遣やアウトソーシング事業を手掛けるUTグループは8月8日、2026年3月期 第1四半期決算を発表した。売上高は昨年同期比5.5%減の417億5600万円、営業利益は同28.1%増の24億6200万円、経常利益は同31.5%増の24億5800万円の減収増益となった。
ただ、これは昨年売却したエンジニアリング事業とベトナム事業を含めたもので、これらを除くと、売上高は稼働時間の増加と単価改善により昨年同期比19.1%増となり、過去最高の売上になっているという。
セグメント別の業績
同社は2026年3月期 第1四半期より、事業セグメントを変更。従来の「マニュファクチャリング事業」、「日系人材事業」、「エリア事業」、「ソリューション事業」から、モーターを中心とする「モーター・エナジー事業」、半導体を中心とする「セミコンダクター事業」、地域に根差した人と企業をマッチングする「エージェント事業」、大企業の人材活用の「ネクストキャリア事業」に変更された。
モーター・エナジー事業
事業セグメント別の第1四半期業績を見ていくと、モーター・エナジー事業は、売上高が130億9,900万円(前年同期比15%増)、利益は8億9,300万円(同6.1%増)となった。同セグメントでは、一部自動車関連メーカーの一部車種で生産が再開し、人材需要は徐々に回復。
しかし、米国の関税等の影響により、今後の見通しは不透明な状態が続いており、生産計画に応じた柔軟かつ迅速な人員確保や人材の定着が求められているため、多様な雇用形態や就業ニーズに対応したサービスの構築に注力したという。
具体的には、昨年導入した初期定着の改善を目的にした就業サポートスタッフは、一定の効果があると見ており、導入の拡大を図っているほか、自動車業界向けの期間従業員紹介サービスを開始している。
一方で、求人サービスの効率低下による採用単価の上昇に伴い、募集費効率は悪化しており、応募者の会員化を推進し、採用単価の引き下げを図っているという。
セミコンダクター事業
セミコンダクター事業の業績は、売上高は93億8,400万円(前年同期比5.2%増)、利益は9億4,600万円(同67.1%増)となった。
増収要因としては、派遣における請求単価交渉や請負職場からの人員配置の適正化を進めたことのほか、採用する母集団の見直しなど採用プロセスの効率化、エンジニア育成基盤の構築、営業活動の強化があるという。
具体例には新設の工場案件やエンジニア案件などの高単価案件への移動を実行中で、そのためのエンジニアの育成も強化しているとのこと。
エージェント事業
エージェント事業の業績は、売上高が157億5,600万円(前年同期比6.6%減)、利益が4億9,000万円(同36.6%増)となった。
前年に実施した組織統合を着実に進めるとともに、待機人員や空き社宅の管理、非効率な採用の見直しに取り組んだ。また、新たに開始した職業紹介サービスの立ち上げにも注力し、求人案件数の拡充を目指して、自社雇用の求人紹介だけでなく、顧客での直接雇用や同業他社の求人の紹介も行っているという。
それに伴い、製造派遣マーケットの規模と現在のシェア別にエリアを分類し、営業活動の強化と効率化を進めたという。
ネクストキャリア事業
ネクストキャリア事業の業績は、売上高が36億9,200万円(前年同期比3.5%減)、利益は1億4,300万円(同100.7%増)となった。
UTTハイテスにおいて電力設備関連分野における人材需要が今年度下期から2028年にかけて増加する見通しを受け、まとまった受注を獲得。この需要拡大に対応するため、現在、採用の強化に注力している。
また、収益性改善のための組織再編も進捗しており、FUJITSU UTとUT エフサス・クリエは2025年10月1日付での合併に向けて準備を進めており、UT MESCとUTハイテスの2社も2026年4月1日付での合併を予定しているという。
求職者の会員化とポイントサービスを開始
業績とあわせて、主要トピックとして「はたらき方プラットフォーム」の開発推進とポイントサービス開始も発表された。
はたらき方のプラットフォームの開発では、求職者を会員化し、採用の母集団形成と継続的なサービス提供を目指している。
開発中のプラットフォームでは、アプリにより応募状況が見えたり、即払い金額の確認が行えたりするほか、入社プロセスにおけるいろいろな書類の提出が簡単に行えるようになるという。
同社はこれらサービスにより、求職者に継続的に利便性の高いサービスを提供することを目指しており、現在、プラットフォーム構築を進めている。
ポイントサービスは、働いた時間に応じて、UTの株式と交換できるポイント(1時間=1ポイント)を付与するというもの。
同社では、このサービスにより、求職者とのエンゲージメントを高め、採用力強化やコスト効率の改善を図っていく。
2026年3月期 通期の予想は据え置き
さらに、2026年3月期 通期の業績予想も発表された。売上高は前期比18.5%増の1,962億円、営業利益は同62.5%増の117億円、経常利益は同59.5%増の118億円と、従来の予想が据え置かれる格好となった。
今後に向けては、国内の人材需要については労働力不足の中で、比較需要が強い状況が継続すると予想しているが、採用に関しての難易度も上がっているため、引き続きいろいろなチャレンジをしながら採用力を高め、顧客需要に応えていくことを継続していくという。