2025シーズンの天皇杯(JFA第105回全日本サッカー選手権大会)が5月24日に開幕する。J1クラブが登場するのは2回戦(6月11、18日)からだが、1回戦(5月24、25日)ではJ2、J3のクラブがアマチュアの社会人チームやクラブチーム、大学サッカー部と対戦する。


Jクラブにとっては、リーグ戦の合間に行われるとあってターンオーバー(先発メンバーを大きく入れ替え)させるケースも多いが、あまりにメンバーを落とし過ぎると一戦必勝で挑んでくるアマチュアを相手に痛い敗戦を喫することになり、それが天皇杯の見どころでもある。

ここでは天皇杯1回戦27試合の中で、アマチュアクラブが格上クラブを倒す可能性のあるカードを5つピックアップしたい。

2025天皇杯1回戦、全27試合

5月24日開催(左側がホーム扱い)

  • 仙台大 vs 東洋大
  • 水戸ホーリーホック vs SC相模原
  • 栃木SC vs 大山サッカークラブ
  • FC岐阜 vs 富山新庄クラブ
  • 京都産業大 vs 守山侍2000
  • 奈良クラブ vs 新潟医療福祉大
  • 愛媛FC vs 三菱重工長崎SC
  • Brew SAGA vs イロンデル熊本FC
  • ヴェロスクロノス都農 vs ガイナーレ鳥取
  • カマタマーレ讃岐 vs 高知ユナイテッド
5月25日開催(左側がホーム扱い)

  • ラインメール青森 vs BTOP北海道
  • いわてグルージャ盛岡 vs ノースアジア大
  • 福島ユナイテッド vs 東京国際大
  • ザスパ群馬 vs 法政大
  • 松本山雅 vs FC大阪
  • カターレ富山 vs 順天堂大
  • ツエーゲン金沢 vs 中京大
  • 福井ユナイテッド vs Honda FC
  • ヴィアティン三重 vs 山梨学院大PEGASUS
  • アルテリーヴォ和歌山 vs FC BASARA HYOGO
  • 福山シティFC vs FC徳島
  • FCバレイン下関 vs 環太平洋大FC
  • ベルガロッソいわみ vs ギラヴァンツ北九州
  • FC今治 vs 鹿児島ユナイテッド
  • 大分トリニータ vs レベニロッソNC
  • 沖縄SV vs ヴェルスパ大分
  • RB大宮アルディージャ vs 筑波大
【天皇杯2025】1回戦で番狂わせを起こしそうなアマチュアのカード5選

ザスパ群馬(J3・群馬県代表)vs 法政大学(アマチュアシード)

場所:アースケア敷島サッカー・ラグビー場

法政大学は古くから大学サッカーの強豪で、2019年大会ではガンバ大阪を2-0で破った実績がある。ザスパ群馬はJ3で中位に位置しているが、JFL降格圏との勝ち点差は少なく、リーグ戦優先でメンバーを落とす可能性が高い。

法政大は現在、関東大学リーグ2部ながらも、5月10日に行われた東京都代表決定戦で、昨2024シーズンの関東1部を制した明治大学を2-1で撃破。アマチュアシードの座をもぎ取り、勢いがある。

3年生ながらもFC東京への2年前倒し加入が内定しているFW小湊絆。同じく横浜F・マリノスに内定している3年生MF松村晃助。196センチの大型FWでJ3栃木シティGK相澤ピーターコアミの弟であるFW相澤デイビッド。U-17、U-19で代表歴のあるMF小池直矢。といったタレントが揃っている。

群馬は公式戦7戦勝ち無しからは脱したが、失点癖は改善出来ていない。ホーム戦であることはアドバンテージながら、隙を見せればサポーターの眼前で失態を冒す可能性もありそうだ。


【天皇杯2025】1回戦で番狂わせを起こしそうなアマチュアのカード5選

カターレ富山(J2)vs 順天堂大学(千葉県代表)

場所:高岡スポーツコア サッカー・ラグビー場

法政大同様、大学サッカーの名門でありながら、関東大学リーグ2部を戦っている順天堂大学。しかし千葉県代表決定戦でJFLのブリオベッカ浦安・市川をPK戦の末に下し、出場権を獲得した。

主将のDF三輪椋平は、青森山田高在籍時に全国高校サッカー優勝を経験。MF福田凌も関東大学選抜に選ばれている。神村学園出身のMF抜水昂太に、ジュビロ磐田U-18出身の3年生DF松田和輝。といった将来性のある選手が在籍し、フィジカルでも戦術面でもJ2チームと互角に戦える実力を持つ。

一方のカターレ富山はJ2で苦戦しており、降格圏が見えている状況とあって、主力選手を温存する可能性が高い。順天堂大が守備を固め、セットプレーなど数少ないチャンスを生かせば、勝利のチャンスもあるだろう。

【天皇杯2025】1回戦で番狂わせを起こしそうなアマチュアのカード5選

RB大宮アルディージャ(J2)vs 筑波大学(茨城県代表)

場所:NACK5スタジアム大宮

大学サッカー界ナンバーワンの名門、筑波大学。2017年の第97回大会では、当時J3のY.S.C.C.横浜、当時J1のベガルタ仙台、当時J2のアビスパ福岡と、Jクラブを次々と倒して4回戦にまで進出した。当時J1の大宮に敗れ、それ以来の対戦となる。

2017年当時の筑波大は、当時3年生のMF三笘薫(ブライトン・アンド・ホーブ・アルビオン)を筆頭に、MF西澤健太(サガン鳥栖)、MF鈴木徳真(ガンバ大阪)、MF高嶺朋樹(北海道コンサドーレ札幌)らを擁し、大学サッカー部のレベルを超えた“プロ予備軍”とも言えるチームだった。

