2023明治安田生命J1リーグ第27節の計9試合が、9月15~17日に開催された。現時点9位の川崎フロンターレは15日、ホームの等々力陸上競技場でFC東京(現11位)と対戦。
川崎はリーグ戦では直近4試合で勝利がなく、F東京もリーグ戦直近3試合で1分2敗と不調であり、中断期間を経て両チーム共にリフレッシュを図る中行われた同試合。ここでは試合の振り返りと、川崎が勝利した要因を解析していく。

FC東京VS川崎:試合ハイライト
この試合、8月にガラタサライから川崎へ新加入となった元フランス代表FWバフェティンビ・ゴミスが、早速存在感をみせた。開始早々の川崎のコーナーキック。キッカーであるMF脇坂泰斗はピンポイントでゴミスへ。ゴミスが流したボールにFWマルシーニョが詰めるもゴール上に外れる。
F東京のファーストチャンスも開始5分に訪れる。MF塚川孝輝のアーリークロスに対し、MF渡邊凌磨が胸トラップからフリーでゴールを狙うもミートせず。
32分にもF東京にチャンス。FWアダイウトンのシュートのこぼれ球に対し、DFエンリケ・トレヴィザンが強烈なミドルシュートを放つ。惜しくも川崎GKチョン・ソンリョンに防がれた。
39分、今度は川崎にチャンス。

後半、54分に川崎が先制に成功。自陣ゴール前でセカンドボールを回収したMF瀬古樹がMF橘田健人と繋ぎ、DF登里享平がダイレクトで脇坂へ。脇坂が前へ運び、左サイドで待っていたのはマルシーニョ。個人技でボールを運び、相手DF森重真人を抜き去ると、落ち着いてゴールへ流し込んだ。
追いかけるF東京は59分、自陣でボールを奪取したMF東慶吾がショートカウンターでアダイウトンへ。アダイウトンから右サイドを抜けたMF仲川輝人へ渡り、仲川がゴールを狙うも、GKチョン・ソンリョンのセーブで得点には至らず。
F東京は後半アディショナルタイムにも、DF白井康介からのクロスをFWペドロ・エンリケ・ペロッチが胸トラップしてゴールを狙うもミートせず。決定機を掴むことができずにタイムアップとなった。
結果、マルシーニョの今2023シーズン初ゴールで川崎が1‐0で勝利。
では、川崎目線から勝利した3つの要因を攻撃の観点から見ていこう。

要因1:セカンドボールの回収と判断の正確性
象徴的なのは、得点に至った後半54分のシーンである。まず川崎はセカンドボールを回収して、自分たちのボールにした。進行方向に対して後ろ向きでボールを回収した瀬古は、自身で前に運ぼうとせずに、プレーの選択肢が進行方向に対し前と後ろの両方にある橘田にボールを預けている。この1メートル弱における2人のパス交換によって、選択肢が前と後ろの2つに増えたことが重要なポイントとなる。
そして橘田も自身より前にいるゴミスや脇坂にパスをすることができたが、より状態の良い登里へその役目を託した。橘田自身、登里の状態を確認するために、わずか数秒の間に登里を2回見ている。この瀬古と橘田と登里、3人の判断の正確性が得点につながったと言えよう。
結果、登里はダイレクトで脇坂にボールを送り、F東京の守備陣形が整いきる前にマルシーニョのシュートまで決めることができた。各選手が正しい状況判断をし、判断の速度を上げたことによって生まれたゴールであった。

要因2:ターゲットの存在
川崎の前第26節終了時点におけるセットプレーからの得点数は4だ。これはリーグワースト2位タイの数字である。これを打開するために、同試合ではゴミスが力を発揮したことは間違いない。
オフサイドで得点には至らなかったが前半39分のシーン。ゴミスというターゲットが印象付けられたことによって、F東京の守備の意識がゴミスに集中した。結果、後ろからきた家長がフリーになることができて、ゴールネットを揺らした。
またゴミスの存在は、セットプレーだけでなく他のシーンでも効果を発揮した。61分にゴミスがファールを受ける。ターゲットに対し当然相手のファール回数は増える。これに対し、ピッチ上で唯一動いていたのが瀬古であった。得点には至らなかったがクイックリスタートからゴールを狙った。ゴミスというターゲットの存在により生まれるプレーは、川崎の攻撃の幅を広げるだろう。

要因3:得点パターンの拡大
さらに、ゴミスの加入は川崎の攻撃パターンの拡大にもつながった。同試合で今シーズン初得点を記録したマルシーニョは元からドリブルを得意とする選手であったが、ゴミスが中央でターゲットとなることで相手ディフェンスを引き付ける効果を発揮する。その効果によって、サイドでマルシーニョがよりフリーな状況を作ることが可能となる。