フランクフルトから電車を乗り継いで約1時間の場所にヴェッツラーという町があります。フランクフルトからドレスデンまでを結ぶゲーテ街道に属していて、ゲーテの小説『若きウェルテルの悩み』の舞台になったことでも有名。
ヴェッツラーの町が発展したのは、ここに帝国最高法院が置かれた17世紀末から。帝国最高法院とは神聖ローマ帝国の最高裁判所にあたる機関で、若き頃のゲーテは司法の勉強をすべくここに在籍していました。文学に夢中になっていた息子を法学の世界へ引き戻したい父の意向でヴェッツラーに送られたゲーテですが、あろうことか今度はシャルロッテ・ブッフという女性との恋に夢中に。しかし彼女には許嫁がいて叶わぬ恋と知ったゲーテは、悩んだ末にフランクフルトへ戻る決断をします。
フランクフルトに戻ってもシャルロッテを忘れられないでいるゲーテに、ヴェッツラーの友人であるイェルザレムが失恋で自殺したという知らせが。この事件とゲーテの失恋体験を題材にし、後に『若きウェルテルの悩み』が完成したのでした。
小説の舞台となった町では題材となった場所がいくつか残されており、ゲーテファンにはたまらない場所です。ゲーテが恋に落ちたシャルロッテが住んでいた家は、かつてドイツ騎士団の館として使用されていた建物。現在は「ロッテハウス」として公開され、内部に18世紀当時の生活が再現されているほか、各国語で翻訳された『若きウェルテルの悩み』も展示されています。
旧市街の南に位置するシラー広場に面して立っているのは、失恋を苦にピストル自殺をした友人イェルザレムが住んでいた家。現在は記念館になっていて、彼に関する資料や生活の様子が展示されています。
『若きウェルテルの悩み』関連スポットを見終えたら、旧市街の街並みも楽しんでみましょう。特に美しい木組みの家が見られるのが、ロッテハウスのすぐ南にあるコルンマルクト。
町の中心を縦横に走るクレーマー通りにも、立派な木組みの家が並びます。このほかにも至るところで目にする手入れの行き届いた木組みの家が、町に歴史情緒を添えています。
町の西側を流れるラーン川は、ライン川の支流となる川。川に架かるどっしりとした石橋は13世紀に架けられました。川の周辺は公園になっているので、ここで地元の人に混ざってのんびり寛いだり散歩をしてみるのも良いかもしれません。
ゲーテの小説の舞台となった町ヴェッツラー。美しい街並みや物語の関連スポットを巡りながら、この町で恋に落ちたゲーテに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
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