■要約
船井総研ホールディングス<9757>は、中小・中堅企業向け経営コンサルティング業界の草分けで大手の一角である。1988年にコンサルティング業界で初めて株式の上場を果たし、2010年に就任した4代目の高嶋栄(たかしまさかえ)代表取締役社長の体制下では、「グレートカンパニーを創る」というミッションのもと、経営者の会員組織化などが奏功し順調に業績を伸ばし、経営コンサルティング事業の強化、周辺領域への事業領域の拡大、グループ経営体制の強化が行われている。
1. 事業概要
同社のコンサルティングサービスは、顧客が集い、相互の切磋琢磨の中で信頼関係が深まり、契約が積み上がっていく、経営コンサルティング業界では独自性の高いストック型ビジネスモデルである。その特長としては、業種・テーマ別経営研究会(特化したテーマで実践力を高める180以上の研究会)、ズバリソリューション(いま実践すれば、飛躍的な業績向上を狙える、その業界における旬のビジネスモデル)、業種・テーマ別組織・早期人材育成体制(業種やテーマに特化して場数を踏むことにより平均4年2ヶ月でチームリーダーを育成)などがある。
2. 業績動向
2019年12月期第3四半期の連結業績は、売上高が前年同期比19.7%増の18,607百万円、営業利益が同19.1%増の4,109百万円、経常利益が同17.8%増の4,127百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同7.6%増の2,730百万円と大幅な増収増益となった。売上高に関しては、経営コンサルティング事業が引き続き順調に伸び、またダイレクトリクルーティング事業においても順調に新規顧客数を伸ばし大きく増収した。
2019年12月期通期の連結業績は、売上高が前期比8.3%増の23,500百万円、営業利益が同9.2%増の5,400百万円、経常利益が同7.8%増の5,400百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同4.2%増の3,700百万円と8期連続増収増益、過去最高益の更新を予想する。売上高の第3四半期進捗率で79.2%、営業利益の第3四半期進捗率で76.1%と売上・利益ともに目安となる75%を超えており、中期経営計画の最終年度の目標達成に向けて視界は良好である。経営コンサルティング事業の第4四半期(単独)は、例年、売上高がその年の最高の業績を残す四半期となる。ロジスティクス事業では、物流コンサルティング業務の比率が高くなっており収益性の高さを維持して着地できる予想。ダイレクトリクルーティング事業は典型的なサブスクリプションモデルであり、解約率が低く維持されているため、第4四半期は更に増収に貢献しそうだ。
3. 社会貢献(CSR)
同社は「グレートカンパニーを創る」というミッションのもと、本業を通じた企業支援を行っているが、社会貢献活動も積極的に行っている。その1つが故舩井幸雄氏の遺志を継ぐ船井財団を通じて10年前から行われている「グレートカンパニーアワード」の開催である。グレートカンパニーとは社会的価値の高い「理念」のもと、その「企業らしさ」を感じさせる独特のビジネスモデルを磨き上げ、その結果、持続的成長を続け、社員も顧客も誇りを持つような独特のカルチャーが形成されている企業と定義される。毎年8月に行われる経営研究会全国大会の場でその年の受賞企業が発表され盛大な授賞式が行われる。2019年8月は婚活支援サービス・ライフデザイン事業を行う(株)IBJが「グレートカンパニー大賞」を受賞。
4. 株主還元策
同社は、株主への適切な利益還元を経営の最重要テーマとしており、業績を考慮しながら、「配当による還元」と「自己株式取得による還元」の双方を軸に実施していくとしており、「総還元性向」を重視している。配当総額も持続的に上げつつ、総還元性向(配当+自己株式取得)で50%以上を目安とする。2019年12月期の1株当たり配当金は上期17円、下期は23円(創業50周年記念配当3円を含む)、年間で40円、総還元性向94.7%(配当性向54.6%)を予想する。
5. ベンチマーク
同社は、経営コンサルティング業界の中でも高い業績を誇るが、株主還元の指標でもトップクラスにある。2018年12月期通期決算の株主資本配当率(DOE)は8.2%であり、業界10社中2位に当たる。
■Key Points
・中小・中堅企業向けコンサルティング分野で圧倒的な強みを持つ草分け。「グレートカンパニーを創る」というミッションのもと、支援領域を拡大中。ダイレクトリクルーティング事業を新たにセグメント情報開示
・業種・テーマ別経営研究会を基盤に、成功するソリューションを共創・指導する独自のコンサルテーションが強み。ダイレクトリクルーティング事業が急成長
・2019年12月期計画に対する進捗率は売上高で79.2%、営業利益で76.1%と順調。中期経営計画最終年度の目標達成に向けて視界良好
・10年計画の仕上げの年。社会貢献活動として60社以上の「グレートカンパニー」を表彰
・経営コンサルティング業界の中においても株主還元の指標でもトップクラス
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
《SF》