2024/25シーズンの欧州リーグも次第に終わりを告げつつある。今シーズンは日本人アタッカーの活躍ぶりが目立った。


特にFW前田大然(セルティック)、MF旗手怜央(セルティック)、MF三笘薫(ブライトン・アンド・ホーブ・アルビオン)、FW堂安律(フライブルク)、FW町野修斗(ホルシュタイン・キール)、FW中村敬斗(スタッド・ランス)が、それぞれのリーグで2桁得点を挙げた。

その他にも、MF久保建英(レアル・ソシエダ)、MF南野拓実(モナコ)、GK鈴木彩艶(パルマ)、DF板倉滉(ボルシア・メンヘングラードバッハ)、MF佐野海舟(マインツ)、FW上田綺世(フェイエノールト)、MF伊東純也やDF関根大輝(スタッド・ランス)、MF守田英正(スポルティングCP)らが、欧州トップリーグのレギュラーとして活躍。

MF遠藤航(リバプール)は“クローザー”としての役割を完遂しプレミアリーグ優勝に貢献。MF鎌田大地(クリスタル・パレス)はFA杯決勝のマンチェスター・シティ戦(ウェンブリー・スタジアム)で先発フル出場。決勝点の起点となり、クラブ創立164年目で初のタイトルをもたらした。

これだけの好成績を残した選手がいても、もはや驚くことも少なくなったのは、日本人選手の評価が上昇したことを物語っている。興味はこれらの選手に続く可能性を秘めた次世代のスターに移りつつある。

早速、オフに突入したブンデスリーガのフライブルクは、清水エスパルス(2020-2022、2023)でプロキャリアをスタートさせ、リーグ・アンのストラスブール(2022-23)でもプレーしたデンマーク・スーペルリーガのブレンビーMF鈴木唯人を獲得した。移籍金は700~800万ユーロ(約11~13億円)と言われている。鈴木はA代表経験がなく、一度はJ復帰を経た“レアケース”だ。

ここでは、Jリーグでブレイクを果たし、近い将来欧州クラブに移籍していきそうな5選手を挙げ、成功する可能性を検証したい。

三笘や久保の系譜を継ぐ者は?Jリーグ発の次世代スター5選

MF大関友翔(川崎フロンターレ)

川崎フロンターレの選手で欧州移籍に最も近いのは、前2024シーズンにベストヤングプレーヤー賞を受賞し、日本代表にも選出されたDF高井幸大で異論は無いだろう。しかしここではあえて、リーグ戦先発わずか2試合に留まっているMF大関友翔の名を挙げたい。


プロ1年目の2023シーズンはリーグ戦での出場無し。しかし、2024シーズンにJ3福島ユナイテッドへ育成型期限付き移籍すると32試合に出場し、J2昇格プレーオフ進出に貢献。J3ベストイレブンにも選ばれた。今2025シーズンに川崎に復帰するが、レギュラーポジションを奪うまでには至っていない。

そんな大関に大チャンスが訪れる。今年4月30日にサウジアラビアで行われたACLE(AFCチャンピオンズリーグエリート)準決勝。あのクリスティアーノ・ロナウド擁するアル・ナスル戦にトップ下で先発出場。勝ち越しゴールを決め、大金星の原動力となったのだ。

大関は川崎U-18時代は背番号10を背負い、高円宮杯U-18プレミアリーグEAST初優勝に貢献。2022年には2種登録選手としてトップチームに登録され、2023年に正式に昇格。“ポスト中村憲剛”として期待されていた。

まだ20歳になったばかりだが、欧州移籍のタイミングを考えれば早すぎるわけではないだろう。
基本的には中盤の位置で長短のパスを使い分けながら攻撃のリズムを作るゲームメーカーだが、福島時代にはインサイドハーフの位置からスルスルとゴール前に顔を出し、得点を決めるラインブレイカーの役割も果たし、8得点を記録した。

