2023明治安田生命J1リーグの第3節が3月4日に行われ、川崎フロンターレ湘南ベルマーレが対戦。川崎の本拠地、等々力陸上競技場にて開催されたこの試合は、1-1のドローで幕引きとなった。

今やお家芸となったハイプレスで、川崎を苦しめた湘南。町野修斗と大橋祐紀の両FW、20歳のMF平岡大陽とともに同クラブの守備を支えているのが、昨2022年末にガンバ大阪との契約が満了となり、今季開幕前に完全移籍という形で加入したMF小野瀬康介だ。

【J1リーグ2023】湘南に新加入の小野瀬が、川崎をいかに苦しめたのか

川崎のパスワークを封じる小野瀬

今節も基本布陣[5-3-2]の右インサイドハーフとして先発し、両軍の選手中最長の走行距離(11.989Km、数値はJリーグ公式サイトより)を叩き出した小野瀬。同選手が守備面でどのような役割を果たし、湘南に貢献しているのか。この点を中心に解説したい。

この日小野瀬に課せられた主なタスクは、川崎のDF大南拓磨の捕捉。前半2分の川崎の自陣後方でのパス回しで、GKチョン・ソンリョンからのパスを受けようとした大南に小野瀬が早速チェイシング。

大南からの縦パスをカットし、川崎の攻撃を寸断したことで、試合の主導権が湘南に渡った。

【J1リーグ2023】湘南に新加入の小野瀬が、川崎をいかに苦しめたのか

湘南にとって悔やまれるのが、前半5分のビッグチャンスを物にできなかったことだろう。この場面では大橋がDFジェジエウへのパスコースを塞ぎながらGKチョン・ソンリョンに接近したことで、川崎のパス回しを左サイド(湘南にとっての右サイド)に限定。チョンから大南へのパスを読んだ小野瀬が敵陣ペナルティエリア内でボールを奪ったことで、決定機が生まれている。惜しくも得点に結びつかなかったが、小野瀬の戦術理解力の高さが窺えたシーンだった。

【J1リーグ2023】湘南に新加入の小野瀬が、川崎をいかに苦しめたのか

湘南の新戦術にもフィットした小野瀬

相手チームが3バックでパスを回してきた際は[5-2-3]、4バックの場合は[5-1-4]の守備隊形でハイプレスを仕掛ける傾向が強い今季の湘南。

この守備戦術に新加入の小野瀬が短期間でフィットしたことが、同クラブにとって好材料となっている。

今節も小野瀬は基本布陣[4-1-2-3]の川崎のセンターバック大南のみならず、DF佐々木旭(左サイドバック)にも果敢にプレス。最終ライン近辺に降りてパスを受けようとした川崎のMF大島僚太へのパスコースを塞ぎながら、佐々木に接近した小野瀬の守備は秀逸で、これによりホームチームの自陣後方からのパス回しは停滞していた。

【J1リーグ2023】湘南に新加入の小野瀬が、川崎をいかに苦しめたのか

「走る意欲のある選手(90分間走り続ける強い意志)」を選手獲得基準のひとつとして掲げており、「攻撃的で、走る意欲に満ち溢れた、アグレッシブで痛快なサッカー」をクラブの哲学として打ち出している湘南にとって、小野瀬はおあつらえ向きな存在と言える。第2節の横浜FC戦における走行距離も両軍の選手中最長と、シーズン序盤にして“湘南スタイル”を体現している同選手の確かなボール捌きの技術も然ることながら、献身的な守備も今季の湘南の見どころのひとつだ。