2022/23シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)準決勝第2戦が、5月17日(日本時間)に行われ、インテルとミランが対戦した。
試合の均衡が崩れたのが後半29分。
第1戦を2-0で物にしていたインテルは、このマルティネスのゴールでミランの希望を打ち砕くことに成功。第2戦を1-0で終え、2試合合計スコアを3-0としたインテルの決勝進出が確定している。
イタリアの大都市ミラノの両雄の明暗を分けたポイントは何か。ここではCL準決勝第2戦を振り返りながら、この点について言及する。

ミランの敗因は
キックオフ直後から基本布陣[3-1-4-2]のインテルがミランにボールを持たせ、ミドルゾーンや自陣後方に下がる展開に。[4-2-3-1]の布陣で臨んだミランは、GKメニャンやマリック・チャウとフィカヨ・トモリの両DF(2センターバック)を起点とするパスワークを試みたものの、インテルの守備ブロックをかき乱せなかった。
ミランの最終ラインからのパスワークが淀んだ原因は、インテルの最終ラインと中盤の間に立ち、パスを受ける選手が少なかったこと。FWオリビエ・ジルー、及びFWラファエル・レオンとFWジュニオール・メシアス(両サイドハーフ)がインテルの最終ラインとほぼ同列もしくは中盤のラインの外側に立つことが多かったため、インテルの守備ブロックが崩れなかった。

ミランのアタッカー陣がインテルの中盤の選手の真後ろに立ち、味方からのパスを待つ。パスが出た瞬間に受け手がインテルの中盤の選手の斜め後ろへ移動し、ボールを捌く場面もほとんど見られず。MFブラヒム・ディアス(トップ下)がこの動きを見せていたが、孤軍奮闘の感が否めなかった。
ミランの最終ラインからMFラデ・クルニッチへのパスコースはインテルの2トップ(マルティネスとFWエディン・ジェコ)にことごとく塞がれたほか、クルニッチと2ボランチを形成したMFサンドロ・トナーリも不完全燃焼に。自陣後方でパスを捌くのか、それともインテルの中盤と最終ラインの間でボールを受けるのか迷いながらプレーしていた。
前半11分にトナーリが左サイドを突破し、ディアスに正確なクロスを送ったものの、同選手のシュートは相手GKアンドレ・オナナの横っ飛びに阻まれる。同38分にもレオンが左サイドを駆け上がり、ペナルティエリア左隅からシュートを放ったが、惜しくもファーポストをかすめた。
数少ない決定機も逃したミランに、勝利の女神は微笑まず。遅攻時の配置を整えられなかったことも、ミランの敗因と言えるだろう。

流麗だったインテルのパスワーク
第1戦で流麗だったインテルの自陣後方からのパスワークは、今回の第2戦でも威力を発揮。前半途中に負傷交代を余儀なくされたものの、MFヘンリク・ムヒタリアンの遅攻時の奮闘が光っていた。
象徴的だったのが、インテルが自陣後方からパスを回した前半13分の場面。ここではムヒタリアンがミランのトップ下ディアスの隣に降り、味方DFアレッサンドロ・バストーニからの縦パスを受け取り。ムヒタリアンのワンタッチパスをタッチライン際で受けたDFフェデリコ・ディマルコがロングパスを繰り出すと、このボールが左サイドへ走ったFWジェコに繋がる。
その後ジェコ、MFデンゼル・ドゥンフリース(右ウイングバック)、MFニコロ・バレッラ(インサイドハーフ)の順でボールが渡り、インテルが決定機を迎えている。自チームの最終ラインの選手のパスコースを増やすための立ち位置を、瞬時にとれるムヒタリアンの特性が活きた場面だった。

明確だったインテルの攻撃プラン
ミランのハイプレスを浴びた際のインテルの攻撃プランは、2試合ともシモーネ・インザーギ監督によって緻密に落とし込まれていた。
第1戦では、GKオナナもしくは最終ラインから長身FWジェコを目がけたロングパスでの局面打開が目立ったが、第2戦はインテルのウイングバックからミランのサイドバックの背後へのパスがメインに。先述の攻撃シーンが典型例で、ここでもミランのDFダビデ・カラブリアの背後にジェコが走っている。ミランの攻撃的な両サイドバック(カラブリアとDFテオ・エルナンデス)の背後を優先的に狙うプランがインテルの選手間で浸透しており、これが同クラブの良好なパフォーマンスに繋がった。
ミラノの地で行われた今回の準決勝2試合は、攻撃の完成度でミランを上回ったインテルの完勝と言って差し支えないだろう。