避暑地としても人気の高い緑豊かなリゾート地で、首都から日帰り旅行ができるという点からも、日本でいえば軽井沢のような存在といえるでしょう。
そんなシナイアの代名詞的存在ともいえるのが、シナイア僧院。というのも「シナイア」という町の名は、シナイア僧院にちなんで付けられたからです。
17世紀にルーマニア人貴族ミハイ・カンタクジが、現在のイスラエルへ巡礼の旅に出かけ、聖書にも登場するシナイ山を訪問。帰国後、この地に「シナイ山」にちなんで「シナイア僧院」を建て、それがシナイアという町の由来になったのです。
山道にひっそりとたたずむシナイア僧院。現代のように交通が発達していなかった当時は、俗世から隔絶された聖地だったのでしょう。
門を入って正面に見える大教会は、ドイツから招かれてルーマニア王国の国王になったカロル1世が1846年に建立したもの。
3つの尖塔や横縞の外壁が独特の存在感を放っていて、柱や扉に施された精緻な装飾や美しい壁画は圧巻。イコンで覆われた内部は、厳かな空気に満ちています。
一見、見学できる場所はこの大教会だけかと思われますが、実は見逃せないシナイア僧院のハイライトは奥にあります。
大教会の向かいにある「THE OLD CHURCH」と書かれた門をくぐった先には古い教会があり、この教会は17世末にミハイ・カンタクジの跡を継いだブルンコヴェアヌ公がポーチを増築した以外は、建設当時のままの姿をとどめています。
中庭に立つ小さな古い教会。簡素な印象を与えるたたずまいですが、入口前の壁と天井に描かれた美しいフレスコ画に一瞬にして目を奪われます。
教会内部に足を踏み入れてみると、そこは壁と天井一面がフレスコ画で覆われた空間。外観からは想像もつかないほど鮮やかな色の世界に息を呑みます。
これぞまさに小宇宙。まるで金縛りにあったかのように、幻想的な天井画から目が離せなくなります。
小さな小さな教会ですが、この空間が醸し出す聖なるエネルギーは格別。それは、フレスコ画に込められた想いと、数百年にわたってここで祈りを捧げてきた人々の信仰心が息づいているからなのでしょう。
シナイア僧院は、町の名前の由来となるにふさわしい、威厳とパワーに満ちた特別な場所なのです。
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