■日本コンピュータ・ダイナミクスの事業概要

6. リスク要因・収益特性
一般的なリスク要因として、IT関連事業(システム開発事業、サポート&サービス事業)においては、大型案件などの受注や個別案件ごとの採算性によって売上や利益が変動する可能性がある。

この対策として、個別案件ごとの採算性に関しては、政策的・戦略的に低採算でも受注する案件もあるが、通常は受注委員会において見積段階から採算をチェックするとともに、受注後も月1回の審議会においてプロジェクト進捗・品質管理状況を厳重にチェックするなど、プロジェクト管理・品質管理を徹底して不採算化防止・採算維持に取り組んでいる。
また全社ベースの取り組みとして、業務プロセス改善による効率化を推進している。

またシステム開発事業は開発後の保守・運用サービス受託拡大によって、サポート&サービス事業は継続受託案件の積み上げによって、ストック売上が拡大(IT関連事業のストック売上比率は2022年3月期上期実績で約8割)し、安定した収益構造となっている。

パーキングシステム事業は、管理現場数・管理台数の積み上げによって駐輪場利用料収入や駐輪場管理運営受託に係るストック売上が主力となり、入札等によって受注変動がある機器販売のフロー売上の比率が低下している。ただし2021年3月期は、コロナ禍に伴う外出自粛の影響で駐輪場利用者数が大幅に減少して利用料収入も大幅に減少した。また機器販売についても、業績が悪化している鉄道会社や商業施設で投資案件先送りの傾向が見られた。需要は緩やかに回復傾向だが、状況によってはコロナ禍以前の水準まで回復するのに時間を要する可能性がある。


季節要因としては、システム開発事業は顧客企業のIT投資予算の執行時期や検収時期の関係で、第2四半期(7月‐9月)及び第4四半期(1月‐3月)の構成比が高い傾向がある。このため一時的な大型案件や不採算案件などの影響を除けば、全体として四半期ベースでは第2四半期と第4四半期の構成比が高く、また半期ベースでは下期(10月‐3月)の構成比が高い傾向がある。ただし、最近ではストック売上が拡大しているため、四半期業績の平準化が進展して季節要因の影響は小さくなっている。

システム開発事業の利益率が上昇基調
7. IT関連事業の利益率が上昇基調
過去5期(2017年3月期−2021年3月期)及び2022年3月期上期のセグメント別売上高と構成比の推移を見ると、2020年3月期までの構成比は、おおむねIT関連事業(システム開発事業、サポート&サービス事業)が6割強、パーキングシステム事業が3割強で推移していたが、2021年3月期及び2022年3月期上期は、パーキングシステム事業がコロナ禍の影響(外出自粛による駐輪場利用料収入減少、工事や商談の延期)を受けたため、パーキングシステム事業の売上高が減少し、構成比も低下している。

過去5期(2017年3月期−2021年3月期)及び2022年3月期上期のセグメント別営業利益と構成比(連結調整前)の推移を見ると、2021年3月期及び2022年3月期上期はパーキングシステム事業がコロナ禍の影響を受けたが、この要因を除いてもIT関連事業(システム開発事業、サポート&サービス事業)の構成比が上昇傾向である。

過去5期(2017年3月期−2021年3月期)及び2022年3月期上期のセグメント別営業利益率の推移を見ると、システム開発事業はプロジェクト管理・品質管理徹底などの施策の成果で利益率が上昇基調である。
サポート&サービス事業は、新規受託の大型案件(他社案件のからの切り替え受託を含む)で一時的なコストが発生した場合に、利益率が低下する傾向(2017年3月期、2020年3月期)があるが、この一時的コストが一巡して稼働が安定化すると営業利益率が大幅に改善(2019年3月期、2021年3月期、2022年3月期上期)している。

パーキングシステム事業は2020年3月期まで10%台半ばの高い水準で推移していたが、2021年3月期及び2022年3月期上期にコロナ禍の影響で売上高が減少したため、営業利益率も大幅に低下している。コロナ禍の影響が当面継続することも想定し、収益性回復に向けて管理・運営コスト削減、料金改定、周辺業務内製化などの施策を推進している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)