2022年の第102回大会でも、2回戦でJ1柏レイソルを相手に大善戦(0-1)。「対Jクラブ」の戦績では3勝8敗だが、8敗中3試合が1点差、2試合が2点差。
そして3勝全てが1点差もしくはPK戦の末での勝利だ。僅差で痺れるゲームとなることは必至だろう。

また、昨2024年の第104回大会では、J1首位を快走していた町田ゼルビアをPK戦の末に破り、その後の町田の黒田剛監督の言動も含め、話題を集めている。

現在、筑波大は関東大学リーグ1部で首位を快走し、2024年卒業生からも5人のJリーガーを輩出した。茨城県予選決勝では、同じくJリーガー輩出実績が豊富な流通経済大学に苦戦したものの1-0で競り勝ち、4年連続通算35回目の天皇杯本戦出場を決めた。

筑波大サッカー部と言えば、7つもの部署からなる「パフォーマンス局」があり、自チームの課題を可視化させるだけではなく、対戦相手のスカウティングも行っていることで知られる。既にRB大宮アルディージャの分析も着々と進めているハズで、J1昇格圏内に位置し、2年連続昇格を狙っている大宮といえど油断ならない相手だ。

一方、大宮の長澤徹監督は、メンバー選考に頭を悩ませることだろう。ホーム戦とはいえ相手は強豪大学。翌週にジュビロ磐田戦を控えるとあって、出来ることならレギュラーを1週休ませたいところだろうが、メンバーを落とし過ぎると足元をすくわれる可能性もあるからだ。

仮に控え選手中心で挑むとなれば、今季筑波大から加入したDF福井啓太にとっては、3月26日に行われたルヴァン杯1回戦のいわきFC戦(3-3の末、PK戦で勝利)以来の出番が期待でき、いきなりの古巣戦となる。大宮はFWファビアン・ゴンザレスやFWカプリーニら、助っ人外国籍選手を起用する“ガチ”のメンバーで臨むか否かが、勝敗を占うカギとなりそうだ。


【天皇杯2025】1回戦で番狂わせを起こしそうなアマチュアのカード5選

ツエーゲン金沢(J3・石川県代表)vs 中京大学(愛知県代表)

場所:金沢ゴーゴーカレースタジアム

昨2024年の第104回大会にも出場した中京大学。1回戦でびわこ成蹊スポーツ大学を破り、2回戦ではJ2ジェフユナイテッド市原・千葉を相手に0-1で惜敗した。

しかし、天皇杯本選には8回目(1998、2004、2010、2011、2018、2022、2024、2025)の出場となり、東海学生リーグ戦1部では常に優勝争い。インカレ(全日本大学サッカー選手権大会)優勝1回、総理大臣杯優勝1回の実績を誇る大学サッカー界の雄だ。OBには今季J1柏レイソルに移籍し、レギュラーポジションを奪取したMF久保藤次郎がいる。

対するツエーゲン金沢は、J2昇格プレーオフを狙える位置にありながらも連敗が多く、不安定な戦いぶりだ。伊藤彰監督がメンバーを落とすという決断を下した場合、中京大はカウンター狙いで対抗し、僅差の試合やPK戦に持ち込む展開も考えられる。

【天皇杯2025】1回戦で番狂わせを起こしそうなアマチュアのカード5選

福井ユナイテッド(福井県代表・北信越リーグ1部)vs Honda FC(静岡県代表・JFL)

場所:テクノポート福井スタジアム

“JFLの門番”でアマ最強のHonda FC。例年はアマチュアシード枠での出場だったが、今大会は予選を勝ち抜いての本戦出場となった。

天皇杯の度にその存在感を発揮するHonda FC。痛い目に遭ったJクラブは数知れず、特に2019年の第99回大会と2020年の第100回大会では2年連続で準々決勝に進出している。Jクラブを撃破していく姿はネット上で“静岡県最強”とまで呼ばれた。

一方の福井ユナイテッドは、福井県代表決定戦では坂井フェニックスを相手に6-0で大勝し、7年連続7度目の天皇杯本戦出場を決めた。
北信越リーグ1部で開幕3連勝と実力を発揮しているが、JFL、さらにその先のJ入りを目指すのであれば、現在地を知る絶好の機会だ。

Honda FCの組織力と経験が福井を圧倒する可能性はある。しかし、福井がホームの利を活かし、守備を固めワンチャンスに賭ければ、勝利のチャンスもあるだろう。

これらの対戦カードはいずれも下部リーグを対象としているため、“ジャイアントキリング”とまでは言えないだろう。しかし格下のチームが勝利すれば、その勢いでJ1クラブを破るケースが多いことは過去の歴史が証明している。

また今大会初出場を決めた守山侍2000(滋賀県代表/関西リーグ1部)、FC BASARA HYOGO(兵庫県代表/関西リーグ1部)、レベニロッソNC(愛媛県代表/四国リーグ)、宮崎県代表決定戦でJ3テゲバジャーロ宮崎を破り「J.FC MIYAZAKI」から改名してからは初出場となるヴェロスクロノス都農(九州リーグ1部)、青森県代表決定戦で格上のJ3ヴァンラーレ八戸を破り本戦出場を決めたJFLラインメール青森など、その実力が謎に包まれたチームも参戦する。

こうしたチームがどういうサッカーを展開し、上位クラブに挑んでいくのかというマニアックな楽しみ方ができるのが天皇杯の魅力だ。
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