2023明治安田生命J2リーグで、2008年以来のJ1リーグ昇格を目指す東京ヴェルディ。現時点首位のFC町田ゼルビア、2位の大分トリニータを追いかけ3位につける。
2019年にプロデビューし、福岡時代から武器であるドリブル、質の高いクロス、創造性溢れるパスやシュートでスタンドを沸かす北島。今季序盤戦は東京Vでベンチ入りを争っていたが、そこからいかにして中心選手の1人となったのか。
シーズンのちょうど半分となるJ2第21節のザスパクサツ群馬戦(6月18日2-2)から数日後、知名度を上げつつある22歳の北島が、独占インタビューに応じてくれた。

移籍の決断とプロ初ゴール
ー5歳からアビスパ福岡で育ち、キャリア初の移籍となりましたが、まずはこの決断について教えてください。
北島:福岡でなかなかシーズンを通して試合に出ることができず、シーズンを重ねるごとに試合に出たいという思いが強くなりました。(プロ入り)5年目になると考えたときに「J2でもより出場機会のチャンスがあるだろうクラブに行き、自分のプレーをピッチで表現する」というのを求めて(東京Vへの期限付き)移籍を決断しました。オファーが来てすぐに(自分の中で)決めて、すぐに移籍が決まったという感じです。
ーJ2第5節の藤枝MYFC戦(3月19日5-0)では、74分にペナルティエリア外からループシュートを決め、プロ初ゴール。大きな話題にもなりましたね。
北島:試合後半の15分ぐらいから出場したんですけど、(ペナルティエリアの手前で)横パスが来るときにはシュートを打とうと決めていました。トラップしたときに間接視野で、GKと目の前にいるDFが目に入ったので、普通に打ってもディフェンス陣の誰かに当たって防がれるだろうなと思って。もう上しかないなと思ってファーサイドに浮かしたのですが、それが本当に理想通り、狙ったイメージ通りのところに行きました。
ーシーズン序盤戦はベンチスタートが続きましたが、焦りはありませんでしたか?
北島:少しありましたね。全部スタメンで出て活躍するぐらいの気持ちで、モチベーションで(東京Vに)来たので。リザーブだったりメンバー外だったりした時もありましたし。でも別に練習でやれてないわけじゃないし、試合でも手応えはあったので「いずれチャンスは来るだろうな」と自分に言い聞かせてました。めちゃくちゃ焦るんじゃなくて「これを続けていればいつかチャンスは来るよ」と言い聞かせながらやってました。
ーJ2第11節のモンテディオ山形戦(4月22日1-0)では、オーバーヘッド気味のポスト直撃のシュートやゴール隅に決めたPK(81分)など、自信が伝わる場面が増えて見えました。徐々に自信へと繋がっていたのでしょうか?
北島:そうですね。試合に出た時に自分が何をできたのか(映像で)振り返って観たり、試合中の手応えや、チームの外やチームメートからの声で、自信を掴んでいきました。それがゴールという結果になったことでさらに強い自信になって、今まで以上の自分を表現できてるのかなと思います。

中央のプレーで広がった幅
ー第20節ファジアーノ岡山戦を除いて、第14節からはすべてスタメン出場。セットプレーのキッカーとしてアシストも増えています。
北島:今年は[4-3-3]のインサイドハーフや左のウイングをやってるんですけど、これまでプロに入ってから中央でのプレーはあんまりしてこなくて。そういう意味では、自分のプレーの幅は広がったなと感じています。中央でも外でもどっちでもやれると、より相手は怖くなって(中央とサイドの)どっちに来るのかなと悩んだ対応になるので、自分のキャリアにとっても良い成長の仕方ができているのかなと思います。でも、アシストだけじゃなくてゴールにもこだわってやっていかないと、もっと怖い選手にはなれません。今はより怖さを追及しています。
ー得点という面では、中央でプレーしたほうが目指しやすいのでは?
北島:はい。よりゴールまでの距離が短くなるので、相手が予想してないようなターンや、ターンからのワンツーで剥がしてシュートなど、シュートの本数は真ん中の方が増やせると思います。ミドルシュートだったり、味方を使ってもう一回自分がゴール前で(パスを)受けてのシュートというのに、今(練習で)取り組んでいるところです。
ー中央とサイドでは、気を付けるべき角度が違いますよね?
北島:ヴェルディに来て最初にインサイドハーフをやった時は、なにか少し感覚のズレがありました。首を振るタイミングや、相手の位置を確認するタイミングなどはサイドの時とは全く違うので、頭の中をより研ぎ澄ましています。真ん中だと360度から相手が来るので、練習の中から相手が「こっちから来るのかな、逆から来るのかな」とか見て、ボールを受ける前の準備をしています。毎日のポゼッション練習から意識していたことで、徐々に真ん中とサイドの切り替えが、頭の中でできてきたかなと思います。
ー試合によってフォーメーションやポジションが違いますが、どういう準備をしていますか?
北島:試合の2日前から3日前くらいにフォーメーションが何となくわかるので、そこでイメージしておきます。ピッチの中だけじゃなくて、家に帰って練習の動画を振り返ったりして、自分がサイドでやるのかインサイドハーフでやるのか、どっちも想定します。どっちでも対応できるようにしています。
ー毎回、映像を振り返りますか?
北島:毎試合、2回くらいは観ていますね。「自分がこのポジションだったらこうするだろうな」とか「もし自分がこの選手の立ち位置で同じようにボールを受けたらどうするのかな」とかを意識して。それを考えておくと、(試合中の)似たようなシーンでふとひらめくと思うので。頭の中の準備を、試合が終わっても振り返りでやっています。

アイデアやひらめきは幼少期から
ー北島選手のプレーからは創造性を感じます。どうやって身に付けたものなのでしょうか?
北島:元々小さい頃から、相手を騙すようなプレーが好きでやっていました。今試合に出て自分のプレーが十分できるようになって落ち着きや余裕が生まれたので、ようやく元々持っていたアイデアやひらめきというのが発揮できているのかなと思います。プロに入ってから、そういうの(創造性)を磨いたという感覚はないです。
ー第21節の群馬戦(2-2)では、ペナルティエリア左でボールを受け、一時逆転となる山田剛綺選手のゴールをアシストしました。
北島:山田選手からボールを受けた時に、僕の右側を同点ゴールを決めた稲見(哲行)選手が走ってきました。相手からすると(1点目に)稲見選手にミドルシュートを決められてるので、僕も横に出すような体の向きをして、実際に稲見選手に出そうと思っていました。でも僕のトラップがちょっと流れちゃってボールの置き所が悪かったので、出すのは無理だなと判断したんです。
その時に山田選手の声が聞こえて、山田選手の位置は見てないんですけど「ここに走ってるだろうな」と判断しました。日頃の練習もそうですし、試合を見ていて山田選手はあそこに走ってることが多いので。本当にイメージと最後の判断だけでパスを出したという感じです。自分の感性というか、感度は間違ってなかった、正解だったんだなという自信になりますね。
地道な積み重ねや試合に向けての準備をすること。自分を信じて続けること。簡単なようでとても難しいしそれを、北島は変わらず実行し続けてきた。
後編では、今季への覚悟、福岡時代から密に連絡を取る選手、東京Vで仲の良い選手、城福浩監督の凄さ、オフの日の過ごし方などを伺っている。