現在、FIFAワールドカップカタール2022アジア最終予選を戦うサッカー日本代表。グループリーグ10試合中3試合を終えて1勝2敗という極めて厳しいスタートだったが、11月のアウェー2連戦(ベトナム戦、オマーン戦)で苦しみながらも2連勝するなどでグループ2位へと浮上し、2021年の試合を終えた。

とはいえまだまだ安心できない状況には変わりない。組織として、攻守に躍動感に欠けていることは誰の目にも明らか。活性化を図るためには新たな選手を試すことは欠かせない。そこで代表経験のないJリーガーの中から、日本代表に推したい選手を5人挙げる。いずれも、代表の空気を大きく変えるだけの可能性を秘めた選手だ。

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日本代表に薦めたい、躍進中Jリーガー5選

小泉佳穂(浦和レッズ

徳島ヴォルティスアビスパ福岡が昇格を果たした2020シーズンのJ2リーグ。それらの2チームを除いたチームの選手達のなかで、最も印象的なプレーを見せていた1人がFC琉球の攻撃の中心にいた小泉佳穂(25)だった。それから約1年。浦和レッズに移籍をした小泉は、Jリーグ最大のビッグクラブにおいても主力に定着し存在感を示している。

トップ下を主戦場とする小泉は両足共に効き足かのように使え、ドルトムントに所属していた頃の香川真司のように、素早い反転からのドリブルで攻撃にスピード感を持たせることができる。得点力はさほど高くないがポジショニングが良く、展開力にも優れているために得点数やアシスト数以上にチームに貢献。

トレードマークの金髪をなびかせていることも相まって、スタジアムで観ると強い印象を受けるはずだ。

前橋育英高校時代から図抜けた技術を持っていたものの、関東大学リーグ2部の青山学院大学へと進学。卒業後FC琉球に加入した小泉は、エリートというわけではない。けれど、それは学生時代から憧れていた中村憲剛氏も同じ。4年時は中央大学の主将として関東大学リーグ2部で戦い、当時J2に所属していた川崎フロンターレに入団。そこから川崎フロンターレをJ屈指の強豪にし、日本代表にまで上り詰めた大先輩のように、小泉も浦和レッズを栄光に導き日本代表に食い込むことができるか。

時折観られるボールロストを減らすことができると、日の丸を胸にプレーする可能性はぐっと高まる。

日本代表に薦めたい、躍進中Jリーガー5選

加藤陸次樹(セレッソ大阪

8月からセレッソ大阪の指揮を執る小菊昭雄監督から絶対的な信頼を受け、トップの位置に君臨する万能型のFW、加藤陸次樹(24)。中央大学を卒業しJ2のツエーゲン金沢に入団。1年目ながらリーグ戦で13得点をあげると、今季はJ1に挑戦。開幕後しばらくはベンチスタートが多かったが、徐々に出場時間を伸ばしここまで7得点。ルヴァンカップでの準決勝第2戦では決勝点を決め、4年ぶりの決勝進出に大きく貢献してみせた。

サッカーを始めた当初からFWという生粋のストライカーは、動き出しとボールの運び方が非常に巧み。

そして効き足の右足はもちろん左足でも強いシュートを打てるため、どちらの足でもゴールを陥れられる。フィニッシュの精度に改善の余地はあるものの、J1でプレーする初のシーズンにして現在チーム得点王。今季はここまでのフルタイム(3,330分)のうちの半分以下の出場時間(1,551分)であり、来季以降さらなる活躍を見せてくれる可能性は高い。

大迫勇也ヴィッセル神戸)に長年頼ってきた日本代表の最前線に、加藤が名乗りを挙げるか。

日本代表に薦めたい、躍進中Jリーガー5選

荒木遼太郎(鹿島アントラーズ

29年のJリーグの歴史において、城彰二氏以来となる史上2人目となる10代での2桁得点を達成した荒木遼太郎(19)。得点力に優れたトップ下という現代サッカーで好まれるタイプのプレーヤ―であり、守備面での成長も著しい。また鹿島アントラーズでセットプレーのキッカーを務めており、幅広い仕事ができる貴重な選手だ。

2018年に行われたAFC U-16選手権で優勝に貢献し、数々のプロ選手を輩出している東福岡高校では背番号10を背負った。「負けず嫌い」が生み出す急角度の成長曲線で、どこまで辿り着くのか楽しみでならない。

活気に欠ける現在の代表チームに必要なのは、貪欲さを前面に押し出せる選手。その気持ちを隠そうともしない荒木はプレーだけに留まらず、メンタル面においても大きな存在感を示すことができるだろう。年齢面を考慮すると海外のクラブがリストアップしている確率は高く、日本代表入りへの期待はもちろんのこと、早めに観ておくべき選手の1人だ。

日本代表に薦めたい、躍進中Jリーガー5選

前寛之(アビスパ福岡)

2020シーズンのJ2リーグで徳島ヴォルティスの岩尾憲と並びチームの心臓として素晴らしい活躍をみせ、アビスパ福岡を昇格に導いた前寛之(26)。北海道コンサドーレ札幌に所属していた2017シーズン以来となるJ1の舞台でも、存在感は不変。

昇格組ながら勝ち点50、10位以内という目標を達成したチームの真ん中にいるのは、間違いなくこの男だ。

派手なプレーを見せるわけではないが、常に適切なポジションを取って危険なスペースを埋め続ける。そしてチームでボールを奪うと積極的に呼び込み、攻撃の起点になっている。

現在の日本代表のCH(センターハーフ)では遠藤航が潰し屋として欠かせない選手だが、ポジショニングで守れる前のようなタイプは決して多くなく、違いを生み出せる存在になることができるはずだ。今季試合を重ねるにつれ攻撃への関与が増しているように、水戸ホーリーホック時代からの恩師である長谷部茂利監督の元で着実な成長を続ければ、それは決して夢物語ではない。

日本代表に薦めたい、躍進中Jリーガー5選

菊池流帆(ヴィッセル神戸)

菊池流帆(24)のプレーを観ていると、元日本代表の田中マルクス闘莉王を思い出す。圧倒的な空中戦の強さと、暑苦しいほどの熱さ。

今の日本代表のCB(センターバック)陣はキャプテンの吉田麻也(サンプドリア)、冨安健洋(アーセナル)、板倉滉(シャルケ)ら歴代でもトップクラスの層の厚さを誇っている。そこに割って入るのは容易いことではないが菊池ほどの熱さを持つタイプはおらず、空中戦という明確な武器を持っていることも強みになる。

青森山田高校サッカー部で一番下のDチームからヘディングを鍛えトップチームまで上がったこと、大阪体育大学では大学選抜に選出されながらもオファーがあったのはレノファ山口だけだったこと、移籍当初の期待はさほど高くなかったヴィッセル神戸でも徐々に出場機会を増やし今季レギュラーの座を掴んだこと。実体験で育まれた類まれなる反骨心で、日本代表に勝負強さを生み出す存在になり得る。

本人も日本代表への思いを公言しており、所属するヴィッセル神戸ではトーマス・フェルマーレン(ベルギー代表)という最高のお手本とコンビを組むことでさらなる急成長に繋がっている。

おとなしい選手が多い現在の日本代表の中に菊池が入ることで、どういった化学変化が起きるのか興味は尽きない。

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