今節の敗北により、同リーグ19位に転落した湘南。直近のリーグ戦6試合勝ちなしに加え、依然としてJ2リーグ降格圏内(18位から20位)に沈むなど、苦境に陥っている。
J1残留争いの大一番、京都戦を落とした原因は何か。ここではこの点について論評する。

湘南vs京都:試合展開
キックオフ直後から、互いにロングパスを多用。ボールが両軍の陣地を行き来する慌ただしい試合展開のなか、先取点を挙げたのは京都だった。前半24分、京都が敵陣左サイドでボールを保持。DF三竿雄斗のクロスが湘南DFキム・ミンテにヘディングで跳ね返されたものの、こぼれ球を京都FWマルコ・トゥーリオが拾う。トゥーリオの浮き球パスに反応したFW原大智が湘南最終ラインの背後を突き、GKソン・ボムグンとの1対1を制した。
後半5分、湘南が敵陣右サイドから攻撃を仕掛けると、MF茨田陽生のクロスがペナルティエリア内でジャンプした京都FW一美和成の腕に当たる。これが一美によるハンドの反則と見なされ、湘南にPKが与えられたが、FW福田翔生のキックは京都GKク・ソンユンに防がれる。この試合最大のチャンスを逃した湘南の猛攻はその後も実らず、J1残留をかけた大一番で痛恨の黒星を喫している。

奏功しなかった湘南の布陣変更
両チームの基本布陣は、湘南が[3-4-1-2]で京都が[4-1-2-3]。京都の逆三角形の中盤に対し、湘南が正三角形の中盤を敷く。これにより各々のマッチアップをはっきりさせる戦法を採った。湘南はルキアンと福田翔生の両FW(2トップ)を起点とするハイプレスを試みたものの、京都が最終ラインからのロングパスを多用したため、敵陣でなかなかボールを奪えず。また、かねてより採用してきた[3-1-4-2]から[3-4-1-2]に布陣を変え、中盤でボールを奪いやすい状況を整えたが、そもそも京都が中盤を経由しない攻めを繰り返したためこの構図も作れなかった。

湘南の守備の問題点は
この試合における湘南の最大の問題点は、京都のパス回しを片方のサイドへ追い込むための守備設計が、全くできていなかったことだ。京都の2センターバック(鈴木義宜と宮本優太の両DF)に対するルキアンと福田翔生の湘南2トップの寄せが遅れる場面が散見されたほか、京都の両サイドバック、三竿と福田心之助の両DFに誰がアプローチするかも曖昧に。前半19分には自陣からボールを運んだ福田心之助に難なくロングパスを繰り出されており、この場面からも湘南の守備設計の稚拙さが窺える。大一番に向けた準備があまりに不足していた。対する京都の守備プランは緻密で、一美、原、トゥーリオのFW3人(3トップ)が湘南3センターバックによるボール保持・運搬を絶えず妨害。京都の2インサイドハーフ、松田天馬と川﨑颯太の両MFも湘南の2ボランチ(田中聡と茨田陽生の両MF)を捕捉できていた。
京都の両サイドバック、三竿と福田心之助の守備面の集中も途切れず、鋭い出足で湘南のサイド攻撃を封印。試合全体を通じ湘南の両ウイングバックに自由を与えなかったことが、この大一番の勝利に繋がった。
また、湘南はかねてより問題となっていた、自陣からのパス回しにおけるウイングバックの立ち位置の悪さをこの日も改善できず。
大一番に向け綿密にプランを練った京都と、それを怠ったがゆえに不完全燃焼だった湘南。この両軍の差が、実際の点差以上に表れた試合内容だった。

湘南がすべきだった守備は
この日湘南が陥った現象は、最終スコア4-4で引き分けた第4節浦和レッズ戦と似ている。第4節の浦和と今節の京都の基本布陣は、ともに[4-1-2-3]。どちらの試合も湘南が漫然とハイプレスをかけては、これを掻い潜られている。相手サイドバックを湘南のどの選手が捕捉しに行くのか。浦和戦も京都戦もこれが曖昧だった。基本布陣[4-1-2-3]のチームのパス回しを片方のサイドへ追いやり、相手サイドバックのところでボールを奪いたいのなら、[4-4-2]の隊形を基調とするハイプレスが望ましかったのではないか。厳密に言えば[4-2-2-2]や[4-1-3-2](中盤菱形)に近い守備隊形だが、以下の方法であれば湘南のハイプレスが機能したはずだ。
まず湘南の2トップが相手2センターバックを捕捉。

ここで紹介した手法はあくまで一例であり、唯一の正解ではないが、現状の守備では湘南のJ1残留は厳しいと付言しておきたい。今季J1リーグ21節消化時点で、無失点試合は僅かひとつ。J2リーグへの降格回避に向け、守備の抜本的な改善が急務だ。