紀元前19世紀にはすでにトラキア人の集落が造られており、その後ローマ帝国、ビザンツ帝国、第1次・第2次ブルガリア帝国、オスマン朝と、たびたび支配者が入れ替わりました。
オスマン朝の支配下で、プロヴディフはブルガリア民族復興運動の中心地となり、ヨーロッパ各地を旅した裕福なプロヴディフ商人たちが、当時の流行を取り入れた邸宅を建てました。
この時代、プロヴディフには自らの豊かさを誇示するかのような、装飾性の高い華やかな邸宅が次々に誕生したのです。
プロヴディフの旧市街には、民族復興様式の邸宅をはじめとする、色とりどりの建物が今も残っています。
坂をのぼって、丘の上に築かれた旧市街にたどり着くと、石畳の道の両側に上階部分が張り出した伝統的な家屋が並ぶ光景が目に入ります。
プロヴディフの旧市街で最も美しい建物のひとつが、1847年にイスタンブール出身のハジ・ゲオルギが建てた邸宅。
バロック様式と民族復興様式をミックスした建物で、黒を基調とした外壁を飾る花模様が印象的です。
現在は地域民族博物館として公開されており、当時の家具や調度品、生活・農業用具、民族衣装などが展示されており、この地域の伝統に触れることができます。
民族復興期の富豪ルカ・バラバノフが住んでいた邸宅が、「バラバノフの家」。
1階はブルガリアの現代美術作品を集めたギャラリーとなっていて、2階には当時の部屋が残されています。東洋を感じさせる天井の木の装飾や、柔らかな色彩で描かれた優美な壁画が印象的です。
バラバノフの家に隣接している「ヒンドリヤンの家」は、アルメニア人貿易商ヒンドリヤンが1840年に建てたもの。2階部分が道路側にせり出した典型的な民族復興様式の特徴をもつ一方で、西ヨーロッパの様式も取り入れたユニークな邸宅です。
ヒンドリヤンがヨーロッパ各地で入手した調度品でととのえられた豪華な部屋の数々から、当時の優雅な暮らしぶりが垣間見えます。
民族復興様式が見られるのは、なにも邸宅だけではありません。1832年に建設された独特の外観が目を引く聖コンスタンティン・エレナ教会には、民族復興期の巨匠ザハリ・ゾクラフらが手掛けたイコンがあります。
これらの美しい建造物の数々に加え、都会の喧騒とは無縁の、時が止まったかのようなのんびりとした雰囲気がプロヴディフの旧市街の魅力。
町というよりも村のようなのどかな空気に包まれて、お屋敷を訪ね歩いていると、ここがブルガリア第2の都市であることが嘘のように思えてきます。
狭い路地が張り巡らされた起伏の多いプロヴディフの旧市街では、昔から「画家は夢を見、地図職人は悪夢を見る」といわれてきました。
そんな迷路のような町では、迷いながら歩くのもまた楽しいもので、意図せず入り込んでしまった道で、思わぬ素敵な風景に出会えることも。
ここでは、ゆったりと流れる時間に歩調を合わせ、日常と非日常が融合したどこか幻想的な風景をじっくりと味わいたいものです。
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