ASUSのポータブルゲーミングPC「ROG Ally」シリーズに、Xboxとコラボした最新モデル「ROG Xbox Ally」と「ROG Xbox Ally X」が登場しました。Xboxコンソールのように使える「Xbox UI」や「フルスクリーンエクスペリエンス」を新採用。
価格はエントリーモデルのROG Xbox Allyが89,800円、ハイエンド構成のROG Xbox Ally Xが139,800円。両モデルとも7インチ・フルHD(120Hz)ディスプレイを備え、用途に合わせて軽快さか性能を選べるラインアップです。
手に馴染むグリップと洗練されたデザインを両立
外観は両モデルで共通しており、主な違いは本体カラーです。ここではROG Xbox Ally Xの実機を中心に紹介します。
本体サイズは幅290.0×奥行き121.0×高さ27.5~50.9mmで、重量はROG Xbox Allyが約670g、ROG Xbox Ally Xが約715g。ROG Ally、ROG Ally Xよりも重量は増えていますが、グリップがしっかりしているので実際にはそこまでの重さを感じません。
ディスプレイサイズは7インチで解像度は1920×1080ドット。小型ですが120Hzの高リフレッシュレートに対応し、アクションゲームなど動きの激しいタイトルでも滑らかに表示してくれます。
左側にはスティック、方向キー、Xboxボタン、コマンドセンターボタン、表示ボタンを配置し、右側にはABXYボタンとスティック、ライブラリボタン、メニューボタンを搭載。非対称配置のスティックはXboxコントローラーと同様で、慣れ親しんだ操作感をそのまま再現しています。
また、本体表面をよく見ると、「ROG」や「XBOX」の文字をモチーフにした微細なパターンが施されているのが分かります。
背面には大型の吸気・排気スリットを配置し、内部の冷却性能を高めています。とくに注目したいのはグリップ部の形状で、従来のROG Allyから大きく変更されました。より自然に手に馴染む曲線デザインとなり、握ったときの安定感が向上しています。グリップ表面には細かな「ROG」ロゴパターンが刻まれており、見た目のアクセントになるだけでなく、滑り止めとしてもしっかり機能します。実際に数時間プレイしても手が疲れにくく、ホールド感の良さを強く感じました。
上部には電源ボタン、ヘッドセット端子、microSDスロット、ボリュームボタン、USB4ポート、USB 3.2(Type-C)ポートをまとめて配置しています。USB4ポートはデータ転送や映像出力、給電に対応しており、外部GPUやモニターを接続して据え置きゲーム機のようにも使えます。ROG Xbox AllyではUSB4の代わりにUSB3.2ポートを2基搭載しています。
ROG Xbox Ally Xの実測重量は約719.5g。バッテリーが80Whと大型化したことを考えると十分軽量です。長時間プレイしても負担にならないバランスでした。
ROG Xbox Allyは実測670.5gで、Ally Xよりも約50g軽量です。
Armoury Crate SEとXbox統合UIで快適な操作性を実現
ROG Xbox Allyシリーズは、ソフトウェア面でも大きく進化しています。MicrosoftとASUSの協業により、Xbox体験をハンドヘルドPCとして最適化した設計が採用されており、電源を入れるとすぐにXboxのフルスクリーンUIが立ち上がります。まるで家庭用ゲーム機を起動したかのような感覚でプレイを始められ、携帯機としての利便性とWindows PCの柔軟性を両立しています。
ROG Xbox Allyシリーズ専用の「Armoury Crate SE」は、ハードウェア設定とゲームライブラリを統合管理できるソフトウェアです。UIはXboxを意識したブラック×グリーン基調に刷新され、ゲームの起動、TDPやファン回転数の変更、ボタンマッピングなどを直感的に操作できます。
プリセットには「サイレント」「パフォーマンス」「Turbo」の3モードが用意されており、利用シーンに応じてワンタッチで切り替え可能。モード変更は即時反映され、ゲームプレイ中でも違和感なく動作します。
コマンドセンターボタンを押すことで、「コマンドセンター」が呼び出せて、主要な設定を素早く調整できます。パフォーマンスモードの変更、FPS上限設定、GPU電力上限、輝度や音量の調整など、よく使う機能を一括して操作できるのが特徴です。
オーバーレイは画面上部にスライド表示され、ゲームを中断することなく切り替え可能。操作感も軽快で、Armoury CrateのサブUIとして非常に実用的です。
