ディフェンダー(DF)の役割は、近年のサッカー界で大きく変化している。特に左利きのDFは、チームのバランスを取るために不可欠な存在とされる。


右利きの選手ばかりではパスコースやビルドアップの流れが偏りやすく、左足でプレーできる選手がいることで攻撃の展開がスムーズになる。また、守備では右利きのウインガーと対峙する際に左足で対応しやすく、優位性を発揮できる場面が多い。

中でも左利きのセンターバック(CB)は、ビルドアップの要として機能する。左足の正確なパスで相手のプレスを外し、ピッチを広く使った展開を可能にする。また、相手の右利きのフォワードやウインガーに対し、適切な角度で守備を仕掛けやすく、カバーリングの際も左サイドのスペースを効果的に埋めることができる。

一方、左サイドバック(SB)は攻撃と守備の両面で戦術的な柔軟性が求められる。守備では対人対応の強さとポジショニングが重要になり、相手の突破を防ぎながら適切なタイミングで攻撃に転じる判断力が必要だ。攻撃ではオーバーラップやインナーラップを駆使し、サイドからのクロスだけでなく、カットインからのシュートや中央への展開でも違いを生み出せる選手が求められている。

2025年のサッカー界において注目を集める左利きDFには、CBとしての堅実な守備力を持ちながらサイドにも関与する選手や、攻撃的な左SBとしてチームの攻撃の軸となる選手まで、多様なタイプが存在する。本記事では、現在世界で注目される左利きのディフェンダー5名を紹介させてもらいたい。

欧州で注目を集める左利きのディフェンダー5選【2025】

アレハンドロ・グリマルド(バイエル・レバークーゼン)

スペイン代表DFアレハンドロ・グリマルドは、スペイン出身の左SBで、2023年7月からブンデスリーガのバイエル・レバークーゼンに所属している。優れた攻撃力とセットプレーの精度で知られ、特にクロスやミドルシュートの質が高い。

バルセロナの下部組織ラ・マシアで育ち、若くして高い技術力を備えていたが、トップチームでの出場機会はなかった。
2016年にポルトガルのベンフィカへ移籍し、徐々に出場機会を得ると2016/17シーズン以降は主力として定着し、怪我での度重なる離脱はあったもののクラブで数々のタイトル獲得に貢献。特に攻撃的なスタイルが評価され、アシストやチャンスメイクの面でチームにとって重要な存在となった。

2023年夏にフリーでレバークーゼンへ移籍すると、同クラブのシャビ・アロンソ監督のもとでさらに成長を遂げる。移籍初年度の2023/24シーズン、SBでありながら10ゴール15アシストを記録し、チームに欠かせない選手として認められた。守備面でも高い戦術理解度を示し、クラブのリーグ最少失点と無敗優勝に大きく貢献した。

2023年にはスペイン代表に初招集されており、今後の代表定着も期待される。すでに欧州トップレベルでの評価を高めつつあり、今後さらにその存在感を増していく可能性を秘めている。

欧州で注目を集める左利きのディフェンダー5選【2025】

リッカルド・カラフィオーリ(アーセナル)

イタリア代表DFリッカルド・カラフィオーリは、2002年生まれのイタリア出身のディフェンダーで、2024年の7月からプレミアリーグのアーセナルに所属している。本職はCBだが、左利きの技術と攻撃参加の能力を活かし、左SBとしての適性も見せている。

ローマの下部組織で育ち、2020年8月にセリエAデビュー。その後、ジェノア、バーゼルを経てボローニャへ移籍すると、3バックの左CBとして起用され、攻撃の組み立てにも関与するプレーが評価された。CBとしての堅実な守備に加え、ボールを持ち運ぶ能力を兼ね備えたことで、現代的ディフェンダーとしての地位を確立した。2023/24シーズンはボローニャで30試合に出場し、2得点5アシストを記録。


2024年夏にアーセナルへ移籍すると、プレミアリーグでは主に左SBとして起用されている。2024/25シーズンのリーグ戦24節までに13試合に出場し、2得点1アシストを記録。後方からのビルドアップやボールを持ち運ぶ能力を活かし、攻撃の起点となるプレーが光っている。

また、イタリア代表にも選出され、UEFA欧州選手権(ユーロ2024)ではグループステージ全3試合にフル出場し、チームのベスト16進出に貢献した。代表では主にCBとして起用されている。

アーセナルおよびイタリア代表での活躍が続けば、さらなる評価を高めることは間違いない。今後の成長に注目が集まる選手の1人である。

欧州で注目を集める左利きのディフェンダー5選【2025】

アルフォンソ・デイビス(バイエルン・ミュンヘン)

2000年生まれのカナダ代表DFアルフォンソ・デイビスは、現在ブンデスリーガの強豪バイエルン・ミュンヘンに所属している。主に左SBとしてプレーし、その驚異的なスピードと攻撃力で世界最高クラスと評価されている。

