(2) リノベーション再販事業
新築物件の価格が高騰するなか、立地に優れ、価値優位性のある中古不動産を、現代のニーズに合わせて高付加価値化した不動産に生まれ変わらせるリノベーションが注目されている。同社も以前からリノベーション再販事業を行ってきたが、スタンダードな区分マンションのリノベーション再販は参入障壁が低く競争の激しい分野であった。
(3) 新築戸建・宅地開発事業
同社は、都市型新築戸建住宅「ブライト」シリーズの供給という単独事業と、同社が企画開発の主体となって施工会社や販売会社と協力する共同事業を行っている。「ブライト」シリーズでは、ファミリー層の子育て環境に適した立地や都心部の生活利便性に優れた付加価値の高い立地を厳選して取得し、同社建築企画部が中心となって建物の居住性と品質にこだわった機能的でデザイン性の高い住宅の企画を立てている。設計・施工は外部の協力会社に発注し、仲介会社などを通じて初めてマイホームを持つユーザーを中心に販売している。共同事業では、敷地面積約10,000平方メートルの生産緑地を67棟の戸建と2つの公園を有する一体街区として開発する千葉県柏市のプロジェクトにおいて、同社が開発許認可と街区計画などを主導し、建築と販売を共同事業先に委託する事業を行っている。ほかに、市川市や中野区、葛飾区、世田谷区においても多棟数の共同事業に参画している。昨今の歴史的な低金利や住宅ローン減税など税制優遇処置を背景に住宅分譲事業者の仕入活動が活発化したことで、地価が急騰し事業用地の確保が困難な状況となってきたため、当面、仕入・開発企画力を生かせる共同事業に重心を移して事業を展開する方針である。
(4) その他の事業
同社は新築マンション開発事業、リノベーション再販事業、新築戸建・宅地開発事業のほかにも、不動産を開発し新たな価値を創造する事業を展開している。具体的には東京23区を中心とした住環境や生活利便性の高い立地で、低層の資産運用型新築テラスハウスの供給を行っている。
ESG経営を実業に取り入れる
3. ESG関連事業
同社は、再生可能エネルギー事業や様々な取引先企業と連携して暮らしを豊かにするESGやSDGsへの取り組みを実業として強化しており、人々が明るく笑顔で暮らせる住まいづくりと豊かな社会の創造を目指している。再生可能エネルギー事業は、ESG関連事業の主軸となっている事業である。東日本大震災以降、原子力発電に依存しない電力確保が望まれるなか、CO2を排出することがない「太陽光発電」は環境に優しく安全でクリーンなエネルギーとして普及が急がれている。これを踏まえ、同社は2013年に太陽光発電施設第1号を稼働させて以来、社会への安定した電力供給を目指し、千葉県・茨城県を中心に全国27ヶ所の太陽光発電施設を保有運営している
また、不動産開発創造事業で自社開発したマンションや戸建などの物件のうち、防音マンションやカーシェアなど新たな企画を導入した物件を中心に、自社で保有運営したりホテルや生活関連施設として賃貸する賃貸資産保有事業も展開している。ほかにもポートフォリオ経営とESG経営を意識して、住まいや暮らしに役立つ学習塾や幼児教育、児童養護施設、トランクルーム、コインランドリーといった安定資産を保有・運営している。
「社会に貢献できる創造力豊かな企業を目指す」という企業理念を持つ同社は、こうしたESGへの取り組みを進めることで、笑顔で暮らせる住まいづくりと人々の心が通い合うコミュニティのある街づくりを行うとともに、法令を遵守し、人権や文化を尊重しかつ地球環境に配慮する方針である。さらに、「無から有を生み出す不動産創造企業」として成長し、「多世代の人達の笑顔を糧に人と社会に貢献できる企業」を目指す経営ビジョンを軸に、長期的にもESG経営を推進する考えである。
具体的には、Environment(環境への取り組み)において、同社は再生可能エネルギー事業で太陽光発電施設を保有運営している。Social(社会への取り組み)においては、単身者の生活に利便性を与えるコインランドリーの運営、地域の「かかりつけ薬局」を展開する企業や児童養護施設を運営する社会福祉法人への施設提供、子供地球基金「アートリースプログラム※」やジュニア世代のフットサル大会のサポート、若手アーティストを支援するとともにアートを暮らしのなかに生かすアートギャラリープロジェクトの実施など、住まいや暮らしに関連した様々な事業に取り組んでいる。Governance(ガバナンスの基本的な考え方)においては、経営目標の達成に向け、グループ内の監督機能、業務執行機能、監査機能を明確化することで経営監視機能の強化に努め、リスク管理やコンプライアンスの徹底を図っている。
※ アートリースプログラム:アートを通じて傷ついた子供たちの心のケアや表現することへの大切さを伝える活動。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)