最近のサッカー界では、自身のクラブを恒久的に繁栄させるための方策として、他クラブを巻き込んだ施策を打ち出す応用的な考えも少なくない。

海外では持株会社や同一資本家の手によって複数クラブを所有し、若手選手や適材適所の選手配置などを行い包括的なクラブ強化を実施している。

さらなる高みを目指すために、クラブ間でのサポートが必要とされる時代にまで突入している。

海外クラブほどの規模ではないが、もちろんJリーグクラブの中にも上記に類似したケースが存在している。今回は「繋がりが強いクラブ同士」の関係についてご紹介したい。

バルサ&神戸以外にも…繋がりが強いクラブ提携関係5選

強固なパートナーになったヴィッセル神戸とバルセロナ

繋がりが強いクラブ同士の代表格として、真っ先にヴィッセル神戸とバルセロナの関係が思い浮かぶだろう。ヴィッセル神戸の親会社である楽天が2017/18シーズンからバルセロナのメイングローバルパートナーになったことが両クラブの関係を強化するきっかけとなり、その結果バルセロナから続々と大型補強を行うことに成功した。

ダビド・ビジャ、トーマス・フェルメーレン、セルジ・サンペール、アンドレス・イニエスタらがクリムゾンレッドのユニフォームに袖を通し、「世界レベルである彼らの試合を生でみたい」とスタジアムにファンが殺到する現象にまで発展した。このパートナーシップ構築はヴィッセル神戸のチーム力強化にもちろん繋がり、またバルセロナとの親善試合が行われるなど世界的なJリーグの関心度を高める結果になった。

バルサ&神戸以外にも…繋がりが強いクラブ提携関係5選

15年ぶりの栄冠へマリノスを導いたシティグループ

15年ぶりのJリーグ制覇を手にした横浜F・マリノスと、それを後押ししたシティ・フットボール・グループの関係性にも触れなければならない。

シティ・フットボール・グループは2014年7月に日産自動車とグローバルパートナーシップを締結したことをきっかけに横浜F・マリノスの少数株主となった。これは日本サッカー界で初めて外資企業が株主となったことで注目を集めた。シティ・フットボール・グループは日本の1クラブに留まらず、ニューヨーク・シティFCやメルボルン・シティFCなど世界各国の有力クラブと提携を積極的に行い世界的なサッカー事業グループとして名を挙げた。

グローバルな視点を武器に横浜F・マリノスに必要とされる選手やスタッフをリストアップすることができたことで、的確な補強の後Jリーグ屈指の攻撃力を得た横浜F・マリノスは2019年シーズンにJリーグ優勝を果たすことに成功した。

バルサ&神戸以外にも…繋がりが強いクラブ提携関係5選

かつて所属したレジェンドによる浦和レッズへのサポート

Jリーグで最も情熱的なクラブである浦和レッズにも大きな支援者が存在している。それはポルトガル1部リーグ、プリメイラ・リーガに所属するポルティモネンセである。

ポルティモネンセはこれまでマウリシオ、ファブリシオ、エヴェルトンなど多くの外国人選手のJリーグ進出を実現させ、浦和レッズの選手強化に尽力した。

この移籍劇には、かつて浦和レッズに選手として所属しレッズにJリーグ初優勝をもたらす原動力になったロブソン・ポンテ氏が大きく関与している。

ポンテ氏は現役時代後当時の代理人の勧めもあって、ポルティモネンセのテクニカルディレクターに就任したことを背景にかつて所属したクラブとの関係値を高めたのだった。今後もポルティモネンセから有力選手の来日の可能性があるかもしれない。

バルサ&神戸以外にも…繋がりが強いクラブ提携関係5選

水面下で進行するサンガの「レッズ化」

クラブ同士の相乗的な効果に期待する戦略はもちろんJ1クラブだけのものではない。J2クラブである京都サンガにも当てはまると考えている。特に京都サンガは近年浦和レッズとの関係が深い。

2020シーズンに実現した森脇良太の京都サンガ移籍は2019シーズン最悪の終わり方をした京都サンガにとってその鬱屈さを取り戻したきっかけになり、新スタジアムオープンとともに賑わいが戻る十分な効果を生み出した。さらに2021シーズンには、武富孝介、福島春樹、荻原拓也の3選手の京都サンガ加入が決まり、京都サンガにとっては喉から手が欲しいJ1昇格のための圧倒的な選手層獲得、浦和レッズにとっては前途有望な若手選手のプレー経験の場確保とそれぞれのニーズがマッチングする関係にまで進展することになった。

またこれまで浦和レッズとの関わりが強かった湘南ベルマーレも関わり始め、前述した武富孝介や松田天馬、中川寛斗など今シーズンから京都サンガの指揮官となった曺貴裁監督の息のかかった教え子たちも続々京都に集結した。

バルサ&神戸以外にも…繋がりが強いクラブ提携関係5選

痛恨の敗戦を契機に大きな戦力補強に

近年ガンバ大阪と関西学院大学との関係が強まりを見せている。しかし彼らの関係が強い理由がただ同じ関西地区同士だからというわけではない。きっかけになった「あの試合」を語らずにはいられないだろう。

遡ること2018シーズンの天皇杯。

ガンバ大阪は2回戦で兵庫県代表として出場した関西学院大学をホームに迎えて対戦をした。この試合に関してJ1クラブであるガンバ大阪が危なげなく勝利を収めるだろうと大多数が予想していたにも関わらず、実際には延長戦の末関西学院大学がJ1クラブ相手に1-2で勝利した。

ガンバファンにとっては忘れたい試合であることには間違いないが、クラブはあの敗戦を冷静に振り返り自クラブの戦力として取り込む働きかけを行った。この試合で関西学院大学のスタメンに名を連ねた高尾瑠、山本悠樹は今となってはガンバ大阪にとってかけてはならないメンバーになり、決勝点を決めた山見大登は今シーズンからガンバ大阪に加入を決めている。

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