AFCチャンピオンズリーグ(ACL)2023/24のグループG第1節が9月19日に行われ、横浜F・マリノスが仁川ユナイテッド(韓国)に2-4で敗れた。
仁川の[5-3-2]の布陣を基調とする撤退守備や速攻に手を焼き、失点を重ねてしまった横浜FM。

横浜FMvs仁川:試合展開
キックオフ直後から横浜FMにボールを保持されたものの、仁川が粘り強い守備で応戦する。
前半8分、仁川のMFキム・ドヒョクがセンターサークル近辺でボールを回収し、同選手からDFチョン・ドンユンへのスルーパスが通る。横浜FMのDF松原健(右サイドバック)の背後を突いたチョンがゴール前へ低弾道クロスを送ると、これをホームチームのDF上島拓巳とGK一森純が処理しきれず。両選手に当たったクロスボールがゴールマウスに吸い込まれ、横浜FMのオウンゴールとなった。
前半17分にFW西村拓真がコーナーキックからゴールを挙げ、横浜FMが同点に追いつく。ホームチームはその後も攻勢を強めたが、仁川陣営のゴール前での体を張った守備やGKキム・ドンホンの好セーブ、及び速攻に手を焼いた。

迎えた前半37分、横浜FMのMF井上健太(ウイングFW)が敵陣右サイドでボールを失うと、ここから仁川がロングカウンターを繰り出す。キム・ドヒョクのロングパスを受けたFWジェルソ・フェルナンデスが、横浜FMのDF角田涼太朗のスライディングをペナルティエリア内でかわして勝ち越しゴールを挙げた。
仁川に数少ないチャンスを物にされる苦しい試合展開のなかで、横浜FMはまたもセットプレーを得点に結びつける。同43分、MF吉尾海夏のコーナーキックにFW宮市亮がヘディングで合わせ、同点ゴールを挙げた。仁川に2度リードを奪われた横浜FMが、2-2のタイスコアで前半を終える。
後半も横浜FMが相手ゴールに迫ったが、ホームチームの希望を打ち砕いたのが、同16分に投入された仁川のFWエルナンデス・ロドリゲス。同30分、自陣からボールを運んだMFポール・ジョゼ・ムポクのパスをエルナンデスが受け、ロングカウンターを結実させる。この4分後にも、ムポクの敵陣でのパスカットから始まった速攻をエルナンデスが得点に結びつけた。再三にわたり仁川のカウンターを浴びた横浜FMが、ACL2023/24の初戦を落としている。

「今日は我慢比べだった」
基本布陣[4-1-2-3]の中盤の底でプレーした横浜FMのMF喜田は、試合後の囲み取材に対応。仁川の守備をふまえての自身の対策を明かしてくれた。
「(仁川が)後ろを堅めて、カウンターがある(チーム)というのは把握していました。チャレンジと(それによる)リスクは紙一重ですけど、(縦に)刺すパスなどのチャレンジを怖がってしまえば点をとれませんし、そこでエラーがあれば、カウンターを食らうと。(仁川の)ゴール前を堅める守備やカウンターの質が、自分たちを上回った試合だったと思います」
「(喜田自身)いろいろなタスクがあるなかで、今日は我慢比べだったかなと。相手の2トップが自分のことを警戒していましたし、(喜田へのパスコースを)消してきました。僕があそこ(中盤の底)に立つことでセンターバックに時間(の余裕)を持たせられるとか、そこから(ボールを)前進できるという効果があります。あれだけ中央を閉められると、僕がボールに触る回数が多くはなくなってしまいますね。それでも我慢強くあそこに立ち続けることが、チーム全体としてやりたいことから逆算して必要でした」
「チャレンジをやめずに、その質を上げていきたいですね。

松原が横浜FMの攻撃の潤滑油に
横浜FMはキックオフ直後から、右サイドバックの松原がタッチライン際から内側にポジションを移し、攻撃の起点に。特に前半、[5-3-2]の隊形で自陣にこもった仁川のセントラルMFキム・ドヒョクの手前で松原がボールを受け、左右どちらにもパスを散らせる状況を作れていた。喜田が相手の2トップに警戒されたなか、松原が横浜FMの攻撃の潤滑油になっていたのは間違いないだろう。
攻撃面で惜しかったのは、横浜FMが敵陣左サイドでボールを保持した際に、右サイドバックの松原がボールサイドに寄りすぎる場面があったこと。ボールサイドに人を集めることでショートパスを繋ぎやすくなるという利点はあるが、その反面サイドチェンジのパスを織り交ぜた攻撃や、ピッチを幅広く使った攻撃を繰り出しにくくなる。この試合では仁川の3セントラルMFを横に揺さぶるべく、ボールサイドとは逆のサイドバックが寄りすぎないほうが良かったのかもしれない。
J1リーグ連覇とACL制覇の二兎を追う横浜FMが、いかにして攻撃の質を更に引き上げるのか。今後もこの点に注目していきたい。