欧州サッカーは、アメリカのサッカーと比べてとても複雑だ。
まず欧州連合(EU)加盟国だけを見ても、27カ国もの異なる国がそれぞれにサッカー協会、複数のリーグを持っている。
ところで、アメリカでは「サッカー」、欧州では「フットボール」と呼ばれる違いもある。
欧州の国内サッカーリーグ
欧州でサッカーは、地域に根付いたスポーツだ。地元のクラブを熱狂的に愛するファンが多い。例えばリバプールに暮らしながら、他地域のマンチェスター・ユナイテッドやアーセナルを応援するのは余程の勇気がいることである。

では欧州の主要3カ国の国内リーグについて見てみよう。
イギリスのサッカーリーグ
イギリスではイングランドとスコットランドが異なるリーグを持つ。
イングランドには、プレミアリーグ(1部)、EFLチャンピオンシップ(2部)、EFLリーグ1(3部)、EFLリーグ2(4部)のプロリーグがあり、アマチュアレベルの地方リーグも無数にある。
スコットランドにも、スコティッシュ・プレミアシップ(1部)、チャンピオンシップ(2部)、リーグ1(3部)、リーグ2(4部)の独自のリーグがある。
イングランド、スコットランド共に、毎シーズン終了後に昇格・降格を決めるプレーオフが行われる。
スペインのサッカーリーグ
スペインのサッカーは2020年まで4つのリーグに分けられていたが、今年からリーグが1つ増え、下記5つの構成になる予定だ。
- ラ・リーガ、プリメーラ・ディビシオン(1部・プロ)
- ラ・リーガ、セグンダ・ディビシオン(2部・プロ)
- プリメーラ・ディビシオンRFEF(3部・次シーズンから誕生する新しいプロリーグ)
- セグンダ・ディビシオンRFEF(現在の3部セグンダ・ディビシオンB。次シーズンから4部アマチュアリーグとなる)
- テルセーラ・ディビシオンRFEF(現在の4部テルセーラ・ディビシオン。次シーズンから5部アマチュアリーグとなる)
スペインでも毎シーズン後のプレーオフによってクラブは昇格したり降格したりする。
ドイツのサッカーリーグ
ドイツのプロサッカーリーグは、ブンデスリーガ(1部)、2.ブンデスリーガ(2部)、3.リーガ(3部)が占めている。それらを頂点としたピラミッドの下には無数のアマチュアリーグや地方リーグが存在し、全体で年1度の昇格や降格が行われている。
経済環境の違い
欧州でプレーするサッカー選手は、アメリカに比べて収入が多い。

例えば、バルセロナ所属のリオネル・メッシ。彼は2020年の年俸とボーナスで9200万ドル(約97億円)、スポンサー収入なども合わせて合計約133億円もの収入となった。アメリカでこれほどの年俸になる選手は存在しない。プレミアリーグ選手の平均年俸でさえ、アメリカのプロサッカーリーグMLS選手の約10倍だ。MLSではサラリーキャップ制度が敷かれ、チームの総年俸の上限が定められているためである。欧州クラブにはそれがなく、スター選手を確保するためには巨額のお金を投じる必要があるのだ。
ではクラブはどこでそのようなお金を手に入れるのか?スポンサーシップだ。新型コロナウイルスによる制限が緩み観客が戻ったところで、スタジアムの入場代では生きていけない。
欧州サッカーの環境は、アメリカでいうとサッカーよりもNFL(アメリカンフットボールリーグ)に近いと言えよう。サッカーは多くの欧州国における国技でもあり、スポンサーは熱狂的なサッカーファンの記憶に残るよう巨額の予算をかける準備がある。

スポンサーはどんな企業?
「アディダス」「プーマ」「ナイキ」など、世界的なスポーツウェアブランドは、よく知られているスポンサー企業である。しかしながら、欧州サッカーに力を入れている企業は他にも多くある。
その一つはイングランドでアーセナル、スペインでレアル・マドリードなど、複数の国で大手スポンサーとなっている「エミレーツ航空」だ。

また、レアル・マドリードは2020/21シーズン開幕時に新しいスポンサーとも契約を交わした。FXトレード企業の「easyMarkets」である。
リバプールと契約中の「スタンダードチャータード銀行」や、ドイツのRBライプツィヒを運営している「レッドブル」もよく知られている。つまりマーケティング予算のあるどんな企業でもクラブスポンサーになることができる。
欧州サッカーの国際大会
こうした大規模な欧州サッカーの国際大会は、欧州サッカー連盟(UEFA)が運営する。中でも最も有名で世界中の注目を集めている重要な大会が、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)だ。この大会に参加できるのは欧州各国のリーグでトップに君臨するクラブであり、世界最高峰の戦いにして最大の名声をもたらす。