1. 沿革
ティアンドエス<4055>は2016年11月、1996年創業の(株)テックジャパンと1985年創業の(株)シナノシステムエンジニアリングが合併してできた比較的若い企業である。代表取締役執行役員社長の武川義浩(たけかわよしひろ)氏の同業界における30年以上の経験と、そのなかで培われた東芝グループをはじめとする顧客との強固な信頼関係によって、創業以来右肩上がりで成長してきた(武川氏は、東芝グループが手掛けた原子力発電所のシステム開発に従事していた経歴を持つ)。
2. 事業内容
同社は「あらゆる産業において、ソフトウェア技術が生み出す新たな付加価値を通じて、お客様に安心と満足そして豊かさを提供すると共に、社員を大切にし、株主様に貢献する」という企業理念の下、東芝グループ、日立グループ、キオクシアグループなどをはじめとする顧客から生産管理システムや業務管理アプリケーションなどの受託開発を請け負っているほか、社員派遣型の保守・運用サービスも提供している。バリューチェーンの一部に特化するのでなく、要件定義、システム開発などの川下から運用・保守といった川上まで全体にわたってサービスを提供していることが同社の特徴の1つである。これにより、顧客との接点及び収益獲得機会の増加を可能にしている。
同社は、DXソリューションカテゴリー、半導体ソリューションカテゴリー、AIソリューションカテゴリーの3つで事業を展開している。持株会社体制への移行を契機に、従来のカテゴリー区分である半導体カテゴリー、ソリューションカテゴリー、先進技術ソリューションカテゴリーの区分をより分かりやすく再編成した。DXソリューションカテゴリーでは半導体関連以外の案件を手掛けており、大手企業顧客向けに、社会インフラ、重電、業務系アプリケーション等のシステム開発、運用・保守サービスを提供している。
3. DXソリューションカテゴリー
DXソリューションカテゴリーは同社の収益基盤であり、2023年11月期の売上高に占める同カテゴリーの割合は55.9%であった。取引先の企業は、強固な顧客基盤である東芝グループ、日立グループ、重電系メーカーをはじめ、金融、サービス、情報通信関連など多岐にわたっている。こうした大手企業との取引実績を生かし、他の大手企業や中堅企業へと顧客の幅を拡大させている。顧客企業にとっては、同社の大手企業との取引実績が安心材料になっている格好だ。
4. 半導体ソリューションカテゴリー
半導体ソリューションカテゴリーも、同社に安定した収益をもたらす源泉となっている。2023年11月期の売上高に占める同カテゴリーの割合は35.3%を占めた。主な顧客は、東芝グループとキオクシアグループ、ソニーグループ各社である。これらの顧客に対して、半導体工場内のシステム開発、運用・保守並びにインフラ構築支援などのサービスを提供している。DXソリューションカテゴリーと同じく、開発にとどまらずコンサルティングから要件定義、テストとバリューチェーンのすべてのフェーズでサービスを提供している。
同カテゴリーの対象である半導体は、DXの成否を左右する部品と言っても過言ではなく、今後ますます半導体に対する需要が拡大していくと弊社は考えている。実際、(一社)電子情報技術産業協会の「2023年秋季半導体市場予測について」によると、市場規模は順調に拡大している。2023年に関しては、市況の悪化により前年をわずかながら下回る予想であるものの、5G、IoT、データセンター、電気自動車、再生可能エネルギーに加えて、生成AIの利用が急拡大していることなどを受け、2024年は回復に転じると予想されている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)