レビュー

本書は、世界規模のプラットフォーマー、フェイスブックが計画、主導している新たなデジタル通貨「リブラ(Libra)」についての一冊だ。「リブラ」の意義や課題、対応策などについて、ユーザー、金融当局、経済学などの視点を取り入れながら解説している。


リブラは、主に新興国や低所得国に多い「アンバンクト(unbanked)」――さまざまな理由で金融サービスを受けることができない人――に金融サービスを提供するという社会的意義を持つ。しかし、その利便性やサービスの特徴、ユーザー数の多さとグローバル性の高さから、従来の金融業界や金融政策を破壊するほどの力を持つ可能性がある。そのため、世界の金融当局から強い懸念を示されている。しかし、今リブラを潰しても解決はしない。計画が発表された段階で、グローバル・デジタル通貨というアイデアは野に放たれた。第2、第3のリブラはいずれ生まれるだろう。世界の金融当局がするべきことは、プラットフォーマーが提供する新たなデジタル通貨に対し、適切な規制や運用体制、安全性を高める策を講じ、既存の銀行システムと並立する形でいかに円滑に取り込むかということではないだろうか、と著者は提言している。
フェイスブックがリブラを発表した際、多くの方が興味を持たれたと思うが、その詳細については不明点が多く、なぜ金融当局が反対するのか疑問に思う方も多いだろう。本書はその疑問に答えるもので、リブラを知るために是非読んでおきたい1冊だと言える。

本書の要点

・既存のデジタル通貨と違い、プラットフォーマーであるフェイスブックが計画するリブラには、グローバル通貨として広く利用される可能性が高い。
・リブラは世界の金融当局から警戒されている。その理由は、リブラは金融業界で独り勝ちになる可能性があるからだ。


・リブラを潰しても第2のリブラが生まれる。金融当局は新たな規制や運用を定め、リブラと銀行が並立でき、ユーザーにとってより便利な金融サービスが提供できる世界をめざすべきだ。



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