ROG Xbox Allyシリーズでは、Xboxボタンを押すことで「Xboxゲームバー」を瞬時に呼び出せます。録画やスクリーンショットの取得、フレンドとのチャット、システムモニターの表示などをまとめて操作でき、ゲーム中でも数回のボタン操作で完結します。
この機能はWindows標準のXbox連携UIであり、Armoury Crateやコマンドセンターとは異なり、OSレベルでの統合操作を担います。ROG独自機能とXbox標準機能を使い分けることで、シーンに応じた柔軟な操作が可能になります。
本機はXbox Game PassやMicrosoft Storeとの統合が強化されています。XboxアカウントにサインインするだけでGame Passのライブラリに直接アクセスでき、タイトルのダウンロードからプレイ、クラウドセーブまでをスムーズに行えます。
家庭用Xboxと共通のUIが採用されているため、据え置き機ユーザーでも違和感なく操作できるのが特徴です。ROG Xbox Allyシリーズは、ハードウェアだけでなくソフトウェアの完成度も高く、“ポータブルXbox”として自然な操作体験を実現しています。
各種ベンチマークでROG Xbox Allyシリーズの性能を確認
ここからは各種ベンチマークソフトを用いて、ROG Xbox Allyシリーズのパフォーマンスを検証していきます。テストはArmoury Crate SEの「Turbo」モードを選択し、ACアダプターに接続した状態で実施しました。
今回使用した各モデルの構成は以下の通りです。
両モデルとも内蔵GPU(Radeon Graphics)を採用していますが、アーキテクチャやコア数が異なる点がパフォーマンス差につながっています。
CINEBENCH R23では、ROG Xbox Ally Xがマルチ・シングルともに高いスコアを記録。マルチでは約14,000pt、シングルでも約1,900ptと、同筐体サイズのハンドヘルドPCとしては頭ひとつ抜けた結果となりました。PCMark 10でも6,800pt前後をマークしており、ゲーム実行時のCPU負荷にも余裕を感じます。
8コア16スレッド構成のRyzen AI Z2 Extremeは、マルチスレッドを活かすタイトルやバックグラウンド処理を同時に行うような状況でも安定した動作を維持できました。CPUリソースを必要とする最新ゲームでも、描画処理を妨げるようなボトルネックはほとんど感じられません。
一方、ROG Xbox Ally(Ryzen Z2 A)は4コア8スレッド構成ながら、軽量級タイトルやインディーゲームを中心に快適にプレイ可能です。ROG Xbox Ally Xとの性能差は明確ですが、用途が明確であれば十分なパフォーマンスといえるでしょう。
CPU性能に関しては、どちらのモデルもハンドヘルドPCとしての完成度が高く、とくにROG Xbox Ally Xは携帯機でありながら据え置きに迫る処理力を備えています。
グラフィックス性能について、3DMarkの結果を見ると、ROG Xbox Ally Xはすべてのテスト項目でROG Xbox Allyを上回りました。いずれのベンチマークでもおおよそ1.8~2倍前後のスコア差があり、内蔵GPUの処理ユニット数や動作クロックの向上による恩恵が明確に表れています。一方で、ROG Xbox Allyも軽量~中程度のタイトルであれば安定した描画が可能で、解像度や設定を調整すれば携帯機として実用的なパフォーマンスを発揮します。
軽~中負荷のFF14ベンチマークでは、ROG Xbox Ally Xが1080p標準品質で「やや快適」(6,737pt)、720p標準品質で「快適」(9,211pt)を記録しました。
描画負荷の高いFF15ベンチマークでは、ROG Xbox Ally Xが1080p軽量設定で「快適」(6,000pt超)、720pではさらに余裕のある動作を確認できました。ROG Xbox Allyは1080pではやや重く感じますが、720p軽量設定なら実用的な範囲でプレイできます。
最新のAAAタイトルであるモンスターハンターワイルズでは、両モデルとも負荷が非常に高く、設定を工夫すればプレイは可能なものの、フルHD環境で「快適」といえる水準には届きません。ROG Xbox ROG Xbox Ally Xでも1080p低設定で平均72fps、720p中設定でおおむね60fpsを維持しますが、描画の重いシーンではフレームレートが不安定になる場面もありました。Allyはさらに厳しく、60fpsを安定して保つのは難しい印象です。
このクラスのタイトルでは、モバイル機として見れば十分健闘している一方で、画質や解像度を妥協せず楽しむには、より高性能なGPUを備えた環境が望ましいといえるでしょう。なお、Cyberpunk 2077など同程度の負荷を持つタイトルでも、設定を下げることで動作は可能でしたが、安定したフレームレートを維持するには性能面での余裕が求められます。