育成年代の日本代表にも選出され続け、AFC U-20アジアカップでは背番号10を背負った。青田買いを目論む欧州クラブのターゲットとなる可能性は十分にあるだろう。

三笘や久保の系譜を継ぐ者は?Jリーグ発の次世代スター5選

FW北野颯太(セレッソ大阪)

2022シーズンのルヴァン杯ニューヒーロー賞を獲得したセレッソ大阪FW北野颯太。既にオーストリアのレッドブル・ザルツブルクへの完全移籍が濃厚と報じられている。

ザルツブルクは、リバプールへステップアップしていった現在モナコ所属の日本代表MF南野拓実(2015-2019)をはじめ、2024年にはサンフレッチェ広島からMF川村拓夢(2024-)を獲得。京都サンガで活躍するMF奥川雅也(2019-2021)も所属していたとあって、若手の日本人選手を受け入れ育て、ビッグクラブへと“転売”するノウハウには長けているクラブだ。ある程度の出場機会は保証されるだろう。

北野本人も、2023年にアルゼンチンで開催されたFIFA U-20ワールドカップでグループリーグ敗退を喫した悔しさをバネに、「いつか自分も欧州に…」と考えていたはずだ。同じC大阪にはクラブのバンディエラである元日本代表FW香川真司という生きた手本がいることもアドバンテージとなるだろう。

ザルツブルクの先輩にあたる南野のようなキャリアを積むことが出来るか、注目だ。

三笘や久保の系譜を継ぐ者は?Jリーグ発の次世代スター5選

MF田中聡(サンフレッチェ広島)

MF中島洋太朗、FW中村草太と若手が躍動し、上位戦線を賑わせているサンフレッチェ広島。若手選手の中から出場時間が最も長いMF田中聡を挙げたい。

下部組織出身選手が多い広島の中では異色の経歴を経た田中は、長野パルセイロU-15、湘南ベルマーレU-18を経て2021シーズンにトップ昇格。
わずか1シーズンではあるが、2022/23シーズンにベルギーのコルトレイクに期限付き移籍している。湘南復帰を経て、今2025シーズン広島に完全移籍するという様々な経験をした22歳だ。

既に欧州移籍を経験しているが、冒頭に示した鈴木唯人の前例があるように、再渡欧を目指しているとしても何ら不思議ではない。

ボール奪取能力に長け、中盤の底から攻守にわたってチームを支えることができ、豊富な運動量と球際の強さが持ち味で、ボールを奪ってから攻撃につなげるプレーを得意としている。湘南の下部組織時代から守備力を徹底的に鍛えられ、プレースタイルを確立した。その姿は湘南OBでもあるリバプールMF遠藤航とも重なる。

広島から欧州へと渡った選手は多いが、一説によると広島は「欧州クラブから獲得オファーが来た場合、本人の意思を尊重し基本的に引き留めない」という契約が存在すると言われている。実際、2024シーズンに湘南から獲得したMF大橋祐紀を、わずか半年でイングランド2部EFLチャンピオンシップのブラックバーン・ローバーズに完全移籍させたことが、噂レベルだったその契約内容の存在を匂わせている。

三笘や久保の系譜を継ぐ者は?Jリーグ発の次世代スター5選

FW徳田誉(鹿島アントラーズ)

現在、右足骨折で治療中のFW徳田誉だが、小学生年代の鹿島アントラーズつくばジュニアから育った生粋の鹿島育ちだ。世代別の日本代表にも選出されるなど、クラブから将来を嘱望されている選手の1人である。

ユース所属で2種登録で出場した2024シーズンJ1第18節アルビレックス新潟戦で、クラブ最年少出場記録を更新しJ1戦デビューした徳田。

同シーズンJ1第31節サンフレッチェ広島戦では、ゴールに背を向けた状態から振り返りざまに右足でゴラッソを決めJ1初ゴールを記録した。17歳6か月27日での初ゴールは、内田篤人氏が持っていたクラブ最年少ゴール記録を更新しただけではなく、明治安田J1リーグ月間ベストゴールを受賞した。


