「墓地が美しい」とは、いったいどういうことなのでしょう。
ミロゴイ墓地は、およそ2万8000平米の広大な敷地をもつ墓地で、その周囲を宮殿のように壮麗な建造物が囲んでいます。
そこは、日本人がイメージする「お墓」とはまるでかけ離れた世界。墓地でありながら、その美しさから観光スポットとしても密かに人気を集めているのです。
ミロゴイ墓地へのアクセスはとても簡単。ザグレブ観光で必ず訪れる聖母被昇天大聖堂前から、106番の市内バスで10分ほどで到着します。
ミロゴイ墓地を目の前にして驚くのは、その建物の立派なこと。ここが墓地と知らずに通りかかったら、宮殿か、はたまた大学かと思ってしまいそうです。

敷地内に入ると、街の中心部から少し離れただけで、鳥のさえずりしか聞こえない静寂の世界が広がっています。
ミロゴイ墓地で最も印象的なのが、外壁に沿うようにして造られた見事な回廊。蔦が絡まる回廊には、絵画や彫像、芸術的な墓碑が設けられていて、お墓といえど美術館のようです。




天井のアーチが折り重なるようにして連なる光景は、なんとも幻想的。

可憐な雰囲気を醸し出す、明るいパステルカラーで彩られた天井のドーム部分。

ところどころ塗装がはげているのがまた味わい深く、見ていて飽きることがありません。
いったいどこまで続くのかと思うほど長い回廊が終わったと思ったら、そこは墓地の中心部。この向こう側にも、さらに長い回廊が続いているのです。

ミロゴイ墓地は、回廊だけでなくお墓もまた圧巻。一般市民だけでなく、クロアチアの著名人も数多く埋葬されているため、クロアチア国内の他の墓地に比べてさまざまな趣向を凝らした立派なお墓が多いのです。
なかでも、ひときわ存在感を放っているのが、中心部にある大きな黒い墓石。これは、初代クロアチア共和国大統領、トゥジマンのお墓です。

彼は「民族主義者、権威主義者」として批判された一方で、クロアチア国内では、強力なリーダーシップによりクロアチアを独立に導いた英雄として親しまれています。

トゥジマンの墓以外にも、棺の上に眠る故人をかたどったお墓や、神殿風のお墓、球体状のお墓など、見ごたえのあるお墓やユニークなお墓がいっぱい。


カトリック教徒だけではなく、正教徒やユダヤ教徒も埋葬されているために、宗教による違いも見て取ることができます。
もうずいぶん歩いたと思っても、まだまだお墓が続く光景に圧倒されずにはいられません。


緑いっぱいの敷地内は、穏やかで爽やか。晴れた日、風にそよがれながらの散歩は最高に気持ちが良く、「こんなところに眠れたら幸せだろうな」と思ってしまいます。

ここには、日本の「墓地」という言葉から連想されがちな暗さや湿っぽさはまったくありません。
ここは、死者だけでなく、生者にとっても心安らぐ、美しい場所なのです。


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