誰にだって1つや2つ忘れ去りたい過去がある。もちろんそれはサッカー選手にも当てはまることだろう。

成功者であるスター選手や監督の中にも、全く活躍することができなかった暗黒の時代があったり、あるいは苦悩の真っ只中だったりする。

「なぜあんなところに移籍したのだろうか」ここでは、移籍した先で上手くいかず暗黒期の渦中にいるスター選手を含め、キャリアの汚点にもなりかねないほどの忘れたい過去の時代を抱える選手と監督を紹介したい。

忘れたい暗黒期を抱えるスター選手&監督5選

アンヘル・ディ・マリア

言わずと知れたアルゼンチンが誇る技巧派、巧みなボールタッチと意表を突くプレーで観客を沸かすMFアンヘル・ディ・マリア(現パリ・サンジェルマン所属)。彼に忘れたい過去があるとすれば、マンチェスター・ユナイテッドで過ごした時間(2014-2015)だろう。

ディ・マリアは、ベンフィカ(2007-2010)からレアル・マドリードで銀河系軍団の一員として着々とキャリアを積み(2010-2014)その中で数多くの功績を残してきた。だが、新たに挑んだイングランドの地では、スペインで培った経験が全く生かされなかった。

特に当時ユナイテッドの指揮官であるルイ・ファン・ハール監督との相性は最悪で、出場機会の減少とともに背番号「7」の重圧に押しつぶされてしまったディ・マリア。リーグ戦27試合出場10アシストするも、3ゴールに留まる。キャリアの危機を悟ると、2015年8月にパリ・サンジェルマンへの移籍を決断。同シーズン早速リーグ・アンの新記録である18アシストでリーグ優勝に貢献し、そこからの活躍ぶりは誰の目にも分かるものになった。

忘れたい暗黒期を抱えるスター選手&監督5選

ウナイ・エメリ監督

選手だけではない。順風満帆な監督キャリアを築いてきたウナイ・エメリ監督(現ビジャレアル)にとっても、アーセナル(2018-2019)での生活は苦しかっただろう。

アーセン・ベンゲル監督による長期政権に終止符を打ち、アーセナル新時代の幕開けとして白羽の矢が立てられたエメリ監督。それまで指揮を取ってきたセビージャ(2013-2016)ではUEFAヨーロッパリーグ3連覇、パリ・サンジェルマン(2016-2018)では国内3冠を勝ち取るなどし、その数々の功績に期待が寄せられた。

しかしアーセナルでは鳴かず飛ばずに。過去の栄光にすがる風土、擁護しないフロント、言葉が通じないことをバカにする選手たち、理解してくれないサポーターなど、特殊な壁が立ちはだかり四面楚歌に至ったエメリ監督は、成績不振により途中解任(2019年11月)された。

その後、ビジャレアルの監督に就任(2020年7月)するや否や、再びヨーロッパリーグ優勝を勝ち取ったエメリ監督。準決勝でアーセナルを破っての優勝とあって、自身にとっても大きな意味を持つに違いない。取り巻いた黒歴史をは自身の手で闇へ葬った。

忘れたい暗黒期を抱えるスター選手&監督5選

エデン・アザール

現在まさに暗黒期の真っ只中にいる選手の1人が、レアル・マドリードFWエデン・アザールである。誰にも取られないドリブルや小回りの利く方向転換、決定力も備えたアザールは、攻撃オプションとしてどのクラブも欲しがるスター選手だ。

リール(2007-2012)やチェルシー(2012-2019)時代に形成された唯一絶対の特徴は、分かっていても止められないドリブル。欧州5大リーグトップのドリブル突破成功率(61.61%)を誇り、難しいプレミアリーグでも長きに渡り活躍し大きな名声を得た。チェルシーのUEFAヨーロッパリーグ優勝(決勝でマン・オブ・ザ・マッチの活躍)を置き土産に、2019年6月にマドリードへの移籍を果たしている。

ところがマドリードでは、それまでのアザールを目撃することができないまま現在に至っている。特には度重なる怪我に悩まされ、結果どころかコンスタントな出場さえ難しい状況。チームが変わるだけでここまで変わるのかと驚きを隠せないのが率直な意見だ。

「あの時」のようなアザールを再び目撃することができるのか、今後の動向には高い関心が寄せられる。

杉本健勇

Jリーグでは、FW杉本健勇も忘れたい過去を持った1人と言えよう。187cmの長身を活かし、空中戦にも強く、日本人顔負けのポストプレーも魅力な選手だ。2012年に東京ヴェルディでブレイクした杉本は、若くして長身ストライカーの代表格に成り上がり、復帰したセレッソ大阪(2013-2014、2016-2018)でもその実力を遺憾なく発揮。

順風満帆なキャリアを築きつつあった杉本にとって、その後、浦和レッズで過ごした期間(2019-2021)は闇に葬りたくなる時間となったに違いない。Jリーグ強豪の主力として鳴り物入りで加入したが、移籍後のシーズン前半ではわずかPK1得点に留まり、苦悩の日々が続いたことが明かされている。

その後、横浜F・マリノスへ期限付き移籍(2021)するなど環境を変えながら自身のキャリアを回復させようとしている杉本。現在は、ジュビロ磐田へ期限付き移籍(2022-)しているが、今2022シーズンは未だゴールネットを揺らしていない。

ニコラ・ぺぺ

華麗なボールさばきと鮮やかなドリブルが魅力のFWニコラ・ペペ。リール時代(2017-2019)は得意のドリブルからゴールもアシストもでき、右サイドをほしいままにしていた。22ゴール11アシストを記録した2018/19シーズンは、本当に誰にも止められない怪物級のドリブラーに急成長。そんなホットな選手を獲得したのがアーセナル(2019-)だった。ペペの加入によりアーセナルの攻撃力が底上げされると誰もが予想していた。

しかし、まさかにペペとってアーセナルでの生活が暗黒期になることは、誰も予想することはできなかったことだろう。独りよがりのプレーや不用意なボールロストが目立ち、次第に自信を持ってプレーすることが困難になった。

今2021/22シーズンは若手選手の台頭により、アーセナルではカップ戦要員にまで序列が下がってしまったペペ。ただ一方で、コートジボワール代表として出場する国際試合ではチームの中心として実力を発揮している。自身のためにも一刻も早くアーセナルを離れ、パフォーマンス向上が見込める居場所探しを始めたほうがいいかもしれない。

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