※このコラムは『君が心をくれたから』6話までのネタバレを含んでいます。
■キスもまだの二人が突然の同棲という衝撃
とうとう本当の気持ちを伝え、両思いとなった雨(永野芽郁)と太陽(山田裕貴)。
両思いになったところから、キスすらもまだ程遠いようなピュアな二人が一つ屋根の下に? いや、聞いてない(二度目)。何が起きた? 彼らからしたら恋愛階段50段飛ばしくらいの進展では?
おそらく祖母が入院したことを心配した太陽から持ちかけたのでしょうか。だとすれば、それをすぐには飲み込めず恥らう雨、「残された期間を幸せに過ごせてよかったね」と目を細める案内人・千秋(松本若菜)、そしてその横で微動だにしない男・日下(斎藤工)。(妄想)そんな同棲を雨が受け入れるまでに至るストーリーも見たかった!
しかし、この後太陽が口にするセリフ「雨って呼びたいんだ」で、また30段くらい恋愛階段をずり落ちます。
■肉体的にも精神的にも削られまくるデストリップ、スタート
ガンで余命わずかとなった雨の祖母・雪乃(余貴美子)は容体が一気に悪くなり、たっての希望で病院から自宅に帰ることに。そして雪乃の願い「雨とその母・霞美(真飛聖)を親子に戻してあげたい」をかなえるために、太陽は雨にあの地獄の禁じ手を復讐します。
そう、騙し討ちです。「太陽が雨をデートに誘ったら、勝手に司(白洲迅)を呼ばれて3人デートにされ、絶望したアレ」を太陽は意図してか、真意は不明ですがやり返します。
祖母、太陽、雨の3人での旅行のはずが、雨の大嫌いな母を内緒でジョイン☆ 雨は自分もやっただけに文句は言えません。
そこからペーパードライバー・太陽に命を預け、雨達家族は最初で最後の家族旅行に出かけます。
幼い頃、母に包丁を持ち出され、自分の存在を全否定され、自己肯定感を奪われた雨。やはりどうしても母への嫌悪の感情が先立ってしまいます。ペーパードライバーに命を握られてるわ、雰囲気は最悪だわで、肉体的にも精神的にも削られまくるデストリップ。こんなんじゃ祖母の余命はさらに削られそうです。
■心と心をぶつけ合うゲームの力
やはり過去のトラウマはそんなに簡単に清算できるものではありません。どうしても母を受け入れられない雨。そんな中、前向きな太陽から「自分の母は亡くなってしまったけれど、雨の母はまだ生きているからいろんなことを伝えることができる」と助言され、雨は母・霞美にゲームを持ちかけます。
積年の恨みを持つ相手と海辺での勝負。響きだけ聞くと生死をかけたデスゲームっぽいですが、このドラマは人の心を描く恋愛ドラマ。心と心のぶつかり合いでした。
互いに向かい合い、じゃんけんで勝った方が質問し、ゴールまで一歩ずつ進んでいくルール。そこで今まで母に聞きたかったけれど、聞けなかった質問をここぞとばかりにぶつけるのです。
■グロすぎる描写。母から雨への質問
まず雨が質問したのは「父はどんな人なのか」。
そこで知ったのは、父は霞美が役者を目指していた頃の仲間で、雨ができたのを知って、逃げてしまったのだという事実。雨だけでなく霞美もまた、孤独だったのです。
そして、霞美が雨に「あんたなんて必要ない」と発言していた真意は、雨さえいなければ「父である彼は逃げなかったのに」と、「夢である役者をまだ目指せたのに」という2つの意味があったのでしょうか。どちらにせよ、自己中心的すぎますが……。
そして霞美から雨への質問「雨の好きな色」がまた辛かった……。捻り出した最初の質問が好きな色。まるで小学生にする質問のようです。
雨のことを何も知らない、という描写なのか。
■明かされる雨という名前の理由
お互いの質問の末、母が雨という名づけの由来を明らかにします。「雨を産んで、不安で自信がなかった時に雨が降った。その時、生まれたばかりの雨がうれしそうに笑ってくれた気がしたから、雨が笑顔にしてくれますように、と名づけた」と。
母が適当につけたと思っていた、大っ嫌いな変な名前。自己肯定感と存在価値をあやふやにしてきた雨という名づけ。そこには、今まで雨が求め続けてきた母の愛が実はたくさん詰まっていたことを知るのです。
そんな二人のやり取りを見ながら、祖母に「雨ちゃんは強くなりますよ。だから大丈夫。雪乃さんの孫だから。それでも辛くなったら僕が雨ちゃんと一緒にいます。雪乃さんの分まで、雨ちゃんの幸せを願います」と、雪乃に声をかけるのです。なんとまっすぐでいい子なのでしょう。
このままでは一人ぼっちになってしまう雨に、どうか唯一の肉親である母との仲を取り持って支えを作ってあげたい、と内心焦っていたはずの祖母は、その言葉を聞いて安心したことでしょう。
■最後の交換日記
そこから程なくして亡くなった祖母。小学生の頃、雨と行っていたボイスレコーダーでの交換日記には、時を超えて病床からの最後のメッセージが。
自分も病気で苦しいはずなのに、最後まで雨の幸せを一番に願いながら、雨の今後を心配する祖母の弱々しい声。そして、そのメッセージに精一杯の愛を込めて祖母への愛と感謝を語る雨。
すると、死者が最後に降らせるという優しい雨が降り始めます。まるで雨の言葉に祖母が返事をするように。きっとこの祖母の声は五感を失っても、いつまでも心と記憶に残り、雨を包んでくれるのでしょう。
次回はとうとう雨が五感を失った本当の理由を太陽に告白するようです。隠し通すはずだったこの事実を話すことになるきっかけはなんだったのか。太陽はそれを知って、二人の関係はどう変わるのか。ドキドキしながら待ちましょう。
(やまとなでし子)