レビュー

チャールズ・A・オライリー氏の『両利きの経営』は、世界的に注目されている組織経営論だ。両利きの経営とは、「既存事業を深堀りする能力」と「新規事業を探索する能力」、そしてこれら相矛盾する能力を、同時に追求できる組織能力の獲得を目指すものとされる。


本書の大きな特徴は、日本企業が両利きの経営を実現するための組織開発アプローチを、事例・理論・実践の3つの要素を織り交ぜて解説している点にある。組織が機能しているとはどういうことなのか。組織が変わるとはどういうことなのか。そして組織進化の過程において、経営トップが果たす役割とは何なのか。
こうした問いかけに対し、日本を代表するグローバル企業のひとつ、AGC株式会社(以下、AGC)の組織改革の事例を通して、著者は丁寧に答えていく。本書を何度も読み返すうちに、どうすれば日本で両利きの経営を実現できるのか、具体的にイメージできるようになるだろう。
成熟産業で働きながら、「うちの組織はこのままでいいのか?」と問題意識を持たれている方、とりわけ経営幹部の方に、ぜひお読みいただきたい快著である。

本書の要点

・両利きの経営とは、「既存事業を深堀りする能力」と「新規事業を探索する能力」、そしてこれら相矛盾する能力を併存させる組織能力の獲得を目指すものだ。また、戦略論と組織論を両輪として機能させる面も併せ持っている。
・組織が変わるとは、事業環境の変化に適応した新しいアラインメント(Alignment:結合)を形成し、既存のアラインメントを置き換えるということだ。
・組織を正しく機能させるには、組織の基本4要素「KSF(成功の鍵)」「人材」「公式の組織」「組織カルチャー」のアラインメントを取ることが必要だ。
・AGCは島村CEOを起点としてさまざまな施策を打ち出し、組織カルチャーの変化に取り組んだ。

それはまさしく両利きの経営の実践であり、結果として組織改革を成功させることができた。



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