2016年にメジャーリーグサッカー(MLS)のバンクーバー・ホワイトキャップスでプロキャリアをスタートし、2019年1月にバイエルンへ移籍。加入当初は適応に苦しんだものの、翌2019/20シーズンには左SBとして定着し、2020年にはUEFAチャンピオンズリーグ(CL)優勝を果たすなど、クラブの成功に大きく貢献した。バイエルンでは通算220試合に出場し、12ゴール34アシストを記録している(2025年2月3日現在)。

デイビスの最大の武器は、最高時速36.51kmを記録した圧倒的なスピード。
これにより攻守両面で優位性を持ち、相手ディフェンダーを置き去りにする推進力を誇る。元々ウインガーとしてプレーしていた経験から、ドリブル突破やオーバーラップの精度が高く、バイエルンとカナダ代表の左サイドに不可欠な存在となっている。

また、スピードを活かした守備リカバリーも得意とし、ポジショニングの向上によりタックルやインターセプトの精度も高まっている。攻撃的な左SBでありながら、守備面の安定感も兼ね備えたバランスの取れた選手と評価されている。

カナダ代表の中心選手としては、2022年のFIFAワールドカップ(W杯)カタール大会で同代表史上初のゴールを記録。その後も代表チームを牽引する存在として期待されている。

バイエルンとの契約が2025年6月末までの中、レアル・マドリードやマンチェスター・ユナイテッド、リバプールなど欧州のトップクラブが獲得を狙っていたが、2月4日、デイビスはバイエルンとの契約をさらに5年間延長し、2030年までの契約にサインした。

欧州で注目を集める左利きのディフェンダー5選【2025】

フェデリコ・ディマルコ(インテル)

イタリア代表DFフェデリコ・ディマルコは、1997年生まれ、イタリア出身で、現在はセリエAのインテルに所属している。主に左SBや左ウイングバックとしてプレーし、正確なクロスとセットプレーの精度の高さが武器の選手だ。

7歳でインテルの下部組織に入団し、2014年にトップチームデビュー。その後、アスコリ(セリエC)やエンポリ、スイスのシオンなどへのレンタル移籍し経験を積んだ。2020/21シーズンにはエラス・べローナにレンタル移籍し、リーグ戦35試合で5ゴール5アシストを記録し一気に頭角を現す。その成績が評価され、翌2021/22シーズンにインテルへ復帰以降は、左サイドのレギュラーとして定着した。


ディマルコの最大の特徴は、左足から繰り出される高精度のクロスや強烈なシュート。ウイングバックとして攻撃的なポジションを取ることが多く、積極的なオーバーラップでチャンスを演出する。特にセットプレーではキッカーを務めることも多く、フリーキックやコーナーキックから直接ゴールを狙う場面も見られる。一方で、守備の意識も高く、対人守備やポジショニングの面でも成長を続けている。

イタリア代表としても各年代でプレーし、2022年にA代表デビュー。通算28試合に出場し3ゴール6アシストを記録している(2月3日時点)。代表でも左サイドのレギュラーとして定着しつつあり、さらなる活躍が期待されている。

欧州で注目を集める左利きのディフェンダー5選【2025】

ヨシュコ・グバルディオル(マンチェスター・シティ)

2002年生まれのクロアチア代表DFヨシュコ・グバルディオルは、2023年8月からプレミアリーグのマンチェスター・シティに所属。ポジションは主にCBと左SBとしてプレーしている。

強靭なフィジカルを持つグバルディオルは、ディナモ・ザグレブ(クロアチア)のユースアカデミーで育ち、2019年にトップチームデビュー。2021年にブンデスリーガのRBライプツィヒへ移籍し、CBとして成長を遂げた。2023/24シーズンにはシティに移籍し、背番号24を背負っている。


クロアチア代表としては、各年代別代表を経て、2021年にA代表デビュー。UEFA欧州選手権(ユーロ2020)では、グループステージ全試合に左SBとして先発出場しチームのベスト16進出に貢献。2022年のW杯では、CBとして全試合に出場し、3位入賞に大きく貢献した。グループステージで敗退となったユーロ2024でも左SBとCBを器用にこなしながら全試合に出場している。

グバルディオルは、シティのジョセップ・グアルディオラ監督によって大きく変貌を遂げた選手の1人でもある。シティ加入当初から左SBとしてプレーしており、より攻撃的な役割を担うようになった。特にゴールに絡むプレーが増え、通算76試合に出場しDFながらも10ゴールを記録している。

現在ではポジショニングの向上と攻撃面での鋭さを加え、左足から繰り出される正確なパスやビルドアップ能力に優れ、守備だけでなく攻撃の起点となるプレーも得意としている。
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