マンチェスター・シティのFWといえば、多くの人は昨2022/23シーズン、プレミアリーグ(英1部)とUEFAチャンピオンズリーグ(CL)双方で得点王を獲得し、欧州5大リーグ(リーグ・アン、セリエA、プレミアリーグ、ブンデスリーガ、ラ・リーガ)で最多の52ゴールを決めたノルウェー代表FWアーリング・ハーランドを思い浮かべるだろう。

しかし、忘れてはいけない男がもう一人いる。

FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会において、7試合4ゴールを決め、アルゼンチン代表の優勝に大きく貢献したFWフリアン・アルバレスだ。アルバレスは2022年にリーベルプレート(アルゼンチン1部)からシティに加入すると、プレミアリーグで31試合に出場(うち先発出場は13試合)、全ての公式戦では49試合に出場し(うち先発出場は19試合)、17ゴール5アシストを記録するなど1年目から実力を発揮した。

アルバレスのような若くて有能な選手を中心にチームを再構築しようと考える監督は少なくないだろう。しかし、シティにはハーランドという絶対的ストライカーがいるため、この2人を共存させ、両選手が快適にプレーできる方法を見つける必要がある。すでに第7節まで終了した2023/24シーズンのプレミアリーグで、アルバレスとハーランドは全ての試合にスタメン出場を果たしている。

ここでは、タレント揃いのシティで強力なストライカーとの共存に成功し活躍の場を増やしているアルバレスについて紹介しよう。

マンCでアルバレスがハーランドと共存できた理由【プレミアリーグ】

今シーズン躍進のアルバレス

2022/2023シーズン、シティ1年目のアルバレスは主にハーランドやベルギー代表MFケビン・デ・ブライネに休みを与えるための要員として出場機会を得ていた。しかし今シーズンは、8月11日に行われたプレミアリーグの開幕戦(対バーンリー、3-0)で、デ・ブライネが負傷離脱したこともあり、すでにリーグ全7試合とCL1試合でスタメン出場を果たし、6ゴール5アシストを記録。実質レギュラーとしてプレーしている。

シティを指揮するジョゼップ・グアルディオラ監督はアルバレスについて「現時点では負傷した選手たちがポジションと出場機会を与えている。おかげで彼はたくさんプレーできているよ。彼はチームに貢献しているし本当によくやっている。しかし、彼はこの状態を維持し続けなければいけない。

負傷した選手はいずれ戻って来て、自分のポジションを取り戻そうとするだろうからね」と語り、好調なアルバレスを称賛すると同時に現状に満足しないよう釘を刺した。

マンCでアルバレスがハーランドと共存できた理由【プレミアリーグ】

多彩な技術力とサッカーIQの高さ

アルバレスは、ハーランドとセンターフォワードのポジション争いをせずにシティのシステムに適応した。戦術家で知られるグアルディオラ監督は、複雑なシステムを使わず分析した試合状況から最も適した選手を組み込むことでそれぞれの持ち味を最大限に引き出している。シティはボール保持時に[3-2-5]のフォーメーションで前進する。その中でアルバレスは、イングランド代表MFフィル・フォーデンとともに、2枚の守備的MFの前方スペースを使いながら、左右関係なくボールを受けている。加入して間もないアルバレスの活躍こそが、彼の技術的な才能とサッカーIQの高さを物語っている。

実際、アルバレスには多くの役割が求められている。ゴールを背にした状態で頻繁にボールを受け、タッチ数少なくボールをはたく。また、狭いスペースでの素早いターンやゴール前に顔を出し得点を狙うなど様々な場面に対応する姿から、求められた多くのタスクをこなす能力を持ち合わせていることがわかる。

マンCでアルバレスがハーランドと共存できた理由【プレミアリーグ】

ボールポゼッションの中心で力を発揮

アルバレスは1対1でチャンスを作り出す選手ではなく、フォーデンのように捕まえにくい選手でもないが、ボールを運びキープする能力に優れており、適切なタイミングでボールを散らすことができる。周囲と連携ながらプレーするため、常にシティのボールポゼッションの中心にいられるのだ。この能力は、しっかりと構造化されたシティのようなチームでも、自由な攻撃陣を形成するアルゼンチン代表のようなチームでも変わらずに発揮され、チームに良い影響をもたらしている。

さらに、デ・ブライネのような脅威的アシスト能力はないが、予測困難なパスを提供する能力を持っている。9月16日に行われたウェストハム・ユナイテッド戦(3-1)で見せたポルトガル代表MFベルナルド・シウバへのアシストは、まさにその力を示したプレーと言える。

マンCでアルバレスがハーランドと共存できた理由【プレミアリーグ】

怪物ハーランドとの共存

様々な役割を果たすために必要な能力を備えているものの、先発メンバーとしてハーランドと共存できるかが注目されていたアルバレス。ハーランドは規格外の身体的優位性と野生的な本能を活かし、主にゴールを決める役割を担っているが、一方でゴールまでのプロセスにはほぼ関与しない。そのため、アルバレスが活躍するためには、ゲーム読解力の他に「ハーランドとうまく連携できるか」が鍵となっていた。

今シーズンこれまで、この2人の選手によって生み出されたゴールのうち、次の2本はアルバレスが決めている。9月2日に行われたフラム戦(5-1)では、ペナルティエリアの左中央付近でMFマテオ・コバチッチからパスを受けたハーランドの動きを読みゴールを決めた。また、9月19日に行われたCL予選のレッドスター・ベオグラード戦(3-1)でも、アルバレスは中央に位置するハーランドのサポートを利用し、相手の背後に走り込んでゴールを決めた。

マンCでアルバレスがハーランドと共存できた理由【プレミアリーグ】

唯一無二の柔軟性と技術力

ある意味、ハーランドとの関係におけるアルバレスの動きはセカンドストライカーのようなものと言える。しかし、シティでの役割はそれだけに留まらない。セカンドストライカー的役割に加え、中盤ではインサイドハーフのようにプレーしトップ下でゴールを狙いアシストを提供。そして時にはセンターフォワードとしてゴールに迫る。これら全てを高いレベルで行う柔軟性と技術力こそが、アルバレスの最大の特徴であり、唯一無二のものだろう。

今後、チームにとって欠かせないデ・ブライネのような選手が復帰した際、グアルディオラ監督がどのようにシステムを再設計するのか明らかではないが、現時点のシティにとってアルバレスが必要不可欠であることは間違いない。

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