ジェイソン・ゲリア 写真提供: ©JEFUNITED

2018年からJ2リーグ、ジェフユナイテッド市原・千葉で活躍するDFジェイソン・ゲリア。

彼はオーストラリアの首都キャンベラで生まれ、地元クラブでサッカーを始めた。

「オーストラリア国立スポーツ研究所」を卒業後、Aリーグ(オーストラリアプロサッカーリーグ)ブリスベン・ロアーのユースへ移籍。2013年からはアンジェ・ポステコグルー監督(現在横浜F・マリノス)率いるメルボルン・ビクトリーでプレーし、2015年にはメルボルンのAリーグ優勝とFFAカップ優勝にも貢献している。さらにはオーストラリアU-20・U-23代表チームにも選ばれてきた選手だ。

昨今は、新型コロナウイルスの影響が世界中で深刻化しているが、ゲリアの母国オーストラリアでは、2019年7月頃に発生し約8ヶ月240日以上続いた大規模森林火災も大問題となってきた。

今回はオーストラリアの森林火災問題を中心に、ジェイソン・ゲリアに独占インタビュー。次々と起こる世界を脅かす大問題を前に、我々にできること、サッカーにできることは何だろうか。聞き手は、ダビデ・ウッケッドゥです。

オーストラリアの大規模森林火災の発生時は、どんな状況でしたか?

森林火災のことは日本でニュースを通じて知りました。すぐ母国にいる両親や友人にも連絡し、細かく状況を尋ねましたね。オーストラリアではほぼ毎年森林火災が発生してますが、いつもよりかなりひどい状況と聞き、インターネットやテレビの情報を常に流していました。結果的に今回のオーストラリアへのダメージは本当に大きいものになってしまいました。(※類焼面積18万平方km以上、被害建築物6,500棟以上、死者30名以上、犠牲動物10億頭以上と推定されている)

数え切れないほどの動物が命を失い、追い詰められた人もたくさんいましたね。

本当に悲しいです。

コアラやこの国にしかない多くの動物が命を失ったことは、オーストラリアにとって大きな損失です。また、動物以外にも様々な人たちが影響を受けました。ビジネスがダメになった経営者もいるし、本当に全てを失ったたくさんの犠牲者がいます。誰にも抑えられなかったどうしようもない状況です。毎日ニュースでたくさんの生き物が亡くなったり、人が困ったりをすることを見続けていて、自分の無力さを感じました。

ジェフ千葉DFジェイソン・ゲリア、独占インタビュー。母国オーストラリアの森林火災問題を語る
ジェイソン・ゲリア 写真提供: ©JEFUNITED

2020年1月には出身地キャンベラまで火災が広がったと聞きました。煙の被害も深刻化していましたが、ご両親や友人は?

火災はキャンベラの中心までは進んでいなかったので、街には大きなダメージはありませんでした。少し影響を受けたのは街の郊外、特に北側のエリアと聞いています。

ただ、火災から生まれた煙によって空が見えず、光に当たらない日々が続いていたと両親から伝えられました。また、それによって空気が悪くなり、呼吸するのが危険でした。外に出かけられる状況ではなかったようですね。呼吸困難で重傷になった人もたくさんいました。

オーストラリア人は普段マスクを使わないですが、この問題以降みんながつけるようになって、どの店でも販売されるようになったそうです。

友達などは写真やビデオを送ってくれて状況を話してくれました。例えば、姉はよく運転している人ですが、数日間煙によって視界が10mほどしかないことがあって危なかった状況などがわかりました。

今はキャンベラの周りの火災も収まって、みんなは元どおりの生活に戻りました。ピークが過ぎて本当に良かったと思います。(※2020年に入り記録的豪雨が発生したことで火災は弱まり、3月2日に全ての鎮火が報告されている)

そんな火災のピーク時もご自身は日本でサッカーをしていたわけですが、どんな気持ちでしたか?

両親のそばに居られなかったのはとても辛いことです。僕が力になれることがないかをずっと考えていましたね。ただ、毎日大事な人に連絡して直接多くの情報を聞けたことで、彼らが落ち着いていることを理解し安心していました。家族から離れるのはいつだって辛いことですが、国を脅かすほどの危険がある時はなおさらです。

Aリーグへの影響もありましたね?

はい、影響はありましたね。火災が近く安全ではなかったことで延期になった試合もあったし、シドニーやニューカッスルなどでは煙によって数試合のスケジュールが変更となったと聞きました。リーグ自体は予定通り進んでいたそうですが。

ジェフ千葉DFジェイソン・ゲリア、独占インタビュー。母国オーストラリアの森林火災問題を語る
ジェイソン・ゲリア 写真提供: ©JEFUNITED

現在オーストラリアをサポートしたい人は何をしたらいいと思いますか?

オーストラリアのこの問題をサポートするためには、チャリティプログラムに協力や寄付するのが一番いい方法だと思います。よく聞くのはオーストラリアのレッド・クロス(赤十字社)が提供しているプログラムです。人、動物、ビジネスの手助けなど、全てを元通りに戻すために尽力していると聞いています。

他にも多くの団体がオーストラリアが元の生活に戻るように全力を尽くしています。動物を救うために頑張っている集団もたくさん存在し、火災で潰された自然の環境を回復できるように力を合わせています。

森林火災は毎年なのですが、今回は本当に深刻な状況でした。消失した建物を再建すること、ゼロから再スタートすることしかないです。

2020年5月23日には、この火災問題に対するサッカーチャリティーイベント、「Football for Fires(フットボール・フォー・ファイヤー)」が開催されますね。

はい、素晴らしいアイディアだと思います。サッカーという素晴らしいスポーツを通じてたくさんの人がスタジアムに足を運んで、募金を多く集めることができるだろうと思います。

ディディエ・ドログバ、パク・チソン、ダビド・トレゼゲのような国際的に有名なレジェンドが集まりますし、オーストラリアのトップ選手もたくさん参加する予定です。内容的にも面白い試合になるに違いありません。

ジェフ千葉DFジェイソン・ゲリア、独占インタビュー。母国オーストラリアの森林火災問題を語る
ジェイソン・ゲリア 写真提供: ©JEFUNITED

日本でのご自身の状況はどうですか?2020年J2シーズンがスタートしました。今年のジェフ千葉としての目標はありますか?

僕たち千葉は、2010年から長い間J2リーグに所属しているので、第一にフォーカスしているのはJ1昇格です。私も日本には慣れ、この国のサッカーを理解できるようになってきたと思います。

チームの目標を達成するために全力を尽くしたいと思います。今シーズンの千葉は守備の面でも攻撃の面でもとても良いチームだと思いますが、一番大事なのはピッチで結果をしっかり残して国内トップリーグであるJ1に再び上がることです。

来日してから2年となります。日本はどうですか?

日本はとてもいい国ですね。美しい場所が多い上、人もすごく優しいし、歓迎的です。オーストラリアとは文化が違いますので、来日したばかりの時は言語も含めて慣れなければならないことがたくさんあリましたが、今は自分の暮らしをとても楽しんでいます。

両親や友人も日本に遊びに来たりしていますが、ここで時間を過ごすのが好きでオーストラリアに戻りたくないと話していることもあります。

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