2024明治安田J2リーグのジェフユナイテッド千葉(現7位)MF横山暁之が、7月19日に行われた公開練習後の取材に応じた。

同月14日にフクダ電子アリーナで開催された第24節ロアッソ熊本戦では、1点ビハインドで迎えた後半14分からボランチの位置で途中出場した横山。
4日前に行われた天皇杯3回戦(FC東京戦2-1)にもスタメン出場していた横山は、この日も積極的に攻撃参加を行いチームの潤滑油となり、惜しいシュートチャンスも生み出した。しかし千葉はその後、セットプレーから追加点を奪われてしまい0-2で敗戦。中断期間前最後の試合だったが、課題を残す結果となった。

※パリ五輪開催により、7月14日(J2第24節終了後)から8月3日(第25節開催)まで約3週間リーグ戦が中断となる。

ジェフ千葉MF横山暁之が充実の藤枝生活を手放し目指すもの【現地取材】

“圧倒的な存在”へのこだわり

試合前の囲み取材で「圧倒的な存在になりたい」と語っていた横山は、熊本戦について「僕の力で勝ち点を取りたかった。結果に繋がるプレーをすることが最近の課題ですが、まだまだ力及ばずです」と振り返った。では、横山が考える“圧倒的な存在”とはいったい何か。

「毎試合70点の平均点を出すようなプレイヤーではなく毎回100点を出したいですし、成長し続けたいという気持ちが強いです。熊本戦は控えでしたが、たとえ連戦の中であっても『横山暁之がピッチにいてほしい』とまわりに思われたい。それがジェフの中で“圧倒的な存在になる”ということだと思います」

「確率は低いかもしれませんが、僕は2年後の2026北中米W杯で日本代表としてプレーすることを目指しています。でも、現実はまだまだ実力が足りませんし課題は多い。目標のためには毎試合成長しながら、圧倒的なパフォーマンスを出すことが必要です」と“圧倒的な存在”へこだわる理由を明かした。

ジェフ千葉MF横山暁之が充実の藤枝生活を手放し目指すもの【現地取材】

W杯で芽生えた日本代表への意識

横山が日本代表を目指したのは意外にも最近だ。FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会が開催された2022年、金沢のスポーツバーで日本代表VSクロアチア代表を観ていた横山は、その試合を純粋に応援することができなかったという。


「カタールW杯よりも前は試合にも絡むことができていなくて、代表なんて考えもしなかった。でも、当時所属していた藤枝MYFC監督の須藤さん(須藤大輔監督)が掲げる“エンターテインメントサッカー”の理念に共感していた僕は『観ている人を楽しませたい』と思ってプレーしていました。スポーツバーでは普段サッカーを観ないような人たちも盛り上がっていて、それを見た時、僕がやりたいことを体現している日本代表に衝撃と悔しさが湧いてきたんです」

ジェフ千葉MF横山暁之が充実の藤枝生活を手放し目指すもの【現地取材】

変化を求めて手放した藤枝生活

2020年のプロデビューから3シーズン過ごした藤枝での生活は、横山のサッカー人生における軸となっている。恩師やチームメイトにサポーター、プライベートも充実した日々だった。しかしそれらを手放してまで千葉に来たのは、横山が抱く“成長へのこだわり”ゆえ。

「藤枝での生活は100点満点でした。でも、W杯を目指すのであれば、どんなにうまくいっていても何かを変える必要があると思ったんです。たとえそこがどんな環境でも、同じことを続けていくには恐怖がありますし、成長も止まってしまう」

千葉への挑戦は新たな目標に向けての変化を重要視したうえでの決断であると明かした横山だが、もちろん環境だけでなくプレー面での変化も重視している。横山は現在、ボールを持ったときに違いを生み出せる選手として千葉の攻撃を支えているが、今後追求したいのはオフ・ザ・ボールの動きだという。

「逆サイドにボールが渡ったときの前線へのスプリントなどは課題ですし、それが結果に繋がると思います。ただ、ゴールやアシストはあくまでもプラスアルファの部分なので、まずはチームとしてのベースを追及したいです。その土台があることで初めてプラスアルファが活きると思うし、どのポジションでもその割合を増やすことができれば“圧倒的な存在”に近づくと思います」と、チーム内でのタスクを最優先にさらなる成長を誓う。

ジェフ千葉MF横山暁之が充実の藤枝生活を手放し目指すもの【現地取材】

「どんな状況でも優勝に向かうべき」

横山が目指す“圧倒的な存在”への道のりは決して平坦ではなく、掲げた目標を考えれば熊本戦での敗北はチーム・個人としても手痛いものだった。
そんな状況のなか、試合終了後にサポーターから選手たちに送られた声援が横山の決意をより強くした。

「あの応援はめちゃくちゃ響きました。ジェフに戦っていない選手はいないですし、僕らはサポーターもチームの一員だと思っています。だからこそ本当のチームメイトに接するような態度で鼓舞してくれた千葉のサポーターを誇りに思うし、より一層彼らのために突き詰めたプレーをしたいです」と、苦しい瞬間にこそ前向きな言葉を掛けてくれるサポーターに感謝した。

次節(第25節)、千葉は8月3日にニッパツ三ツ沢球技場で現在リーグ3位の横浜FCと対戦する。上位チームとの重要な一戦を前に「僕らはシーズン開幕前に優勝という目標を掲げてスタートしました。でも、もしかしたら今後それが現実的でないと思われる場面があるかもしれない。それでも優勝を掲げた以上、どんな状況でもそこに向かっていくべきです」と意欲をみせ「今後、ジェフに関わる全ての人たちの間でも弱気になることがあるかもしれない。でも、自分はそうあってほしくないと思っています」と語った。

「優勝を目指すかプレーオフを目指すかで日々の行動が変わります。優勝を目指すことで全ての基準が高くなりますし、プレーオフが目標では日々の行動がそこに合わせたものになってしまう。だからこそ中断期間中も優勝を目指しますし、チームメイト同士の会話でも『優勝』という言葉を増やしていきたい。
そのためにはサポーターの方々からも優勝という言葉を今まで以上に投げかけてほしいです。そのために僕らは闘います」と、最後まで諦めず優勝に向かい続ける姿勢を求めた。

横山の根底には“究極のエンターテインメントサッカー”である日本代表への想いと、そこから逆算した日々の成長志向がある。それは今の千葉にとっても重要なものだ。プレーオフ進出ではなく、J2優勝とJ1昇格を勝ち取ることが、声援を送り続けるサポーターにとっても一番のエンターテインメントであるはずだ。
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