1993年の開幕から30周年を迎えた2023シーズンの明治安田生命Jリーグ。その長い歴史のなかで多種多様なキャリアの形が誕生してきた。
ここでは、2023シーズンをJ1リーグで戦う選手の中で、過去にJFLでプレーした経験を持つ代表的な7選手を紹介する(期限付き移籍は除く)。

GK朴一圭(サガン鳥栖)
JFLからキャリアをスタートし、現在はJ1屈指のGKである朴一圭。2012年、朝鮮大学校から当時JFL所属だった藤枝MYFCに入団した。
2012シーズンは16試合に出場したものの自身が望んだプレーができず、翌2013年には関東サッカーリーグ1部のFCコリアへと移籍。このとき朴はアルバイトをしながらリーグ優勝を経験している。そのため厳密には「地域リーグからJ1まで上り詰めた」選手でもある。FCコリアが全国地域リーグ決勝大会で敗れたため、JFL昇格とはならなかったが、同年の第68回国民体育大会サッカー競技(国体)では東京都選抜に選出され準優勝に貢献した。
2014シーズンにはJ3リーグに昇格した藤枝MYFCへ再び移籍し初めてJリーグの舞台へ。2016シーズンからFC琉球で正守護神として活躍すると、2019シーズンには横浜F・マリノスへ移籍して初のJ1挑戦となった。2020シーズンの期限付き移籍を経て2021シーズンにサガン鳥栖へ正式移籍。鳥栖加入から現在までフルタイム出場を続けている。ゴールマウスに鍵をかけつつ、GKには珍しい高いポジショニングでビルドアップに参加。

GK一森純(横浜F・マリノス)
2023シーズン、ガンバ大阪から横浜F・マリノスへ期限付き移籍中のGK一森純。J1連覇を目指す横浜FMで、早くも不可欠な存在になっている。
2014年に関西学院大学から当時JFLのレノファ山口に入団。スポーツ用品店で働きながらサッカーに励んだこのシーズンでは全試合に出場し、チームをJ3昇格に導くとともにJFLベストイレブンを受賞。翌2015シーズンには山口のJ3優勝に貢献した。
2017シーズン、J2のファジアーノ岡山に移籍。ここでも正守護神としての座を掴み、2020シーズンにJ1のガンバ大阪へ。怪我に悩まされ出場機会に恵まれないまま不遇のシーズンを過ごしていたが、今年2月に横浜FMへ期限付き移籍すると、3月3日の第3節サンフレッチェ広島戦からスタメン出場。第18節(6月24日)が終わった現時点まで連続出場を果たしている。ゴールを守るのはもちろん、足元の技術の高さが横浜FMのサッカーに合致しているのだろう。

DF小池龍太(横浜F・マリノス)
東アジアサッカー連盟(EAFF)が主催するE-1サッカー選手権2022のメンバーに選ばれ2試合に出場したDF小池龍太も、キャリアのスタートは当時JFLのレノファ山口だった。
2014年にJFAアカデミー福島から山口に入団すると、チームは翌2015年にJ3へと昇格してリーグ優勝し、2016年にはJ2へと昇格した。その後は柏レイソル、スポルティング・ロケレン(当時ベルギー2部)、そして現在所属しているJ1の横浜F・マリノスといずれも主力として活躍し、「海外」「J1優勝」「日本代表」と素晴らしいキャリアを形成している。
今シーズンは3月29日に負った右膝蓋骨骨折(全治6か月見込み)の影響で出場できていないが、サポーター全員が復帰を待ち望んでいる。

DF原田亘(サガン鳥栖)
センターバックや右サイドバック、さらには右ウイングバックまで、サガン鳥栖でさまざまなポジションを担うDF原田亘も、FC今治時代にJFLで戦っていた。
2019シーズンに日本体育大学からセレクションを経て今治(当時JFL)に入団すると、チームのリーグ3位に貢献。翌2020シーズンから2年間はJ3所属となった今治でプレーした。原田の安定した活躍に注目したサガン鳥栖がオファーを出し、J3から飛び級でJ1の鳥栖へ。J1初年度となった2022シーズンに27試合、2023シーズンも6月10日の第17節終了時点で14試合に出場している。
運動量や球際、戦術理解度などを素早くJ1クオリティに適応させ、主力の一角を担っている。

FW遠野大弥(川崎フロンターレ)
川崎フロンターレのFW遠野大弥。身長166cmの小兵も、JFLからキャリアをスタートした1人である。
藤枝明誠高校で2017年に全国サッカー選手権に出場したがプロからのオファーはなく、進学してサッカーを続けようとしていたところ、JFLのホンダFCからオファーがあり入団。正社員として働きながら3年間プレーすると、2019年度の天皇杯(JFA全日本サッカー選手権大会)でチームのベスト8進出に貢献。この活躍が川崎フロンターレから見出され2020年に加入。同年、期限付きで移籍したアビスパ福岡をJ1昇格に導き、翌2021年から川崎へ復帰。
両足から放たれる強烈なシュートや細かなボールタッチでチャンスに絡む能力に長けており、ウイングやインサイドハーフとしてもプレーできるユーティリティ性も強み。

MF榊原彗悟(横浜F・マリノス)
MF榊原彗悟は、JFLから一気にJ1のチャンピオンチームへと大幅な飛び級を達成した珍しい選手だ。
中学生の頃から横浜F・マリノスのジュニアユースで育ち、高校時代には背番号10を背負って2018年にJリーグユース選手権大会で日本一を達成、大会MVPに輝いた。しかしトップチームへの昇格には至らず、大学や海外クラブへの練習参加などを経て、2019年にJFLのラインメール青森に入団。入団から3年目となる2021シーズン終了時、横浜FMからのオファーが届く。
2022シーズンから横浜FMの所属となったが、この年は期限付き移籍という形で青森でプレーし、2023シーズンから名実ともに横浜FMの一員となった。足元の技術やセンスは抜群で、この大躍進が新たな成功例となるか注目したい。

FW鈴木孝司(アルビレックス新潟)
相手との駆け引きを重視するベテランストライカーのFW鈴木孝司。
2012年に法政大学から当時J2所属の町田ゼルビアに入団。この年、リーグ最下位となった町田はJFL降格となった。翌2013シーズン、JFLでの戦いを強いられた鈴木は15得点を挙げ、チームのJ3昇格に大きく貢献。この年の「JFLベストイレブン」を受賞した。翌2014シーズンには19得点を挙げ、J3の得点王に輝いた。
町田のJ2昇格に貢献するなど目覚しい活躍を見せていたが、2016年8月に左アキレス腱を断裂し戦線から離脱。その後も再断裂に見舞われるなど不運が続き、結果も出せないまま契約満了で町田から退団した。2019年、J2に昇格したばかりのFC琉球にトライアウトを経て加入した鈴木は、ここで完全復活を遂げる。シーズン序盤にリーグ最多得点をマークし月間MVPを獲得すると、その後も得点を重ね、シーズン途中の8月にJ1のセレッソ大阪へと移籍。初のJ1挑戦となった。
2021シーズンに移籍したアルビレックス新潟(当時J2)は、翌年リーグ優勝してJ1へ昇格。センターフォワードとしてチームの昇格に貢献した。
今シーズンは第18節(6月24日)のここまで14試合出場1得点と得点数は伸びていないが、前線で起点となり献身的な守備をみせるなど、貢献度は決して低くない。