総じて、ROG Xbox Ally Xは携帯機でも比較的重めのタイトルをしっかり遊びたい人、ゲームはフルHD環境で楽しみたい人に適しています。
一方のROG Xbox Allyは、RPGなど動きが激しくないタイトルを中心に遊ぶ人や、アクションゲームでもAAA級タイトルまでは求めず、軽~中程度の負荷のタイトルを720pで快適に楽しみたい人に向いています。
どちらも携帯機としては高い描画性能を備えており、用途やプレイスタイルに合わせて選べるバランスの取れたラインアップといえるでしょう。
最後に、バッテリー駆動時間をPCMark 10の「Battery Profile:Gaming」で検証しました。
結果は、ROG Xbox Ally Xが2時間51分、ROG Xbox Allyが2時間24分でした。Ally Xはバッテリー容量が80Whと大きく、約30分以上の長い動作時間を実現しています。
高負荷なゲームプレイ時でも2時間半前後バッテリーが持つため、ハンドヘルドPCとしては優秀な結果といえるでしょう。長時間の外出時でも、モバイルバッテリーやACアダプターを使えば安心してプレイを続けられます。
○純正アクセサリーでさらに快適に。ROG Bulwark Dock (2025) DG300
ROG Bulwark Dock (2025) DG300は、ROG Xbox Allyシリーズや、スマートフォン、ポータブルゲーム機、ノートPCで使えるコンパクトな7-in-1ドッキングステーションです。
USB 3.2 Gen2 Type-C(アップストリーム/ダウンストリーム)接続に対応し、外部モニターやストレージ、周辺機器をまとめて接続できます。
背面にはUSB 3.2 Gen2(Type-A, 10Gbps)ポートを3基、HDMI 2.1ポート、有線LANポートを搭載。 また、3.5mmヘッドホン/ヘッドセット端子も備えており、据え置きスタイルでのプレイやデスクトップ環境の拡張に最適です。
フリップカバーを開くとROG Xbox Allyやスマホなどを立てかけられるスタンドとして機能します。滑り止めのゴムがついているのでデバイスを適切な角度で保持することができます。
付属のUSB-Cケーブル1本でROG Xbox Allyと接続でき、外部モニターやキーボード、マウスなど様々な周辺機器が使えるようになります。ROG Xbox Allyを、外出先ではポータブルゲーミングPCとして、自宅ではまるで据え置きPCとして使うことが可能です。
縦置きできて便利。ROG Xbox Ally (2-in-1) Premium Case
ROG Xbox Ally (2-in-1) Premium Caseは、ROG Xbox Allyシリーズを安全に持ち運ぶための専用ケースです。
外装には撥水素材を採用。高品質なYKK製ジッパーと柔らかなフリース素材の裏地を備え、外からの水濡れやバッグ内での擦れから本体をしっかり守ってくれます。
中央のベルクロストラップで本体をしっかりと固定できるほか、この部分はメモリーカード収納ポケットにもなっており、microSDカードやSDカードを収納できます。さらに、この部分を折りたたむことでROG Xbox Allyを立てかける簡易スタンドとしても機能します。
外出先やイベントなど、携帯する機会が多いユーザーにとって非常に実用的なアイテムです。
プレイスタイルに合わせて選べる2つのROG Xbox Ally
今回紹介したROG Xbox Allyシリーズの2モデルは、どちらも携帯ゲーミングPCとして非常に完成度の高い仕上がりでした。
ROG Xbox Ally XはフルHD環境でも安定したフレームレートを狙えるパフォーマンスと、長めのバッテリー駆動が魅力です。ROG Xbox Allyは軽快さと価格バランスに優れ、解像度や設定を調整すれば多くのタイトルを快適に楽しめます。外観や操作感は共通しており、手に馴染むグリップ形状や質感の高さも好印象でした。
さらに、ROG Bulwark Dock (2025) DG300 や ROG Xbox Ally (2-in-1) Premium Case など純正アクセサリーを組み合わせることで、据え置きでも携帯でも柔軟に使える点も強みです。
「フルHDで重めのタイトルも携帯機で楽しみたい」ならROG Xbox Ally Xを、「720p中心で軽~中負荷のゲームをコスパ良く楽しみたい」ならROG Xbox Allyを選ぶのがおすすめです。
どちらも、ハンドヘルドゲーミングの楽しさとWindows PCとしての自由度を両立した完成度の高いモデルです。