Jリーグは5月26日、3月決算の3クラブ(柏レイソル湘南ベルマーレジュビロ磐田)を除いた2021年度のクラブ経営情報を公開した。

クラブライセンス事務局によると、新型コロナウイルス蔓延の影響を大きく受けた2020年度と比べて収益面ではプラスに転じるケースが多く、少しずつ「コロナ前」に戻りつつあると分析している。

単年度での赤字は2020年度の34クラブから20クラブに減少。債務超過は2020年度に引き続き10クラブ。現時点において継続が困難なクラブは存在しない。

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ここでは経営情報データからJ1クラブの営業収益、スポンサー収入、入場料収入、人件費、営業利益についてご紹介する。

J1クラブ別、2021決算報告データまとめ。コロナ禍での黒字は5クラブ

営業収益

本業から得られた収益である営業収益。Jリーグクラブの営業収入には、スポンサー収入・入場料収入・Jリーグ配分金・物販収入・アカデミー関連収入などが挙げられる。

上記は2021年度J1クラブの営業収益をプロットしたデータとなる。最も営業収入が高かったのは川崎フロンターレで69億8200万円、最も少ない営業収益となったのは大分トリニータで20億9600万円。トップダウンの差がおよそ50億円もあることには驚きを隠せない。

J1クラブ全体の営業収益は2020年度と比較しておよそ23.8%の増加となり、「ウィズコロナ」に照準を合わせることができたことによる好循環が生まれつつあることがわかる。

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スポンサー収入

クラブの収益の大部分を占めるスポンサー収入。2021年度最も多くのスポンサー収入を得たクラブは浦和レッズで38億9800万円、最も少ないスポンサー収入となったのはサガン鳥栖で6億5200万円であった。

コロナ禍により緊縮財政が広がった中、J1全体において2020年度に比べてスポンサー収入は微増傾向にある。

中でもスポンサー収入が最も優秀な浦和については、クラブ価値や存在意義を社会に示すことができた結果と言えるだろう。

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入場料収入

いわゆるチケット代に当たる、入場料収入。2021年度最も入場料収入を得たクラブは横浜F・マリノスで6億5400万円、最も少ない入場料収入となったのは徳島ヴォルティスで1億6700万円であった。

2020年度は先行き不透明な新型コロナウイルスの脅威によって、スタジアムへ足を運ぶことすら不安があったが、クラブの努力も実を結び入場料収入は前年度比45%増加。特に平均値である4億1700万円以上の収入を得ることができたクラブは、サポーターや地域住民との関係性が良好であると言及することができるだろう。

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人件費

所属選手や監督、クラブスタッフたちの人件費。2021年度最も多くの人件費を計上したクラブはヴィッセル神戸で50億5200万円、最も少ない人件費の計上となったのはベガルタ仙台で11億5600万円であった。

やはり大物選手を多数揃える神戸の群を抜いた人件費が目立つが、J1クラブ全体を通しての人件費は6.6%上昇しており全体的な底上げとなった。思うような収益が見込めない時に「経費を削る」というのは健全な経営を行う上で鉄則だが、それと引き換えにクラブの弱体化に繋がりかねないため、そのバランスを見極めることこそ真髄であると考える。

しかしながら、フットボールは面白いことに「どれだけ人件費を費やして大物選手を揃えても強くなれない」ことがある。神戸やガンバ大阪の現在の順位に特に現れている。もちろんその逆のケースも存在し、J1クラブ平均以下の人件費であるサガン鳥栖の健闘は、どれだけ称賛してもしきれない実績と言えるだろう。

J1クラブ別、2021決算報告データまとめ。コロナ禍での黒字は5クラブ

営業利益

本業から得られた収益である「営業収益」から、人件費や試合運営費などといった経費を差し引いた「営業利益」はどうなっただろうか。

新型コロナウイルスの影響はまだまだ深刻であり、川崎フロンターレ、名古屋グランパス鹿島アントラーズ清水エスパルス、徳島ヴォルティスの5クラブを除いては、赤字で利益を出すことができていない。

逆にはこうした社会情勢の中でも黒字で着地した5クラブの経営は非常に優秀であると言える。

今後はJ1クラブ平均営業利益額である2億5000万円の赤字をいかに縮小していくかが課題になると考える。また余談だが、ヴィッセル神戸は-31億3800万円の営業利益を計上しているが、およそ33億円もの特別利益を計上できたことにより、純利益においては4700万円の黒字で着地している。

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