レビュー

シャネル、ディオール、アルマーニ。「ファッションに疎い」という人でも、これらのブランド名は聞いたことがあるだろう。

本書は、19世紀半ばから現代に至るまで、ファッション界のキーパーソンとされる56名を紹介した一冊である。有名ファッションブランドやデザイナー、経営者、クリエイティブディレクターなど、ファッションのイノベーターたちが次々と登場する。
著者は「ファッション史を学ぶことは、時代と人のあり方の関わりを学ぶことにつながる」という。見た目の変化は、人の考え方、社会に向き合う態度の変化だというのだ。たとえば、シャネルがデザインした機能的なファッションは、女性に自立と能動的に生きる姿勢を促した。このように、社会がファッションを変え、アパレルが変化を後押しする。ファッション史は、その関係性の歴史に他ならない。そして、あらゆる分野でのイノベーションのヒントの宝庫といえる。
特に要約者の心に残ったのは、資本家がブランドの買収を重ねて巨大グループを作り上げた結果、ブランドが没個性に陥りつつあるという現状だ。個性こそ命であるはずのブランドが、なんとも皮肉な方向に進んでいるではないか。そんななか、グローバルニッチをめざす動きも起きており、今後の動向に目が離せない。
本書を読めば、「ファッション」という窓を通した、時代の空気感とその変遷をじっくりと味わえる。
それは新たな時代のリベラルアーツといえるだろう。

本書の要点

・シャネル、マリー・クヮント、ラルフ・ローレン、ラガーフェルド、御木本幸吉、柳井正……。ファッションのイノベーターたちは時代の変化を敏感に察知し、時代に合った考え方や態度を表現するモードを創造した。
・結果としてアパレルやファッションにイノベーションをもたらし、人々の考え方や社会に向き合う態度を変えていった。
・21世紀になると、資本家によるマーケティングの時代が到来した。複数のブランドを束ねるコングロマリットが市場を支配するようになった。



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