1. マッチング事業
マッチング事業は、主に日本最大級のオンライン人材プラットフォーム「クラウドワークス」を運営するプラットフォーム領域と、企業とフリーランスや副業人材などの個人をマッチングするエージェント領域により構成される。
1) プラットフォーム領域
プラットフォーム領域では、企業が同サービスに登録した仕事の依頼に個人が応募し、個人のスキルや条件が仕事依頼内容に合致すればマッチングが成立する。
2) エージェント領域
エージェント領域では、事業を推進するために必要なエンジニアやデザイナーなどの専門人材や事務アシスタントなどをマッチングする「クラウドワークス エージェント」や、既に正社員として働いているハイクラスなビジネス人材を副業形式でマッチングする「クラウドリンクス」などのサービスを運営している。同社のセールスが顧客企業から経営課題をヒアリングし、人材面で何が不足しているのかを明確化したうえで、同サービスに登録しているフリーランスや副業人材などのプールの中から能力や経験などの点で充足している人とマッチングを行う。同領域の収入は、マッチングを行ったフリーランスなどの月々の稼働時間業務委託料から受注者の報酬を差し引いた金額を売上として計上する。
マッチング事業において現在特に強化しているのは、コンサルティングを通じたDXソリューションの提供となる。副業を許可する企業の増加、週休3日・4日制度の導入企業の増加、リモートワークの普及などに伴い、副業を行う正社員が急拡大しており、企業に所属するハイスキル人材がフリーランス市場に流れ始めている。同社は後述のとおりDX市場31兆円への参入を表明しており、DXコンサル企業のM&Aを進めている。マッチング事業に在籍する人材が、同社のDX市場における成長にレバレッジをかけよう。
エージェント領域のKPI※は顧客社数/1社当たり単価・売上総利益率であり、2025年9月期第1四半期(10~12月)実績は、顧客社数が前年同期比8.5%増の2,458社、1社当たり単価が同31.8%増の1,981千円、売上総利益率が同1.3ポイント減の33.6%となり、特に単価の向上寄与が大きい。
※ Key Performance Indicatorの略。重要業績評価指標。
2. ビジネス向けSaaS事業
同社は、2020年3月より企業向けの工数管理及びプロジェクト管理ツール「クラウドログ」などをSaaSの形で提供している。「クラウドログ」は従業員の業務における工数を収集し、企業の働き方を見える化するツールであり、生産性向上を支援する。同サービスは月額課金制であり、サービス利用料を売上として計上する。
3. DX市場31兆円へ参入
同社はマッチング事業、ビジネス向けSaaS事業の土台の上に、DX市場(2024年度21.5兆円市場、2030年度同社試算31.3兆円市場)へ参入する。DXコンサル企業が2年間で6社がグループインするなか、特定のIT領域に依存しない統合的なDXソリューションの提供体制を構築した。大手企業を中心に730社を超えるDX開発実績を数え、システム開発のケイパビリティは拡大中だ。さらに、同社では大手コンサルファーム出身のDXコンサル・AIエンジニアなどDXプロ人材150万人のデータを保有しており、事業成長スピードにレバレッジをかけることが可能な状態である。
4. 事業セグメント別売上高・営業利益構成比
同社の2024年9月期の売上総利益の構成比は、マッチング事業が89.1%(うち、プラットフォーム領域が26.8%、エージェント領域が73.2%)と、同社が特に強化しているエージェント領域の構成比が高く、ビジネス向けSaaS事業が10.9%、その他事業は0.1%と続く。営業利益は、ビジネス向けSaaS事業の営業損失が継続しており、マッチング事業が利益の大半を稼いでいる。
5. 強み
同社の強みは、豊富なクライアント・人材プールを持つ人材プラットフォームの運営とエージェントによるマッチングビジネスの両方を有していることである。これによりプラットフォームでワーカーを獲得し、顧客企業のニーズに特化したエージェントサービスを領域ごとに立ち上げ、経営課題に沿った人材ソリューションが提供できる。同社のプラットフォーム「クラウドワークス」に登録している2024年12月末の登録クライアント数は前年同月比で約6.5万社増の102.1万社、登録ワーカー数は同80.6万人増の686.8万人と積み上がっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林拓馬)