今シーズン冬(2021年1月)にレアル・ソシエダからウルブスことウルヴァーハンプトン・ワンダラーズへの期限付き移籍を決断したブラジル人FWウィリアン・ジョゼ。キャリアの大半を期限付き移籍先のクラブで過ごし、5年間で6つのクラブを渡り歩いてきた。
ストライカーとしてサンパウロ、グレミオ、サントス、レアル・マドリード、レアル・サラゴサ、ラス・パルマスなど名だたるクラブでプレーし、2016年からはレアル・ソシエダで長らく過ごしてきたウィリアン・ジョゼ。ウルブズとの契約は期限付き移籍ではあるが、買取オプションがあるという点では過去の移籍とは異なる。そんな彼が英国メディア『Sky Sports』の取材に応じたので、その一部をご紹介したい。
「徐々にチームメイトと打ち解けてきて最高の気分だ」
ウィリアン・ジョゼはこのように語った。
「天候やフットボールのスタイルが異なるので、イングランドの環境に慣れるのは少し難しいと思っていたが、上手く順応できていると思っている。本音を言うとより長くここにいたいと感じている。ウルブズはラウール・ヒメネスの負傷していることや、彼に代わる人物がチームにいなかったことため、私のようなストライカーが必要であると言ってくれた。私も非常に良い機会だと受け止めて、自分の実力を証明しようと考えた」
2011年からいくつものクラブを渡り歩いたウィリアン・ジョゼは、2016年から加入したレアル・ソシエダでは5シーズンで170試合に出場し62ゴールを記録し、遂に自分の居場所を見つけたところだった。
「レアル・ソシエダに4年半滞在して、そのほとんどが良いことばかりだった。サン・セバスティアンでの生活は快適で、レアル・ソシエダというクラブと共に過ごしてきた。離れるというのはとても難しい決断だったよ。

もしかするとハリー・ケインの代役候補になったかもしれない
実は、ウィリアン・ジョゼが抱いていたプレミアリーグの夢は1年早く実現していた可能性があった。昨年1月にトッテナムがウィリアン・ジョゼの獲得を希望していたからだ。ジョゼ・モウリーニョ監督は、当時負傷離脱していたハリー・ケインの代役としてウィリアン・ジョゼの獲得を希望していたが、レアル・ソシエダはトッテナムからのオファーがウィリアン・ジョゼの価値に見合わないと判断したためこの交渉は決裂となった。
このことについてウィリアン・ジョゼはこう語った。
「色々なことが起こったよ。トッテナムからのオファーをもらったが、レアル・ソシエダは私を手放したくなかった。強豪クラブで実力ある選手たちとプレミアリーグで戦える機会が目前まであったんだ。モウリーニョとも話をして、彼も私とプレーしたいと言ってくれた。

なぜウルブズに加入したのか?
ウィリアン・ジョゼは外国人労働許可証を取得してすぐ1時間後に始まったチェルシー戦(1月28日)でプレミアリーグデビューを飾った。「十分にチームトレーニングできなかったよ」と当時を振り返る。そしてデビューしてから3試合目となるアーセナル戦(2月3日)で物議を醸すPKを獲得してダビド・ルイスを一発退場に追い込んだ後、9試合ぶりの勝利をウルブズにもたらした。ダビド・ルイスの退場については今後多くの議論が行われるだろうと予想されるが、この試合でのウィリアン・ジョゼのインパクトは、なぜウルブズが彼を獲得したのかが理解できるものだった。
ヌーノ・エスピーリト・サント監督は頭蓋骨骨折をして戦線離脱しているラウール・ヒメネス不在で得点に結びつけることに苦悩の日々だったが、ここ数試合の攻撃面での改善はウィリアン・ジョゼの加入と少なからずリンクしている。次はプレミアリーグでの初ゴールが期待されるウィリアン・ジョゼだが、ストライカーのポジションとして、自身の経験値とフィジカルを最大限還元し、前線でボールキープしながら味方へボールを預けるプレーでチームに貢献した。「今のところ彼は今自分にできることに努め、我々はそれを活用することができた」とヌーノ監督はウィリアン・ジョゼを評価した。
ウィリアン・ジョゼは新しい環境でポジティブな印象を与えている。それは、ウルブズのプレーヤーの大多数がポルトガル語を話せることが大きい。
「デビュー戦となったチェルシー戦はプレーするのにかなり困惑した。その日にみんなに会ったんだから。でも監督は私にどのようにプレーして欲しいか正確に伝えてくれたり、ドレッシングルームで多くの選手たちとコミュニケーションが取れたりして、その問題は解消されたよ。

周囲を正しい方向へ導ける人間性にも期待
ヌーノ監督はウィリアン・ジョゼの立ち振る舞いに称賛した。「彼は素晴らしい人物だ。チームメイトだけでなく、私たちのようなスタッフの声にもしっかり耳を傾けている」勝利を収めたアーセナル戦の試合後のインタビューでこう語った。また、ウィリアン・ジョゼがウルブズの若手選手へも手を差し伸べることにも期待をしている。難しいシーズンを過ごしているファビオ・シルバへは同じポジションということもあり、18歳でイングランドへ拠点を移した彼へのフォローは手厚くする必要があるからだ。
「レアル・ソシエダではアカデミー出身選手たちと重要な役割を果たした。若い選手たちがトップチームで先輩選手たちに信頼してもらえることはクラブを強くするために重要な局面だと思ったので、私は常に若い選手たちとコミュニケーションを取り自信をつけてもらえるように働きかけた。信頼を勝ち取れば物事は上手くいく。
こうした想いはウィリアン・ジョゼ自身のこれまでのキャリアが大きく影響している。レアル・ソシエダで4シーズン連続で10ゴール以上記録するなど、長く定住できたクラブで恩恵を受けることとなったウィリアン・ジョゼだが、期限付き移籍を重ねた頃は同様の恩恵を受けることは一切なかった。
「期限付き移籍を続けた時期は本当に苦しかった。移籍を多くしたからと言ってすべてが成長につながるとは限らないからだ。チームメイトやスタッフから信頼や自信を勝ち取るために1つのクラブで時間を与えることが重要だ。たった数ヶ月で信頼を得るなんて簡単じゃない。私のようにこのシーズンはこのクラブ、次のシーズンはあのクラブというようにコロコロとプレー先を変えるのは得策ではない。長く留まることは選手自身にとってもクラブにとっても重要なことだと思う。私がこれまで思うようにプレーできたのがレアル・ソシエダにいたときだけだったように」
最後にウィリアン・ジョゼはウルブズでプレーできるのは今のところ数ヶ月であることは理解しているが、ここからチャンスを掴み、完全移籍のオプションを行使できるように今シーズンが終わるまでにプレーで実力を証明することを決意した。
「チャンスは十分にあると思う。