*16:06JST Jストリーム Research Memo(6):EVCとOTTを軸にサービスを展開
■Jストリーム<4308>の市場・事業戦略

1. コモディティ化する動画配信
スマートフォンなど動画視聴ができるデバイスを多くの人が個人で常時携帯するようになり、Wi-Fi環境の充実や今後予定される第5世代移動通信システム(5G)の普及など屋内外での動画視聴の環境の整備も進んでいる。テレビから離れた若者は、好みのタイミングで様々なデバイスからネット動画を視聴する。
SNSや社内ポータルなどの利用が増加し、それがさらに動画配信の環境を充実させることになる。また、動画利用コストの低下と動画利用効果の拡大も、動画の利用増に拍車をかけている。このように、動画のコモディティ化により動画利用シーンが急拡大しているのに合わせ、動画配信の市場も大きく変化しており、今後、EVC※1における利用シーンにマッチした用途特化型サービスの台頭及び放送と、OTT※2の再編が予測されている。用途特化型サービスの台頭は、企業のeラーニングやWeb会議、統合型マーケティングなどにおいて、トレーニングや社内コミュニケーション、販売促進などに用途を絞ることでより高い効果を狙うBtoBの動画ニーズへのサービスを指す。一方、放送とOTTの再編は、NHKが2019年にIPサイマル放送※3のサービスを計画する一方、Netflixネットフリックス)やAmazonプライムビデオなどOTT業者の動画配信サービスへの参入でコンテンツホルダーが衛星放送・CATV離れを加速していることを指す。

※1 EVC(Enterprise Video Communications):一般企業における動画を使ったコミュニケーション。

※2 OTT(Over The Top):インターネット回線を通じて音声・動画コンテンツなどを提供する、ネットフリックスやアマゾン・ドット・コムなど通信事業者以外の企業やプラットフォーム、サービスのこと。
※3 IPサイマル放送:サイマル配信とも言い、1つの放送局が同じ時間帯に同じコンテンツを、異なるチャンネル(周波数)や放送方式、放送媒体で放送すること。特に、放送(テレビ、ラジオ)と同じものを通信(インターネット)で同時配信することを指すことが多い。


こうした環境変化は同社にとってビジネスチャンスであり、同社は、機能とサービスの提供方法を環境変化に合わせてバージョンアップしてきた。従来、汎用プロダクトと付帯サービスを顧客に提供することを主眼としてきたが、プロダクトの機能を共通プラットフォーム化し、EVCとOTTを2軸に顧客の用途に合わせて機能とサービスを提供していく考えで、今後は最先端の動画ソリューションカンパニーとしての色が強まるだろう。具体的には、一般企業に対しては、引き続き医薬と金融を重点にトレーニングや社内コミュニケーション、販売促進など利用シーンにマッチした用途特化型サービスを提供、メディアに対しては、IPサイマル放送への対応とコンテンツのインターネット配信にフォーカスしたサービスを提供していく考えである。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)


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