RoomClipユーザーの素敵なキッチンを紹介する「憧れのキッチン」連載。
今回は歴史と思い出のある古民家をリノベーションして暮らすmukuさん宅の、和とアジアンの融合を味わうキッチンをご紹介します。
古いもの、味のあるものが大好きです。また、季節感を感じるしつらいを心がけています。自宅は築90年以上。祖父母が亡くなり、空き家になっていた小さな家を21年前にリノベーションしました。自然素材はいつまでも飽きることなく、古寂しくなることなく、味わいが増していきますね。今でもお気に入りの空間のままです。
趣きに溶け込む、味わいのある空間
mukuさん宅のキッチンは、古き良き面影と洗練されたモダンな要素を併せ持つあたたかく美しい空間です。なんとも言えない絶妙な塩梅でコーディネートされたキッチンだから、生活感よりも『いい雰囲気』が際立つのが印象的。まずはそんな素敵なキッチンのテーマやこだわりを教えていただきました。
mukuさん「築90年以上の古家です。和とアジアンテイストを融合させた空間に合うようなキッチンを目指しています。」
■間取りから感じる、古民家×ヴィラの雰囲気

和だけでなくアジアンのエッセンスがゆったりと漂うmukuさん宅は、懐かしさの中にエキゾチックな非日常感を味わえるのも魅力だと思います。そしてその魅力を膨らませるのが、間取りの妙。間取り図を拝見すると、なかなか他では出会えないユニークなレイアウトになっていることが分かります。オープンな対面キッチンの正面には、昔ながらの日本の暮らしを思わせる座卓のリビング兼ダイニング。
他の場所も気になりますが、ここからは再びキッチンに視点を戻して、込められたこだわりや工夫の数々に迫りたいと思います。和モダン、古民家リノベーションを目指す方は特に見逃せないアイデアがたくさん登場しますよ♪
■キーワード1 一枚無垢板の座卓と一段下げたキッチンの良い関係


「7.5畳のリビング兼ダイニングにつながる、約3.5畳のキッチンです。ダイニングとキッチンスペースを広く感じられるようにするため、約2.2mの一枚無垢板を低めの座卓として採用しました。座卓だと視線が低くなるため、隣接するキッチンは床を一段下げています。こうすることで、座ったときの圧迫感を緩和。同時にキッチンに立つ人の目線と、食卓についている人の目線の高さも合わせています。」
■キーワード2 背面収納は大工仕事×無印良品でシンプルに


「コストダウンの意味も含めて、大工さんだけで作れるキッチンを目指しました(仕上げの漆喰は別途必要)。通常のオーダーキッチンでコストがかさみがちな収納の引き出しは、無印良品のものを使っています。引き出しは箱ごと食卓へ運んで使うこともできるので便利ですよ。ちなみに、食器は吊り棚で見せる収納にしています。購入する器は白、緑、赤と決めていて、使う楽しさを味わいながらも統一感を出しているのがこだわりです。」
■キーワード3 柔軟に使える便利なオープンスタイルのシンク下


「シンク側もコストダウンを考えたオープンスタイルです。ここではキャスター付き収納が活躍しています。
キッチンをもっと素敵にするためのアドバイスがあれば教えてください

「LDKがひとつながりになっている場合、キッチンはくつろぎの場の中に入ってくる要素になります。見えてしまうキッチンを、コストを掛けずにどのようなものにするのか……悩ましい問題ですよね。そこで我が家は、リノベーションのときに必ず力を借りる『職人さん』に『ついで』に作ってもらえるキッチンにすることにしました。
工事費を抑える代わりに、天板は少し贅沢に座卓と同じ無垢板です。作ってから20年以上過ぎました。塗装メンテは必要ですが、水に強く厚い板はまったく傷むことなくほぼ当時のまま。システムキッチンのようにきめ細やかな収納はないものの、ざっくり収納を工夫しながら楽しんでいます。」
まとめ: 費用対効果の高い空間づくりを

リノベーションならではの制約や制限、予算の都合、理想のキッチンを目指すにも何かしらハードルが生じます。mukuさんのキッチンには、それらを的確に飛び越えるヒントがたくさんありました。コストを抑えながら味わいや趣きを深めるアイデア、床の高さで目線をコントロールするテクニックは、これから家やキッチンづくりを計画している方にとっては知っておいて得しかありません。また、収納の工夫は既存のキッチンの見直しにすぐにでも役立てられるのではないでしょうか。
mukuさん宅は美しく、アートのように洗練されています。けれどもキッチンでは、ちゃんと使い勝手の良さや快適な日常が見えました。費用対効果も抜群。日常と非日常感、現実と理想をいい塩梅で溶け合わせる、素敵なキッチンづくりですよね。ぜひ、参考にしてみてください。
執筆:RoomClip mag 編集部