明治安田生命J2リーグは、12月5日で2021シーズンの全日程を終えた。ジュビロ磐田と京都サンガがJ1リーグへの切符を手にし、一方でSC相模原、愛媛、ギラヴァンツ北九州、松本山雅の4クラブがJ3リーグへ降格となってしまった。
選手やサポーターにとってはひと息つける時期だが、それぞれのクラブはすでに2022シーズンのスタートを切っている。どれだけ充実した陣容で来季を迎えられるか、お財布事情と相談しながら選手やスタッフの補強を行っていくこととなる。ここでは2021シーズンをJ2で戦った選手の中から、J1のクラブへと「個人昇格」しそうな11選手を挙げよう(情報は12月8日時点)。

高橋大悟(ギラヴァンツ北九州)
清水エスパルスからの期限付き移籍を継続し、3シーズンに渡ってギラヴァンツ北九州でプレーしたMF高橋大悟。今季の北九州は昨季の主力のほとんどがチームを離れるという非常事態のなかシーズンを迎えたこともあり、背番号10を背負う彼の残留に歓喜したサポーターは少なくないだろう。昨季の武器だった堅守が崩壊してしまったチームにおいて、高橋の執念、意地は観る者の胸を熱くした。残念ながら残留は果たせなかったが、背番号10、そしてキャプテンとしてチームのために戦い抜いた。「チームのために」という言葉がここまで当てはまる選手はそういない。個人の残したインパクトとしてはJ1に昇格したクラブの選手にも一切引けを取らず、清水に復帰するのか、はたまた他のクラブが獲得を狙うのか。要注目だ。

上門知樹(ファジアーノ岡山)
両サイドハーフ、中央の攻撃的な位置でプレーできるユーティリティプレーヤーMF上門知樹。高校時代には1トップを張っていた。右足での思い切りの良いシュート、それをおとりに使ってのスルーパス。またコース取りの良いドリブルも兼備し、数多くの得点に絡むことができる。

黒川淳史(大宮アルディージャ)
右サイド、もしくはトップ下からゴールを狙うMF黒川淳史。正確なトラップから、両足で自らゴールを狙うことも、広い視野からのスルーパスを狙うこともできる。ゴール前での落ち着きも備えている。昨シーズン後にはポーランド1部のレヒア・グダニスクへ移籍目前だったが、メディカルチェックを通過できずに2021シーズンも大宮でプレーすることに。メンタル面で難しかったはずだが、チームがJ2残留争いに巻き込まれたなかでも黒川はキャリアハイとなる9得点を記録した。J1のクラブが注視しているに違いないが、J1ではなく昨年果たせなかった海外移籍を目指す可能性もある。

佐藤凌我(東京ヴェルディ)
FW佐藤凌我。東福岡高校、明治大学というコースを辿り、4年時には関東大学サッカーリーグで得点ランキング2位の活躍をみせ東京ヴェルディへと入団。プロ1年目ながら鋭い動き出し、反応の速さ、正確なシュートを武器にワンタッチでのゴールを量産し、13得点を記録した。一足先にJ1で活躍する大学時代のチームメイト、小柏剛(北海道コンサドーレ札幌)を追いかけJ1を目指すか。
山本理仁(東京ヴェルディ)
MF山本理仁。各年代の日本代表に選出され、高校2年生だった2019年にトップチームに昇格した逸材だが、当初の期待を考えるとやや伸び悩んでいる感じは否めない。プロ入りから3年続けて徐々に出場時間を伸ばしてはいるが、彼の目標を考えると満足は全くできないはずだ。ボランチを主戦場に複数ポジションをこなせ、抜群のキックの精度を最大の武器に何でもできる。今季は守備面での成長も見られただけに、海外でプレーしたいという目標のため、環境を変えようとJ1に挑戦する可能性はある。

佐野海舟(町田ゼルビア)
サッカーを始めた頃からボランチでプレーしており、最大の特徴であるボール奪取能力は20歳にしてすでにJ2屈指のMF佐野海舟。その後に前方へのパスを狙う意識も高まっている。昨シーズン、今シーズンともに3,000分以上出場し、シーズンを通した活躍に期待できる。さらに今季は攻撃参加の回数も増え、思い切りの良いミドルシュートなどで6得点と得点能力も大きく向上。J1の、中盤の守備力に課題を抱えるクラブや昇格クラブなどが間違いなく目を付けている選手だ。一方で、弟のMF佐野航大が来季からファジアーノ岡山に加入するため、来季J2での兄弟対決が観られる可能性もある。

半田陸(モンテディオ山形)
DF半田陸。各年代の代表に選出されてきた男が、ついにプロの舞台でも本領を発揮した。昨シーズンの山形や代表ではCBとして起用されてきたが、今季の山形では右SBとしてスタメンの座を掴んだ。

本間至恩(アルビレックス新潟)
MF本間至恩。アルビレックス新潟ユースが生んだ最高傑作の下には、昨季終了後も複数クラブからオファーが舞い込んだ。だが新潟から直接海外クラブを目指す道を選択し、今季も新潟でプレー。抜群の俊敏性と細かなボールタッチで左サイドから中央に切り込んでいくドリブルの技術は、J1においても屈指ではないだろうか。今季は5得点6アシストと昨季より少し数字を落としてしまったが、これは怪我があり出場自体が減ってしまったからこそ。今季まで新潟を率いていたアルベルト監督が新指揮官に就任したFC東京など、J1のクラブを挟んで海外を目指す可能性がある。

毎熊晟矢(V・ファーレン長崎)
FWとしてプロ入りしたがSBへとコンバートしたMF毎熊晟矢。それがプラスに働き、プロ1年目の昨季から攻撃的なSBとしてレギュラーに定着した。今季はクロスの精度が向上して大きく数字を伸ばし、アシスト数はリーグ2位となる10を記録。ただタッチライン際を突破するのではなく、積極的にゴール前に侵入し貪欲に得点を目指すスタイルは、ボールをしっかり保持しながらゴールを狙うチームに合うだろう。
江川湧清(V・ファーレン長崎)
長崎県南島原市出身のDF江川湧清は、長崎U-18から2019年にトップチームに昇格した。だが1年目に右膝前十字靭帯断裂という大怪我を負ってしまう。それでも2年目となる昨季、左SBとして一定の出場時間を確保。プロの舞台に慣れた今季、CBとしてレギュラーの座を掴んだ。175cmとCBにしては低めの身長だが、アカデミーの頃から接していた松田浩監督からの信頼は厚い。信頼される指揮官のもと、長崎でもう1年プレーする可能性も十分だが、左利きで複数ポジションをこなせる若手選手を欲するクラブは多いはずだ。

松崎快(水戸ホーリーホック)
MF松崎快。右サイドを疾走する水戸の特急はプロ2年目の今季、ブレイクを果たした。昨季から出場時間を倍増させ、文句なしにJ2屈指のドリブラーへと急成長を遂げたのだ。切れ味鋭い突破はもちろんフィジカルコンタクトにも強く、1対1で対峙してしまうと止めるのは難しい。8得点6アシストとサイドハーフとしては抜群な結果を残したため、J1のクラブから狙われる可能性は高い。