そのひとつがヴァンス。
現代アートが楽しめる中世の村として人気のサン・ポール・ド・ヴァンスから近いので、それぞれに異なる魅力をもつ2つの街をあわせて訪れてはいかがでしょうか。
ヴァンスも南仏らしい中世の街ですが、エズやサン・ポール・ド・ヴァンスといった有名どころに比べると、あまり観光地化されておらず、地元の人々の生活の匂いが感じられます。
ヴァンスの旧市街は、ぐるりと城壁に囲まれた中世都市。13世紀に築かれた城門をくぐると、たっぷりと水をたたえた泉が迎えてくれます。
その先には、パステルカラーの建物に囲まれたカフェのテラス席。暖かい日差しが優しい陰影を作り、人々が昼下がりのティータイムを楽しんでいます。
「これぞ南仏!」といった風景に、たちどころに魅了されてしまうはず。
ヴァンスには、太古の時代から人々が暮らしていた痕跡があり、4世紀からは司教座が置かれました。そんな誇り高い歴史を持ちながらも、この街の風景には、どこかほっとするような素朴さがあります。
美しく手入れされた南仏らしいパステルカラーの家々、キュートなドアが目を引く石造りの住宅、路地にはためく洗濯物・・・
南仏において幸福のシンボルとされる、陶器のセミ飾りがついた家も。太陽に祝福されたこの地で、心豊かに生きる人々の暮らしぶりが伝わってきます。
こうした素朴な日常風景が楽しめる一方で、画家たちに愛されてきたアートの街としての表情も見えてきます。
路地にさりげなくたたずむアートギャラリー、オシャレな雑貨ショップ、レストランの前に飾られたオブジェや絵画・・・
南仏の素朴な日常風景を残す街でありながら、いたるところで洗練されたアート感覚に出会います。素朴と洗練の共存こそ、ヴァンスの旧市街最大の魅力です。
旧市街きっての見どころが、通りを挟んで市庁舎と向かい合うクリームイエローの大聖堂。
大聖堂内の洗礼堂には、「モーゼの発見」を描いたシャガールのモザイクがあります。
白を基調とした画面に、淡い色の陶器が敷き詰められたモザイク画は、シャガールらしい幻想的な雰囲気を醸し出しています。その一方で、南仏の太陽のなせる業でしょうか。明るく、からっとした爽やかさを感じませんか。
30分ほどで一周できてしまうほど、こじんまりとしたヴァンスの旧市街。しかし、ここには瞼に焼き付けたくなる素敵な風景がいっぱい。
有名観光地の喧噪に疲れたら、癒しを求めてほっと一息。ヴァンスはいつだって、その優しさで訪れる人々を包みこんでくれるはずです。
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