186センチ、82キロのフィジカルモンスターで、ポストプレーやヘディングも強い。前線でのターゲットとなれるだけでなく、得点感覚にも優れ、左右両足でシュートを放つことが出来る。献身的な守備も彼の持ち味で、現代的なFWに求められる要素も兼ね備えている。

目標とする選手として、鹿島OBの上田綺世(フェイエノールト)の名前を挙げていることから、欧州クラブからオファーがあれば海を渡る可能性もあるだろう。

三笘や久保の系譜を継ぐ者は?Jリーグ発の次世代スター5選

FW細谷真大(柏レイソル)

2024年のパリ五輪スペイン代表戦で、DFを背負いながら振り返りざまに決めた幻のゴラッソ(かかとが数センチ出ていたためにオフサイド判定)が記憶に新しい柏レイソルFW細谷真大。

彼もまた小学生時代からの柏育ちで、2023シーズンのJ1リーグで14得点を挙げると、オフに日本代表DF板倉滉やFW福田師王を擁するブンデスリーガのボルシア・メンヘングラートバッハからのオファーが報じられたが、柏に残留した。

昨オフにも名古屋グランパスをはじめ、多くのJ1クラブからオファーを受けたが残留。よほどの魅力的なオファーでなければ、欧州クラブといえども「レイソル愛」を貫く細谷を獲得するのは至難の業だろう。

爆発的なスピードを生かした裏抜けを得意とし、ゴール前での嗅覚にも優れ、泥臭くゴールを奪うことも出来る。前線からの積極的なプレッシングで守備への貢献も大きい。当初は線の細さも指摘されていたがプロ入り後にフィジカルを強化し、ポストプレーや球際での強さが年々増している。プレーの幅も広げ、課題だったボールタッチの柔らかさやプレーの判断力も向上した。

今2025シーズン序盤はなかなか本調子が出せなかったが、チームの調子とともにコンディションを上げ、得点という結果も出し始めた。
A代表への定着が期待されるだけではなく、現在2位にいる柏にあって仮に逆転優勝となれば、シャーレを置き土産に満を持して海を渡る可能性もあるだろう。

Jリーグ発の数多くの星たちに期待

ここで挙げた5人の選手は、三笘薫や久保建英の系譜を継ぐ可能性のある“ネクストスター”だ。J60クラブは、地域の誇りを背負い、ピッチ上で夢を追いかける若者たちを育てている。各クラブが持つアイデンティティーが、次世代のスターを生み出す原動力だ。

川崎は、三笘をはじめ数多くの選手を欧州クラブに輩出したように、攻撃的なサッカーと若手育成の優秀さで知られる。FC東京は、久保や松木玖生(ギョズテペSK)を欧州クラブに送り出し、早期デビューを促す文化が根付いている。広島やC大阪も技術に長けた選手を育成し、欧州へのパイプを築いている。

三笘や久保の系譜を継ぐ選手には、技術だけでなく欧州での適応力が求められる。久保はスペインでの厳しい評価を乗り越え、成長に繋げた。三笘もプレミアリーグのフィジカルな環境に適応し、出場機会を得た。ネクストスター候補に挙げた彼らには、言語や文化の壁を越えるメンタリティーが不可欠だ。

またJクラブは、若手の流出を防ぎつつ、育成と競争力を両立する必要に迫られている。
鹿島や浦和のようなビッグクラブは、若手を起用しつつタイトル争いを続けるバランスが求められている。Jリーグの「百年構想」には、こうした長期的な育成ビジョンも含まれている。

スタジアムに響くサポーターのチャントと、それに応えるようにピッチを走り回る若手の姿。これらが、Jリーグの未来を照らしている。三笘や久保が切り開いた道を、ネクストスターたちがさらに広げることだろう。Jリーグ発の数多くの星たちが、いずれは世界のサッカーシーンで輝き続けることになるのだ。
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