ドイツのカーニバルと言えばケルンやデュッセルドルフ、マインツといったライン川流域の「陽気」なカーニバルが有名。ところ変わってドイツ南西部の黒い森では、ゲルマン民族の風習を前面に押し出した伝統味溢れるカーニバルが体験できます。
今回はそんな黒い森から、フィリンゲンという町で開催されるカーニバルを紹介しましょう。まるで能面のような木のお面をつけた愚者やちょっと不気味な猫など、多種多様なキャラクターが登場し、伝統のカーニバルを盛り上げます。
ちなみに黒い森ではカーニバルを「ファスネット」と呼ぶので、ここからは筆者もこの呼称で紹介していきます。
黒い森の西側に位置するフィリンゲン。中心部を囲むようにいくつもの塔が立ち、中世の趣にあふれた小さな町です。通りの建物をよく見ると凝った装飾が施されている所も多く、町全体がカラフルな印象を与えています。
この町で開催されるファスネットは、15世紀まで起源をさかのぼるという大変歴史のあるお祭り。町の年史によると、既に当時からお面を被った人々の行進が行われていたのだそうです。
また時代を重ねるごとに町の歴史や文化と複雑に絡み合ってきたお祭りでもあり、まさにフィリンゲンのアイデンティティーとも言えるでしょう。
ファスネットの盛り上がりが最高潮に達するのは、「薔薇の月曜日」と翌日の火曜日。
ファスネットの主役は、「ナロ」と呼ばれる愚者たち。まるで能面のような木のお面と頭に付けたキツネのしっぽ、そして歩くごとに「ジャンジャン」と轟く体中の鈴が彼らの特徴です。
小さな子が見たら泣き出しそうな怖い姿のナロですが、「ホーホホホ」と言いながらぴょんぴょん跳ねている様子は、どこかコミカルでもあります。体中に付けている鈴は総重量が24キロほどになる事もあるのだそう。
ナロ達に同伴して歩いているのが、「アルトフィリンガリン」という女性たち。20世紀の男女平等運動のなかで登場したキャラクターであり、それ以前におけるファスネットは男性の行事として扱われていました。
このほかフィリンゲンのファスネットを象徴するのが、「猫」たちの行進。全身黒の衣装を身にまとったリーダーの雄猫「カーター」に導かれ、猫に扮した人々が町を練り歩きます。
大きな目がやや不気味な猫や、猫の耳を頭に付けた子供や赤ちゃんたちまで、一言に「猫」といってもその姿は様々。ファスネットの掛け声は「ナリー!ナロー!」ですが、ここでの掛け声は猫らしく「ミャウ!」となります。
伝統を色濃く感じさせながらも、所々にコミカルな要素が散りばめられているフィリンゲンのカーニバル。
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